549と408。
その数字が先発メンバー15人のキャップ総数でテストマッチなら、経験値から前者に分がありそうだ。
しかし、それが日本のクラブチームの戦いの、先発15人の合計年齢だったらどうか。
平均年齢36.6歳と27.2歳。運動量の差で後者が上回ると思う人が多いだろう。
2月18日、第31回全国クラブ大会が熊谷ラグビー場でおこなわれた。
2連覇中のハーキュリーズ(東京)と、3大会ぶりの頂点を狙う神奈川タマリバの顔合わせとなった一戦は、28-16のスコアでハーキュリーズが勝って3連覇を達成した。
全員が慶大OB、若手の多いハーキュリーズが勝ったのだから、大型ビジョンに映し出された結果だけを見れば不思議ではない。
ただ、両チームの得点にラクに奪ったものはなかった。
51歳のFWも先発したタマリバの粘りもあり、終盤まで勝利の行方が分からぬ80分となった。
先行したのはタマリバ。前半3分、平岡知浩がキックチャージからそのままトライを奪う。FB畑隆樹のゴールキックも決まり、7-0とした。
先制トライの平岡は背番号1。しかし、スクラムではLOの位置に入っていた。
代わりに背番号5を付けて左PRとしてプレーしたのは岩下剛史。ふたりはジャージーのサイズの都合で、1番と5番のものを交換して着た。限られた条件の中で活動しているクラブらしいエピソードだ。
岩下は51歳。2000年の創部から在籍している。
若く、走れるハーキュリーズは、前に出て圧力をかけるタマリバの前に、思うように動けなかった。
ブレイクダウンでも、躊躇なく頭を突っ込む相手に手を焼いた。
14分にモールからトライ、そしてゴールを決めて7-7と追いつくも、なかなかモメンタムを生み出せなかった。
22分、27分に加点されたのも、プレッシャーを受ける中で反則を重ねたからだ。
37分、攻撃を継続した後にCTB堀越貴晴が個人技でインゴールに入って(ゴールキックも成功)14-13としたものの、PGを追加されて14-16のスコアでハーフタイムに入った。
後半に得点したのは、2トライ、2ゴールのハーキュリーズだけだった。
3分、モールから奪ったトライとゴールで21-16と逆転。
その得点差は長く続き、次にスコアしたのは試合終了直前だった。
ラインアウトからモールを押した後にフェーズを重ね、最後はSH若林俊介がインゴールに飛び込む。
中村大地のゴールキックも決まり、勝負を決めた。
関東学院大時代に「奄美のセレヴィ」と呼ばれたSO竹山将史は、44歳になったいまでも変幻自在のパスとフットワーク。タマリバのBKを操り、何度も好機を作った。
鋭い一の矢、殺到するブレイクダウンもあり、白いジャージーは何度もハーキュリーズ陣深くに攻め込んだ。
そんな展開でもハーキュリーズが勝利を手にできたのは、「自分たちが立ち返るところはディフェンス」の意思で全員が結束していたからだ。
今季は東日本トップクラブリーグで北海道バーバリアンズ、タマリバに多くのトライを許して完敗した。
そんな状況から、全国大会で試合を重ねるたびに這い上がり、チーム力をここまで高めた。
クラブの代表を務める林雅人氏は、「準決勝の北海道バーバリアンズ戦で、ハーキュリーズ史上最高のディフェンスを見せて勝ったのが大きかった」と話した。
「ボールを持っていない時の動きが大切だと、あらためて全員が学びました。きょうも、それが生きました」
以前の優勝時、帰りの貸切バスをトイレ無しにしたことがある。祝杯をあげながらの帰路に苦しんだから、最近はトイレ付き。
今回もそのモデルを手配してよかった。
タマリバは敗れたものの、ラグビーは年齢でやるものではないことを証明してみせた。
最年長の岩下は、「長くともにプレーしているメンバーです。みんながタマリバの文化を理解して動き、頭を使っている」と語り、成熟したクラブの懐の深さを伝えた。
「いつも、相手に嫌な景色を見せようと言っています。タックルしたら、あるいは倒れた後、何度でもすぐに立ち上がっていたら、相手も嫌になるでしょう」
互いのカルチャーがぶつかり合い、両軍ともディフェンスでは譲れないと体を張り続けたから好ゲームになった。