ラグビーリパブリック

トラスト貫き、立川親子も笑顔。関東学院大が逆転勝ちで1部復帰

2023.12.20

後半22分、関東学院大は途中出場の内川朝陽がトライを挙げた。(撮影/松本かおり)

試合終了直後、立川親子の抱擁。(撮影/松本かおり)



 その日の観客は1808人も、試合の間中、スタジアムには賑やかな声が響いた。

 12月16日、熊谷ラグビー場。関東学院大が関東大学リーグ戦1部復帰を決めた。
 同リーグの1部・2部入替戦が実施され、2部1位の関東学院大が1部8位の拓大に38-26のスコアで勝った。

 試合終了の瞬間、関東学院大の部員席は沸きに沸いた。試合前から応援ソングをみんなで歌い、熱をピッチに届け続けた。
 チームの一体感も勝利の力となった。

 試合は関東学院大が前半2分に先制したが、拓大も黙っていなかった。
 12分にPRイジー・ソードがトライを奪い同点に追いつく。その後も、パワフルな留学生が作ったチャンスを機に、CTB高桑稜、FL古川太一がトライを追加した。

 関東学院大も先制トライを挙げたFB安藤悠樹が再びインゴールに入るも、前半は拓大が19-14とリードして終わった。
 大事な後半序盤にも拓大が得点した。
 13分、ラインアウトから仕掛けてNO8ハーダス・ロスマンがトライラインを駆け抜けた。

 14-26とリードされた関東学院大だったが、焦りはなかった。後半18分、SO立川大輝がPGを決めて9点と差を詰め、ラスト20分を迎えた。

 試合後、共同主将を務めるSO立川は、あらためてチームが落ち着いていたと語った。
「(2部の)リーグ戦でも、後半に逆転する試合が多かったので」
 中大戦や専大戦など、接戦を逆転で制した経験が大きかったようだ。

 優勢だったスクラムが終盤の逆転劇を支えた。
 強力なスクラメイジャー、1番の兒玉隆之介を中心に結束を固め、相手にプレッシャーをかけ続けた。

 そのうしろで躍動したのがSH服部莞太だ。後半22分、機を見て走る。トライライン直前でできたラックの上をLO内川朝陽が越え、トライを挙げた(Gも決まり24-26)。
26分にはラインアウトからのモール後、展開。 FB安藤がインゴールに転がしたボールをWTB諸山祐祥が抑えて逆転した(Gも決まり31-26)。

 勢いは止まらず、後半36分にもスクラムでの圧倒から追加トライと、勝負を決めた関東学院大。
 立川剛士監督は、「(昨季の入替戦で同じ拓大に負けてから)1年かけて準備してきました」と話した。
 スクラムやモールを強化してきたことが奏功した。

 立川とともに共同主将を務めるFL宮上凜は、昨季の入替戦で逆転負けを喫した記憶を忘れたことがない。
 だからこの日、リードされて迎えた後半、「(今年は)俺たちの番だぞ」と仲間に伝え、逆転への集中力を高めた。

 今季のチームスローガンは「トラスト」。互いの信頼感を最後まで保ち続けられたことが勝利に結びついた。
 だから立川共同主将は試合中、多くの言葉を口にしなかった。
 FWが受けていると思えば、「信じてるぞ」と短く声をかける。その一言だけで奮起する仲間たちの姿が頼もしかった。

 チームは変化をプラスにして、1年で1部に戻った。
 立川監督が就任したのが今年の春。黄金期を自ら作ったひとりとして、明るく、勝利を追求する集団を作った。

 部史上初めての留学生、2年生のFLラリー・ティポアイールーテルの存在もチームを活性化している。
「熱い。すごいパッション。チームが好き、といつも口に出して言ってくれる。そういう言葉や姿勢に助けられたことは多いです」と語るのは宮上共同主将だ。
 チーム愛は、黄金期もキーワードのひとつだった。

 立川監督は、息子の大輝共同主将とともに、今季のターゲットに届いた喜びもあるのか、終始穏やかな表情だった。
「やりやすいもやりにくいもなく、佐賀工時代も合わせ、7年間後輩ですから、嬉しいですよね。それだけです」

 宮上共同主将は、ふたりを見ていて「羨ましい」と笑った。
「ことし監督とキャプテンになって、すぐにチームを1部に上げた。ドラマみたいですよね」
 ハッピーエンドの1年だった。


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