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今度はケンブリッジで。土佐誠、2度目のヴァーシティーマッチ出場へ挑む

2024.01.28

「今回はケンブリッジでの挑戦です」。(本人提供)



 世界は刺激にあふれている。
 37歳になって、そんな体感を得られる人生はしあわせだ。

 リーグワン2022-2023を最後に現役(尾道→関東学院大学→オックスフォード大学→NECグリーンロケッツ→三菱重工相模原ダイナボアーズ)を引退した土佐誠は、いま、英国・ケンブリッジの街に暮らしている。

 関東学院大学を卒業した2009年にはオックスフォード大学へ留学し、同年のヴァーシティーマッチでプレーした。

 ヴァーシティーマッチとは、1872年に始まったオックスフォード大×ケンブリッジ大の伝統の一戦だ。
 2023年までに戦った141戦の通算成績で勝ち越しているのはケンブリッジ大。65勝は、オックスフォード大の62勝を上回っている(14引き分け)。

 土佐は現在、ケンブリッジ大学ジャッジビジネススクールに学ぶ。エグゼクティブMBA(経営学修士)取得を目指している。
 社会人経験を積んだ層向けの2年間のコースだ。クラスには102名。平均38歳で、そのうち女性が36パーセント。32の国籍を持つ人たちが、それぞれの目的に向かっている。

 土佐は、2023年9月から毎月、現地での勉強と日本を往復する生活を続けてきた。
 この1月からは現地で暮らす。

 プロ化の進むラグビー界。このフィールド、あるいはプロスポーツ界で、より自分の力を発揮して生きていくにはビジネス的な視点と知識を持つことが重要と考えての行動だ。
 世界とつながることも重要。人脈は財産となる。

 以前オックスフォード大で学んだ際、専門分野を学び、ラグビーを楽しんだ後、世界に出ていく何人もの姿を見た。
 原点には、その記憶がある。

 働きながら学ぶ人が多いため、1か月のうちにビジネススクールに学ぶ期間は限られている。
 そんな環境の中で1月からカレッジの寮に住んで日本から離れたままの生活を送るのは、ラグビー部での活動が増えるからだ。

 3月におこなわれるヴァーシティーマッチへの出場を目指す。
 クラブからの期待も大きい。

 今回は、ダン・ヴィッカーマン スカラシップ(奨学金)を受けている。渡英に関して多くの人に相談する中で、同奨学金の提案を受けた。

 ヴィッカーマンは南アフリカ出身ながら、オーストラリア代表として63キャップを持つ名選手だった。2017年、37歳で故人となった。

 2008年からケンブリッジ大学に学び、2009年のヴァーシティーマッチでは同大学のキャプテンとしてチームを牽引。31-27と勝利に導いた。

「同じ試合に出ていました」と土佐が言う。
「当時対戦したチームに、いま加わっています。同じフィールドで戦った選手の奨学金を得てここにいる。縁を感じます」

 以前はオックスフォード大に学び、今回はケンブリッジ大。その理由を、「伝統というものとは程遠い出身なので」と笑う。
「尾道(高校でラグビー部の創設メンバー)、関東学院と、伝統に抗っているところでプレーしてきました」

 オックスフォード大学に再び学んだ方が、恩恵を受けやすかったかもしれない。しかし、新たな道へ進もうと考えた。
「でも結局はいま、ケンブリッジの伝統の力を、あらためて強く感じながら活動しているんですけどね」と苦笑する。

 ヴァーシティーマッチへ出場すれば与えられる『ブルー』の称号を、両校で得られたら最高の名誉だ。
 全力でチャレンジする価値がある。

 昨年11月、『Pillagers Invitational XV』と対戦したファーストチームのNO8として80分プレーし、初キャップを獲得した。
 今年に入り1月19日のブリストル大戦でも8番で80分ピッチに立った。

 チームの歴史を遡れば、過去には各国代表経験者がケンブリッジ、オックスフォードの両大学に多く在籍した頃もあった。

 いまは時代が変わり、そんな状況はなくなったけれど、昨年までは元イングランド代表SOのトビー・フラッドや、ハーレクインズのLOマット・シモンズも在籍した。
 もう一人のハーレクインズ選手、SOジェイミー・ベンソンは今季も所属している。

 今季のキャプテンは、ブリストルでプロフェッショナルとして活躍してきたHOベン・ゴンペルス。現在は研修医を務めている。
 多様性と個性が豊かなチームに身を置いてプレーし、友と語らう。その時間が、人生を豊かにしてくれる。

 今年のヴァーシティーマッチは3月2日(土)。12時から始まる女子の試合に続き、男子は15時キックオフとなる。
 舞台は以前のトゥイッケナムとは違い、サラセンズのホーム、『StoneX stadium』。
 2009年は途中出場だった。今回は8番を背負って躍動したい。


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