先の花園で全国準優勝の好成績を残した東福岡。その新チームにチャレンジする最初のチームになれた。
福岡県立嘉穂高校が、22年ぶりに福岡県のベスト8に入った。
1月14日に鞘ヶ谷陸上競技場でおこなわれた福岡県高校大会新人戦の3回戦でシード校の筑紫丘高校に17-10と勝利し、1月21日、準々決勝で東福岡に挑む。
筑紫丘戦には、九州産業(120-0)、北筑(36-15)に勝って臨んだ。常に先手を取る試合展開だった。
前半2分に先制トライを奪い、同15分にもトライを決めた。
27分に5点を奪い返されるも、12-5でハーフタイムを迎えた。
後半も先に点を取った。10分に17-5と差を広げた。
後半28分にトライを許して17-10と迫られるも、最後は守り切った。
タッチラインに球を蹴り出して試合が終わると、全員が喜びを爆発させた。
勝利を信じ、準備を重ねてきた成果が出た一戦だった。
筑紫丘は6年前の花園予選で対戦し、0-127で敗れた相手だ。当時の嘉穂は合同チーム。長い歳月をかけて、今回、7点上回ることができた。
嘉穂がベスト8に入ったのは、2002年4月の九州大会予選以来のことだ。
福岡県が全県のトーナメントになってから19年が経つ。以前は、福岡、北九州、筑後、筑豊の各地区から数校ずつの代表チームが出場し、ベスト16からトーナメント戦をおこなっていた。
現行の方式になってからは初の8強だ。
22年の間、部員不足で合同チームになったこともある。2学年で3名しかいないこともあった。
そんな苦難の時代を乗り越えていまがある。
現在男子部員は17名(1年生9名、2年生8名)。
女子部員2名(2年生1名、附属中3年1名)、マネージャー3名(2年生1名、1年生1名、附属中3年1名)も含め、全22名で活動している。
十分とは言えない人数ではあるが、若手OBたちがグラウンドに足を運んでくれたことが大きなサポートになった。
自分たちが成し得なかった8強入りの夢を託した後輩たちがやってくれたのだ。その喜びの大きさは想像に難くない。
「選手たちはよく頑張った。他のチームや観客の方は、筑紫丘優勢と見ていたと思います。しかし選手たちは純粋に、本気で勝てると信じ、戦術を深く理解し、高い集中力で前に出続け、ディフェンスしてくれた」
そう話す田村一就(かずなり)監督は、2018年からチームを率いている。
勝利の瞬間、嬉しさ以外にいろいろな感情がわき上がった。
感謝の気持ちが大きかった。
「人数が少なかった頃から東筑高校、北筑高校、八幡高校など北九州のチーム、修猷館高校、香椎工業高校、昨年度は東福岡高校にも行かせていただきました。一昨年は筑紫高校にも。県内の高校のチームに本当にお世話になりながら少しずつ力をつけることができました」
人数も揃わない自分たちを、嫌な顔ひとつせず受け入れてくれた各チーム。「合同練習等を受け入れてくださった先生方に感謝の気持ちでいっぱいです」と話す。
筑紫丘高校も、久住で夏合宿をともにおこなう仲だ。この日も、特別な思いで試合に臨んだ。
1930年創部の伝統校。応援してくれるOB、関係者も多い。田村監督は、日頃のサポートに結果で恩返しできたことが嬉しい。
今回の試合は、タイセイ・ハウジーの赤間敏雄取締役相談役らを中心としたOB会からの援助を受けて新調した短パンで戦った。
試合用ヘッドキャップ、トレーニングジャージーも購入した。
OBたちの母校愛が詰まったチームグッズも、今後の上昇を支えてくれるものになりそうだ。
NO8の立木碧主将(たちき・あおい/太宰府少年ラグビークラブ出身)も、「1年生の頃から目標にしてきた大きな壁(ベスト8)を乗り越えた瞬間はとても嬉しかったです」と勝利を喜んだ。
「選手、マネージャーが一丸となり、試合に臨んだ結果だと思います。プレーヤー17名と厳しい状況でしたが、全員がディフェンスで前に出て相手にプレッシャーをかけ続けて、体を張り続けてくれました」
キャプテンは、「いつもサポートしてくれているマネージャーの存在も大きかった。これからもさらなる高みを目指して日々の練習に励みます」と、感謝の気持ちも忘れなかった。
「今回の結果は僕たちだけの力ではなく、田村先生をはじめ、自分の時間を削ってまで練習に参加してくださった先輩方、たくさんの支援をしてくださるOB会、いつも支えてくださる保護者、学校関係の方々と一緒に掴み取った勝利だと思っています」
戦いは、まだ終わっていない。
準々決勝でも全国トップレベルの相手に全力を出し切りたい。
春になれば、1年生が新たに加わる。多くのフレッシュマンを惹きつけるパフォーマンスを見せる覚悟はできている。