「2週間後、クルセイダーズと開幕戦を戦うチーフスは、今回のチームとは別物になっているはずだ」
戦った日本勢への敬意を言葉にし、対戦の機会をポジティブに捉えると語った会見の最後だ。勝ったギャラガー・チーフスの指揮官クレイトン・マクミランが誇りを滲ませるコメントを残した。2戦ともフルメンバーではない中で1勝1敗、2戦目は5点差勝利。我々の本来のレベルはここにはない--ととれる。2月下旬開幕のスーパーラグビーパシフィックで優勝を期するチームのプライドだ。
2月10日、リーグワンの国際試合「クロスボーダーラグビー」が、最終キックオフとなる第4戦を秩父宮ラグビー場で迎えた。昨季、スーパーラグビーパシフィック(SR)準優勝のギャラガー・チーフス(ニュージーランド=NZ)がクボタスピアーズ船橋・東京ベイを35-30で破った(前半21-8)。
チーフスは第1戦の埼玉パナソニックワイルドナイツ戦(38-14で埼玉WKが勝利)から先発9人を代えたメンバーでスタート。前戦ではメンバー入りしなかった4人が先発。その一人、WTBアントン・レイナートブラウン(オールブラックス キャップ70)がキャプテンを務めた。
前半は、前季リーグワン優勝のスピアーズがPGとトライを奪う一方、チーフスが3トライ3ゴールでリードを13点とした。試合序盤は、スピアーズが個々の力を示して健闘。CTBハラトア ヴァイレアのPGで3-0とし、前半15分に1つトライを失うも(G成功)、WTB根塚洸雅のチャンスメメイクとフィニッシュで右インゴールへボールを叩きつけ、8-7とリードを奪った(前半25分)。
CTB立川理道主将など複数の主力を欠く布陣ながら、今季はSHでもプレーするSO岸岡智樹ら、リーグ戦で先発出場を目指すメンバーの奮起に、レギュラー組も触発されるかのようなパフォーマンスだった。活躍の根塚が前半29分にベンチに下がったように、スピアーズは翌週からのリーグ戦を見据えた起用を貫いたが、選手たち個々の意欲は高かった。
チーフスもまた個人それぞれの突破力でスペースを作り出すアタックで、地力の高さを見せた。前半32分、39分と連続トライを取り切るのはさすが。21-8のハーフタイムは、チーフスの後半の「爆発」も予感される折り返しだった。
しかし、後半に踏ん張ったのはスピアーズ。ほぼ交互にトライを決め合う撃ち合いとなり、最後は5点差に迫って見せた。
チーフスが繰り出すフィジカルとスピード。着実にトライで重ねるスコアに、スピアーズは食らいついていった。後半7分には相手ゴール前ラインアウトから「一発」のトライ。SO岸岡のロングパスからWTB山崎洋之(後半出場)が右エッジを駆けた。後半13分にPGで加点してスピアーズ16-21チーフスに。
後半20分にスピアーズ23-28チーフスとする粘りのトライ(G成功)は、帝京大卒業を3月に控えたHO江良颯がモールからショートサイドに持ち出して前進、ラックからPR才田智がねじ込んだもの。
メンバーを代えながら何度離されても元気に取り返すトライは後半36分にも。右ライン際で再びWTB山崎を走らせて(G成功)、スピアーズ30-35チーフスと迫った。
ホーンが鳴った後も、相手陣ではアグレッシブに攻め続けるチーフス、最後までディフェンスでも仕掛けるスピアーズ。やり合いはチーフスが自陣でキックアウトするまで続いた。
「日本のプレーのレベルには感銘を受けている」(チーフス マクミランHC)
日本はリーグの真っ只中のホーム戦、チーフスは開幕1か月前からの遠征と、大会のセッティングには課題もあるが、熱戦は9439人の観衆を楽しませた。
2月3日に開幕したクロスボーダーラグビーはNZ勢2チームがリーグワンの昨季4強と戦い、全4試合中3戦でNZ側が勝利を収めた。1勝を挙げたのは一昨季リーグワン優勝の埼玉パナソニックワイルドナイツ(2月4日・熊谷ラグビー場)、38-14でチーフスを破っている。