1年で戻った。
12月17日、熊谷ラグビー場でおこなわれた関東大学対抗戦A・B入替戦で、B-1位の日体大がA-8位の成蹊大に勝った(27-20)。
1年前の同じ顔合わせで、日体大は17-29と敗れて2023年度シーズンは対抗戦Bで戦った。
FL伊藤拓哉主将のもと、残した成績は7戦全勝。そのうち4試合に完封勝ちというプロセスを経て再び決戦の場に立ち、雪辱を果たした。
強風を背に最高の滑り出しだった。
開始2分、ラインアウトからのアタックでWTB中村元紀が先制トライを奪うと、開始12分までに2トライを追加し、24分にはPGで加点。20-0と大きくリードした。
ただ、成蹊大は粘りのチームだ。前半終了間際にトライを奪ってハーフタイムを迎えた。
20-5と日体大リード。後半、どちらが先に得点するか注目された。
強風はキックオフから40分が過ぎても変わらなかった。
しかし、風下に立った日体大は後半4分、FB大野莉駒が貴重なトライを挙げて27-5とした。
それでも試合はもつれた。それが入替戦だ。
シーズンを通してAで揉まれ、アンストラクチャーのアタックを磨いてきた成蹊大は7分、19分、29分と3連続トライを奪い、点差を詰めた(27-20)。スクラムの強さも、追い上げに勢いを与えていた。
引き分けなら、上位チームの残留となる規定。互いの思いがぶつかり合う戦いは、最後の最後まで続き、日体大が勝者となった。
秋廣秀一監督は、「1年間、キャプテンを中心にまとまって頑張ってくれた。本当にこの日を待ち望んでいました」と言葉を震わせた。
同監督は対抗戦Bで戦う中でもチームの強度を落とさぬように、いろいろな工夫を施してきた。
帝京大や東海大に練習試合を組んでもらった。
チームの一体感を高めるため、底上げをするため、前年まではあまり組めていなかったAチーム以外の試合も増やした。
例えば今季は、CチームもAチームと同じ試合数を戦った。チーム全体のモチベーションが上がり、それが勢いを生んだ。
その中で伊藤主将は、常に先頭に立ってチームをドライブした。
対抗戦Bで大差の試合が続こうが、自分たちのスタイルの追求を忘れない。はやいテンポの攻撃、前に出る防御の実現を仲間に呼びかけ続けた。
前年の入替戦、伊藤主将は先輩たちが涙を流した80分を、ウォーターボーイとして見つめた。
「僕らにとっては初めての入替戦でした。独特の雰囲気があり、それに飲み込まれるような感じがありました」
そのことを、ことあるごとに周囲に伝えた1年だった。
だから、今回の成蹊大戦も簡単にいくとは思っていなかった。
そんな心づもりがあったから、20点のリードから差を詰められても慌てなかった。
「自分たちがリードするつもりで準備してきましたが、成蹊大の粘り強いアタックやディフェンスに苦しむ時間が絶対にあると想定して、きつい練習をやってきました」
まず昇格。
名門チームにとっては簡単そうにみえて簡単ではない目標に絞り込み、過ごしたシーズンだった。
強い日体大へのチャレンジは「スタートラインに立った」(秋廣監督)この日、あらためて始まった。