紫紺の6番がよく働いた。
ボールキャリーにタックル、スクラム。ラインアウトジャンパーも務め、トライも奪い、アシストもした。
12月23日、秩父宮ラグビー場で全国大学選手権の準々決勝がおこなわれた。
第1試合では明大が筑波大に45-7と快勝。前半は17-7と競るも、後半に引き離した。
前半は筑波大が接点で激しかった。攻防は拮抗した。
その中で、よりハードに、落ち着いてプレーしたのが明大のFL、6番の森山雄太だった。
東福岡高校から入学した4年生。182センチ、98キロとバランスのとれた体躯を持つ。
昨季からレギュラーとして活躍。今季も関東大学対抗戦に6試合出場(すべて先発)と信頼は厚い。
この日の筑波大戦では、よく得点に絡んだ。5-0だった前半26分には自らトライを奪った。
キックを受けたWTB海老澤琥珀がカウンターアタックを仕掛けると予想し、左のタッチライン際にポジショニングした。最後はSH萩原周からラストパスを受けた。
10-7だった前半36分には、左のラインアウトから攻めた。
センタークラッシュでできたラック右横のスペースを見つけ、走り込む。パスを受けて防御の裏へ出た。
サポートのHO松下潤一郎につないでトライが生まれた。状況判断の良さが光った。
自身のトライを振り返り、「(海老澤)琥珀が走ると予測し、エスコート(キック時の攻防におけるスキル)から、うまくサポートに走ることができました」
アシストプレーに関しては、「周(SH萩原)がうまくスペースを見つけた」と仲間を称えた。
前を見て状況判断。ボールを持てば、ステップを踏んでずらす。相手の強いタックルを受けないようにするためだ。
キックオフレシーブからのボールキャリー時も集中力を高める。
「モメンタムあるキャリーをして、いいアタックに結びつけたい」と心掛ける。
前半、渾身の力でコンタクトシチュエーションに挑んできた筑波大をしっかり受け止めることができたのは、「相手がそこに全力でプレッシャーをかけてくる。タフな展開になる」と予測していたからだ。
一歩も引かなかった。
筑波大のNO8谷山隼大主将は試合後、「相手(明治)には幼馴染もいたので楽しかった」と言った。
森山は、その昔からの仲間の一人だ。玄海ジュニアラグビークラブ時代の同期で、谷山はFW、自分はCTBだった。
高校進学時に東福岡高校、福岡高校(谷山)とわかれた。
しかし、国体チームで自分がFL、谷山がNO8に入り、一緒にプレーしたこともある。
「強くて、スピードもバネもある。タフな相手」と評す谷山と、この日は2回、マッチアップのシーンがあった。
「幼馴染だけに楽しかったし、負けたくなかった」と振り返る。試合後は言葉をかわした。
「優勝してくれ、と言ってくれました」
父・智さんは、大体大、サニックスで活躍したラグビーマン。現在は2022年春に創部した福岡・折尾愛真高校で監督を務めている。
帰省した際、練習に顔を出したこともある。
「部員も増えたようです。強くなるのが楽しみ」と笑顔を見せる。
昨シーズンは準々決勝で敗れ、ラグビーのない正月を過ごした。今季はとりあえず前年を超えることはできたが、負けたら終わりの戦いが続く。
そんな状況の中で勝ち切るためには、「どんなときもパニックになることなく、明治スタンダードをやり切ることが大事」と話す。
「必ず一人目が前に出る。こぼれ球は絶対にマイボールにする。それを徹底したいですね」
頂点に立つためには、1月2日の準決勝で京産大を倒し、もう一つの準決勝、帝京大×天理大の勝者を大学選手権決勝で倒さなければならない。
帝京大は、関東大学対抗戦で11-43と敗れた相手だ。険しい道は続く。
ラグビースクール、高校と同じ道を歩んできたCTB廣瀬雄也が今季のチームを主将として率いている。
しかし同主将はケガで欠場中。チーム一丸となって、キャプテンが戻ってこられるまで勝ち続けようと声をかけ合ってきた。
その思いが届き、準決勝ではともにピッチに立てる可能性も高まっている。
対抗戦で負けた帝京大にリベンジするイメージは頭の中にある。それをチームで共有。「いいマインドで練習に取り組めている」と話す表情は明るい。
リーグワンのチームへ進み、プレーを続ける。ラストイヤーのラストシーンを笑顔で飾り、次のステージへ踏み出したい。