力を発揮している。
アーディ・サベア。オールブラックスことニュージーランド代表で81キャップを獲得の30歳だ。昨年はワールドカップ・フランス大会で準優勝し、国際統括団体ワールドラグビー選定の世界最優秀選手に輝いている(男子15人制部門)。
現在は、日本のコベルコ神戸スティーラーズへ在籍。昨年12月中旬から国内リーグワン1部へ初参戦しており、開幕から6戦続けてオープンサイドFLで先発する。
身長188センチ、体重102キロのサイズを、突進、タックル、身体の軸を保って繰り出すオフロードパス、肉弾戦への仕掛けで活かす。
「何が何でも勝つ。その気持ちが、自分を突き動かしています」
1月27日、神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場で第6節へ出た。
序盤で光ったのは21分頃。味方1名がイエローカードで不在ななか、対する横浜キヤノンイーグルスの攻撃へ対峙。自陣10メートル線付近左中間から同22メートルエリアまで一気に駆け戻り、右隅のスペースを補う。抜け出すランナーを止める。
その場ですぐに起き上がり、腰を落とし、肩を相手側に向ける。楕円球に絡む。イーグルス側の体当たりを食らっても動かず、ペナルティキックを奪った。ピンチを脱した。
チームメイトを「兄弟」に見立てて発した。
「それがまさにルースフォワード(FLをはじめFW第3列)の仕事。それを全うすることによって、僕の後ろにいる『兄弟たち』の肩の荷が軽くなります」
試合は31-27で制した。昨季3位だったイーグルスの波状攻撃に苦しみ、残り15分で13点差をつけられながら、終盤の少機を活かした。マイク・ブレア アタックコーチの言葉を借りれば、「追いかける展開で勝つ道を見つけられた」わけだ。
ターニングポイントは78分。わずか1点リードのスティーラーズは、中盤から防御を崩されながらも自陣22メートルエリアでなんとか攻守逆転した。
ちょうど近くにいたサベアは、ボールを受け取るや敵陣深くまで蹴り込む。
弾道を追う。
最後は、処理に回った選手へ強烈な一撃をお見舞いした。同僚でFLのサウマキ アマナキとともに地面の球へ身体を差し込み、イーグルスの反則を誘った。
結局、SOのブリン・ガットランドのペナルティゴールが点差を広げたこのシーン。サベアのタックル自体が走者をつかまない危険な形と判定されかねなかったが、本人は、前向きに捉える。
「目をつぶってタックルへ行っていて、どうだったかはまだ確認していません。ただコンタクトがあった時、それが『危ない』かどうかはレフリーが判断すること。そこで『危ない』と見られなかったことは、きょうの結果にも関係しましたね」
これでスティーラーズは今季3勝3敗。勝率5割とした。旧トップリーグ発足前に日本選手権7連覇の古豪は、前年度1部で12チーム9位と低迷。今季は元オーストラリア代表指揮官のデイブ・レニー新ヘッドコーチのもと、豪華戦力の最適化に努める。
レニーに代わってイーグルス戦後の会見に出たブレアは、「(個々の)キャラクターを表して勝てたのはよかったが、そればかりに頼り切っていては優勝できない」と話した。
「全てを少しずつ成長させなければいけない。コーチンググループは新しく、新しい選手もいる。我々がどうプレーしたいか(についての意思統一が)、完璧になっているわけではないので、そこを追い求めていきたい。これには時間がかかります。ただ、いま以上に早くしていかないといけない」
確かにこの午後は、連係の求められる動きで後手を踏むことがあったか。サベアが21分に妙技を決めた直後も、ラインアウトでエラーがあった。
大駒の一手をたくさんの白星につなげるには、何が必要か。
そう問われたサベアは、あくまで己にベクトルを向けて言った。
「もう少し自らボールを持ってキャリーするシーンを増やせれば、より勝利に直結した働きができる。あともうひとつ、あります。レフリーが何をどのように見ているか、レフリーにどんな特徴があるか。そのあたりへの理解度がついてくれば、もっとジャッカルができたり、ラックのなかで有利な状況を作り出せたりするはずです」
以後は中断期間へ突入する。2月25日に東京・駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場で、リコーブラックラムズ東京との第7節に挑む。