9月に開幕したトップイーストリーグは、12月9日、10日に最終節を戦い、Aグループではリーグワン参入候補のヤクルトレビンズ、セコムラガッツが順当に1位、2位となった。Bグループは日立、丸和運輸、Cグループはライオン、大塚刷毛製造がそれぞれ1位、2位となりシーズンを終えた。
Aグループの上位2チームは12月24日から開催される3地域社会人リーグ順位決定戦へと駒を進める。
ヤクルト、セコムにルリーロ福岡を加えた3チームは、リーグ戦成績とこの順位決定戦の結果が新規参入審査の評価点となるため、これからも目が話せない試合が続く。
少々気が早いかもしれないが、来シーズンのリーグワン新規参入チームをいち早くチェックしたいラグビーファンはこれらの試合に注目すると面白いだろう。
しかしその前に、トップイーストとしてはAとB、BとCグループの入替戦も気になるところだ。
Aグループでは横河武蔵野が4位、秋田ノーザンブレッツが5位となり、Bグループとの入替戦に臨む。
Bグループは最終節の直接対決まで順位決定がもつれこんだ。
暫定で5位のクリーンファイターズ山梨が3トライ差以上をつけて勝てばボーナスポイントがつき、勝ち点で暫定4位の明治安田生命と並ぶことになる。そうなると大会規定で直接勝利している山梨が順位では上になる。
果たして山梨の最後の逆転4位を明治安田生命は阻止できるのか、それを見届けるため、12月10日は試合会場の明治安田生命のホームグラウンドへと足を運んだ。
試合は開始早々、SO髙木陽太(日本体育大)がPGを決め、さらに17分にはモールを押し込んでHO宮川倫理央(日本大)がトライ。キックも決まり10-0と明治安田生命が主導権を握った。
しかし、今シーズンは開幕から1勝5敗と思ったような試合ができなかった山梨が、この日はベテランが躍動した。
22分、ゴール前でペナルティを得ると相手ディフェンスが整っていないスキを突く。36歳のPR高坂平(関東学院大)が素早くリスタートし、トライに繋げる好判断を見せた。
さらに43歳のベテラン、NO8マパカイトロ・パスカ(立正大)が執拗にモール勝負を挑むかと見せかけ、機を見てサイドから飛び出し、逆転のトライを決めた。
ベテラン勢に引っ張られ、前半は21-17と山梨リードで折り返した。
FLでこの日プレーヤー・オブ・ザ・マッチにも選ばれた森賢哉(山梨学院大)は自分たちをこう評価した。
「ウチはベテラン選手が多い。若い選手の多いチームに負けているところもあると思うが、判断の早さであったり切り替えの早さという点がいかせれば、もっといいチームになれる」
しかし、明治安田生命も黙ってはいなかった。
後半13分、LO菅原貴広(帝京大)がモールを起点にフラッグを薙ぎ倒しながら右隅ギリギリにトライ。その3分後には自陣からWTB丸山央人(関東学院大)が一気に走り、それを受けて後半からWTBに入った相馬翔(拓殖大)が山梨BK陣を振り切る。キックも決まり、28点の山梨を1点追い越した。
山梨は3トライ差以上での勝利で4位の可能性が視界から消えようとしていた。いつもなら、ズルズルと失点を重ねてしまうのが悪いパターンだ。
しかし、この日は違った。
24分にすぐさま再逆転トライ。さらに31分、39分と、後半の後半だけで3トライを挙げ、49−29と見事に3トライ差をつけた。
そこでノーサイドのホイッスルがグラウンドに響いた。
「ウチは体の大きい選手が多く、相手もそこを警戒してくるのはわかっている。しかし警戒されているからこそ、そこを当てにゆく、そして効率よくボールを運ぶ。今シーズンこうしたラグビーを目指してやってきた」
そう語るのは山梨の小池善行ヘッドコーチ。この試合ではこれが山梨の目指してきたスタイルだとばかりに、少々のミスはお構いなしに、どの選手も豪快に突進してくる姿が印象的だった。
しかし単に個人プレーに頼って、やみくもに猪突猛進しているわけではない。
この日SHで試合を組み立てていた山田啓介(前NECグリーンロケッツ東葛/ビクトリア大)は試合をこう振り返る。
「個々のスキルがあるチームなので、それを組み合わせられるかがこれまでの課題だった。今日の後半はラックが綺麗にできたのでいいボールが出せた。そうなるとテンポもでてくる」
しっかりフォローが入って綺麗にラックが組めれば、いい形でボールが出る。いい形でパスをもらえればもっと前に出るオプションが使える。
当たり前のことだが、点と点がようやく繋がったのがこの試合だったというわけだ。
レギュラーシーズンの全日程を終了したトップイーストリーグ。今季は、各チームのレベルアップが目覚ましかった。
その背景には日本の社会人ラグビーの環境変化が影響しているように思う。
リーグワンは設立から3シーズン目を迎え、多くの海外スター選手がリーグワンでプレーすることになった。よりプロリーグ志向の強いリーグとなっている。
その一方で大学の強豪校の選手が社会人としてのキャリアも考え、トップイーストという選択をするケースも増えてきている。
例えば明治安田生命は1930年創部の伝統あるチームで、大学1部リーグの強豪校出身者がずらり顔を揃える。
この試合で活躍した丸山と相馬は今シーズンの新人だが、仕事とラグビーの両方に打ち込める環境に魅力を感じたのだろう。
明治安田生命はじめ日本を代表するような一流企業が多いトップイーストには、以前にもまして大学で活躍した選手が集結し始めている。
また、山梨でこの日トライを挙げた佐藤樹(金沢学院大)と渡嘉敷海(沖縄国際大)も今年の大卒新人選手だ。
山梨は地域のクラブチームと思われがちだが、この両名のようにラグビーのできる環境を求めて全国から、はては海外からも山梨に移住し、仕事と競技生活を両立している選手が増えている。
山梨に限らず人材不足が社会問題の地方では移住してくる若者は大歓迎される。
山梨も地方自治体からのバックアップを得ていて、それがチームの競技力強化の原動力になっている。
大学選手にはぜひトップイースト、ウエスト、九州の各リーグにも目を向けてもらいたい。
さて、最後にトップイーストの入替戦についておさらいしておく。
A-Bグループの入替戦は横河武蔵野アトラスターズ vs 丸和運輸機関AZ-MOMOTARO’S、秋田ノーザンブレッツ vs 日立SUN NEXUS茨城となった。
B-Cグループはそんなわけでクリーンファイターズ山梨 vs 大塚刷毛製造、明治安田生命ホーリーズ vs ライオンファングスの組み合わせとなった(すべて12月24日実施)。
さらに、冒頭に言ったようにトップイースト、ウエスト、九州の3地域順位決定戦も12月24日からスタートし、来年1月21日まで続く。
この戦いが幕を閉じると、来シーズンのリーグワン参入チームも決まる。その結果次第でトップイーストの各グループの顔ぶれも決まることになる。トップイーストの熱い冬はまだしばらく続く。