高校日本代表のセレクションマッチがおこなわれた1月26日。視察に訪れたエディー・ジョーンズ日本代表HCに、自ら話かけた青年がいた。
福田大和。
中部大春日丘の3年生だ。先の花園ではキャプテンとして同校を2度目の8強入りに導いた。
「感謝していますと、伝えたかったので」
世界を沸かせた一戦に、当時10歳の福田少年も例に漏れず心を揺さぶられた。2015年のW杯で、エディーHC率いる日本代表が南アフリカを破ったあの一戦だ。
「ラグビーにハマった瞬間です。自分も日の丸を背負いたいと思いました。いまでも試合前に、自分を奮い立たせるために見返します」
エディーHCが視察に来ることは事前に知らされていたから、「英語の先生にもこういうことを話したいと伝えて、アドバイスをもらいました」。思いを伝えたことで、より日本代表への思いは強くなったという。
「(2027年のW杯を)もちろん、目指します。憧れの舞台ですし、エディーさんと一緒にプレーしたい。ただ、足りないところもいっぱいあります。そのためにも今できること、まずはU19のメンバーに選ばれて、(遠征先の)イタリアでレベルアップしたいです」
この日のセレクションマッチでは後半から登場。トライも挙げるなどインパクトを残した。キャンプは前日からおこなわれていたが、福田は学校の学年末テストを受けるため試合当日に合流していた。
「留学していた分、このテストを受けないと卒業できなくて。テスト勉強しないといけなかったけど、ソワソワしてしまって、なかなか手につかなかったです(笑)」
福田は春日丘が設けた留学制度の第1号だ。2年時と3年時の二度、海を渡った。
留学先はニュージーランド(以下、NZ)。日本代表を志すきっかけにもなった2015年のW杯で、「(優勝する)オールブラックスを見て、日本とは違った感動があった」。
「両親にはNZでラグビーをしたいと小学生の時には話していました。中学を卒業したら向こうの高校に入ることも考えたけど、コロナで行けなくて…。宮地(真・監督)先生はその思いを理解してくれて、ハルヒで留学できる制度を整えてくれました」
留学中の5月から10月は、NZ国内有数の強さを誇るオークランドのセントピーターズカレッジで、ラグビーと勉学に励んだ。異なる言語でのコミュニケーションは、「単語、単語でなんとかやっていました」。
ホームステイはFWコーチの「アフさん」が受け入れてくれた。アフさんは、春日丘でコーチを務める元日本代表のロペティ・オトと同級生だった。
「ラグビーへの理解があって、ご飯をたくさん食べさせてもらいました」と感謝する。
「もうひとり、中国人の留学生も受け入れていて、炊飯器もありました」
2年時のシーズン終盤には1軍に上がり、3年時はチームから「もう一度プレーしないか」とオファーが届くまでに信頼を勝ち取った。
「仕事量と真面目さを評価していただきました。海外の選手は雑というかアバウトなところがある。そこをきっちりやれるのは、世界でも通用する日本人の強みと実感しました」
手ごたえを掴みながらも、大きな課題を得て帰国した。
「一番の違いは接点です。海外の選手は日本人と比べて体も大きくてフィジカルが強い。そこが一番の違いです。そこについていくためにずっとフィジカルは鍛えてきたし、上のカテゴリーで戦うためにもっとレベルアップしていきたいと思っています」
卒業後は大学選手権3連覇中の帝京大に進む。「ラグビーを頑張りたいと考えたときに一番は帝京だと」。
出身大学別ではW杯の代表スコッドに2大会連続で最多のOBを送り込む同校で、エディーHCへのアピールを続ける。