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自分のスタイルで。杉山優平[東芝ブレイブルーパス東京]

2024.01.07

第3節・神戸S戦で。169㌢、76㌔のSH。弟は慶大SHの雅咲(撮影:平本芳臣)

 リーグワンのディビジョン1は、年が明けるまでに3節を終えた。激戦が続くカンファレンスAで唯一の全勝は、昨季5位でプレーオフを逃した東芝ブレイブルーパス東京。
 開幕戦から静岡ブルーレヴズ、東京サンゴリアス、コベルコ神戸スティーラーズを連破した。

 好調のブレイブルーパスにあって、ここまで全試合で背番号9をつけているのが杉山優平だ。

 2020年度加入。大阪桐蔭、筑波大で主将経験もある実力者だが、入団してからの3シーズンは思うような日々を送れなかった。
 出場は1年目3試合、2年目6試合、プロ契約となった3年目は3試合に終わった。先発は2年目の2試合のみ。

 高い壁に阻まれていた。

 東芝の正スクラムハーフは長い間、小川高廣がその座を守ってきた。日本代表キャップ3。2季前にはリーグのベストフィフティーンに選出された。
 2番手には元クルセイダーズのジャック・ストラトンがいた。SOもこなせるストラトンは、リザーブで重宝された。

「経験、コーチからの信頼、いままでのバックグラウンドを考えると、ふたりには及ばなかった。練習試合にはケガせずに出続けていたけど、公式戦に出られない。不甲斐ない気持ちはずっとありました」

 そんな中で、ストラトンが昨季終了後に相模原DBに移籍。小川はプレシーズン中にケガを抱えた。
 だから杉山は、今季の起用を「運が良いだけ」という。しかし、トッド・ブラックアダーHCの信頼を得ているのも確かなようだった。

「タカさんが2試合目からリザーブで復帰して、今までの流れなら(第3節の)神戸戦で入れ替わっていたはず。でもメンバー発表の時にまだスタメンだった。オレなんやって。頑張れよと、背中を押された気がしました」

 その時、決意したことがあった。
「自分にできることをやろうと。これまではタカさんと自分を比べて、(小川が得意な)キックを伸ばさないといけないと思っていた。でもそうじゃないんだなって。 2試合ともキックは上手くいってないけど、先発させてもらえてる。どこを評価されているかを考えたら、自分の強みのところなのかなと」

 ボールをはやく、正確に動かすことを得意としてきた。そこで勝負しようと決めた。

 ハーフ団を組むオールブラックスのSOリッチー・モウンガとも肌が合った。コミュニケーションは良好だ。
 これまでの高い意識が実る。ブレイブルーパスに加入してからは、意識的に日本人だけでなく、外国人選手やコーチとも分け隔てなく接してきた。

「いろんな人から信頼を得たいと思ってます。英語は全然分からないけど、英語を話せる辰野(新之介/昨季まで在籍)に教えてもらいながら積極的に話してきました」

 元オールブラックスのセタ・タマニバルには特に気に入られた。アイランダーが集まる飲み会に呼ばれたり、子どもの幼稚園の送り迎えを手伝ったり。セタの家族が故郷に帰る際には、空港まで送り届けたこともあった。

「アイランダーのノリや人柄は理解しているので、そこは(モウンガとのコミュニケーションに)活きているかもしれません。モウンガから学べることはたくさんあります。でも、彼から返ってくる言葉は基本的にシンプル。そこまで深く考えるなよって顔をしてます。思い切りいこうよって」

 プレシーズンにはチームの許可を得て、自腹でニュージーランド留学も経験した。

 昨季のリーグ戦が終わって2週後には海を渡った。昨季まで所属した大内真(現BR東京)や、その大内とワイカトのクラブでプレーしていた釜石SWの吉川遼らのつてを辿って、ホークスベイにあるクラブチーム「ネイピア・パイレーツ」でプレーした。

「一度は海外挑戦をしてみたかったし、何よりラグビーをする時間が欲しかった。シーズン中はそれができずむしゃくしゃしていたので」

 そこで、心の持ちようも大きく変わった。
「クラブチームなのでそこまでレベルが高いわけではありません。高校生の時に戻ったような感じでした。ラグビーってこんなに楽しかったんだと。普段はラグビーで飯を食っている分、プレッシャーのなかでやらないといけないという感覚が強かったけど、(そもそもは)自分がやりたいからラグビーをやっているということを思い出しました」

 だからいま、「自分の味が出せれば番号にはこだわらない」と言える。
「(9番を)譲りたくないという気持ちもあるけど、それ以上に自分のスタイルを見失わないようにしたい。できていないことはたくさんあるけど、それ以上に強みを伸ばしたい。自分はそれができた時が一番楽しいから。自分の強みがチームの強みになればベストだし、チームが必要としてくれたらいいなと」

 1月7日におこなわれる序盤戦の大一番、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦でも、杉山は9番を託された。
 チームがいま、杉山を必要としている。

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