車いすラグビー国内最高峰の大会「第25回 車いすラグビー日本選手権大会」が、1月12月(金)~14(日)に千葉ポートアリーナ(千葉市)で開催される。
1年間のクラブチーム活動の集大成となる今大会には、予選とプレーオフを勝ち抜いた全8チームが出場し、日本一の座をかけたチームカラーあふれる戦いが繰り広げられる。
そして、パラリンピック・イヤーを迎え代表争いが本格化する中、日本代表候補選手たちのパフォーマンスや、代表候補選手同士のマッチアップも注目される。
大会は4チームずつ2つのプールに分かれて総当たり戦を実施したのち、各プールの上位2チームと下位2チームによる順位決定トーナメントがおこなわれる。
来たる頂上決戦を前に、地方予選での戦いを振り返りながら、予選ラウンド・プールAの4チームと注目カードについて紹介したい。
プールAでは、TOHOKU STORMERS(東北)、BLITZ(東京)、AXE(埼玉)、RIZE CHIBA(千葉)の4チームが準決勝進出をかけて戦う。
前回大会でチーム史上最高位となる準優勝という堂々たる成績を収めたのは、TOHOKU STORMERSだ。
強化指定選手の中町俊耶がキャプテン、橋本勝也が副キャプテンを務め、そのふたりが繰り出す、技術を超えた直感レベルのロングパスや、絶妙な間合いでスタートを切る庄子健と中町の息の合った連係といった、STORMERSならではのダイナミックなプレーは必見だ。
今シーズン、チームが掲げるテーマは「執着」。しんどい場面でボールを守り切る、苦しい時に車いすをもうひと漕ぎする…、踏ん張りどころで執着心を持ってプレーすることを追求した。
「東北に車いすラグビーの文化を作りたい」との思いで結成したSTORMERS。
3年ぶりに東北(岩手)在住組も合流し、東北魂で「前回大会以上」を目指す。
今大会の優勝候補ナンバーワンに挙げられるのが、日本選手権で8回の最多優勝回数を誇るBLITZだ。
メンバーのほとんどが代表経験者で、今年度の強化指定選手18名のうち全チーム最多の5名が所属している。
6名で戦い抜いた前回大会に対して、今シーズンは池崎大輔の移籍をはじめ3名のメンバー(※コーチ兼任を含む)が加わりラインアップの数も増えた。予選では見られなかったが、本大会では、長谷川勇基―小川仁士―池崎大輔―島川慎一の、現役日本代表によるラインの登場も期待される。
派手な得点シーンに目を奪われがちだが、フランスのクラブチームでのプレー経験もある菅野元揮の力強いパスに、強度を増した荒武優仁の突破力、脇を固めるミッドポインター(障がいが中程度の選手)陣のプレーにも注目だ。
優勝が求められる今大会。タレント集団・BLITZが8年ぶりに王者奪還を果たし古豪復活となるのか、大きな見どころとなりそうだ。
予選(東京大会)2位で本大会への出場権を獲得したのは、埼玉を拠点とするAXEだ。
試合ごとにコンセプトを明確にし、組織的なプレーを展開するのが特徴だ。
AXEは予選大会からチーム体制を一新させ、本大会では強化指定選手の羽賀理之がヘッドコーチ、倉橋香衣がアシスタントコーチ(ともに選手兼任)を務める。そして、次世代選手による国際大会の出場経験もある、高校3年生の青木颯志がキャプテンを担うほか、日本代表の岸光太郎ヘッドコーチもプレーヤーとして出場予定だ。また、日本で5人目の女性プレーヤーとなった貝谷紗璃菜に加え、本大会では新人(14歳)がデビューを控える。
日本選手権でのテーマは「AXEのアレ(A.R.E)」。Advance(前進)、Resilience(成長)、Exploration(探求)を掲げ、どんなラグビーを見せるのか期待だ。
プレーオフで本大会への切符を勝ち取ったのは、日本選手権が開催される千葉を活動拠点とするRIZE CHIBAだ。
もともと北海道と千葉で活動していたクラブが一つになったことから、チーム全員が集まる練習の機会は限られるが、その分「コミュニケーション」を意識した積極的な声がけやベンチワークが印象的だ。
日本代表としての経験も豊富な今井友明や、出産後すぐに競技復帰したママ・アスリートの月村珠実をはじめ個性豊かなメンバーがそろう。国内で初めて女性選手2名が入るラインアップを起用したチームでもあり、本大会で月村と上原優奈が同時に入るラインが見られるのか楽しみだ。
「スーパースターはいないが、個々の力を合わせて4人で守り4人でゴールまで進みたい」(今井)
連係をさらに強化し、どのようなチームプレーで強豪に立ち向かうのか注目したい。
プールAの全6試合中、ひときわ激しい攻防が予想されるのが、大会2日目(1月13日)の「TOHOKU STORMERS 対 BLITZ」の一戦だろう。
前回大会では準決勝で対戦し、逆転に次ぐ逆転の末、STORMERSが1点差で勝利を収めた。1年ぶりとなる対戦でBLITZ がリベンジを果たすのか、それともSTORMERSが連勝しトーナメント戦に向け勢いをつけるのか、予選ラウンド屈指の好ゲームになりそうだ。
そして、同じく2日目におこなわれる関東勢同士のカード「AXE 対 RIZE CHIBA」。両チームともに2名の女性選手が所属しており、コート上8選手(1チーム4名)のうち半数の4名が女性選手、というシーンを見られる可能性がある。もし実現されれば、国内大会では初めての光景となり、男女混合競技である車いすラグビーを象徴するシーンになりそうだ。
1月12月に開幕する「第25回 車いすラグビー日本選手権大会」。
クラブチームのプライドをかけた、熱い戦いが始まる。
デザイン(チーム情報) / mine.design
素材提供・取材協力 / JWRF
文・撮影 / 張 理恵
【チーム資料 補足(クラスについて)】
・選手は障がいの程度や体幹等の機能により7つのクラス(0.5~3.5の0.5刻み)に分けられる。
・数字が小さいほど障がいが重いことを意味し、class0.5~1.5の選手はローポインター、2.0と2.5はミッドポインター、3.0と3.5はハイポインターと呼ばれる。
・コート上4選手の持ち点(クラスの数字)の合計は8.0以内と定められている。(なお、この4選手の組み合わせを「ラインアップ」と呼ぶ)
・チーム資料内class欄:数字の後ろの「F」は女性選手、「+」は45歳以上のオーバーエイジ(※)選手、「R」は新人選手等でクラスが未確定、を意味する。※国内ルール
・オーバーエイジ選手(※※)、女性選手がラインアップに入る場合、各1名につき、持ち点の合計に0.5の加算が許される。※※日本代表候補選手を除く。
【試合日程】(予選ラウンド・プールA)
◎1月12日(金)
10:30 BLITZ – AXE
12:30 TOHOKU STORMERS – RIZE CHIBA
15:00 BLITZ – RIZE CHIBA
17:00 TOHOKU STORMERS – AXE
◎1月13日(土)
10:30 AXE – RIZE CHIBA
12:30 TOHOKU STORMERS – BLITZ
▼大会情報(JWRF Webサイト)
https://jwrf.jp/news/25thjnc/