その日の観客は1808人も、試合の間中、スタジアムには賑やかな声が響いた。
12月16日、熊谷ラグビー場。関東学院大が関東大学リーグ戦1部復帰を決めた。
同リーグの1部・2部入替戦が実施され、2部1位の関東学院大が1部8位の拓大に38-26のスコアで勝った。
試合終了の瞬間、関東学院大の部員席は沸きに沸いた。試合前から応援ソングをみんなで歌い、熱をピッチに届け続けた。
チームの一体感も勝利の力となった。
試合は関東学院大が前半2分に先制したが、拓大も黙っていなかった。
12分にPRイジー・ソードがトライを奪い同点に追いつく。その後も、パワフルな留学生が作ったチャンスを機に、CTB高桑稜、FL古川太一がトライを追加した。
関東学院大も先制トライを挙げたFB安藤悠樹が再びインゴールに入るも、前半は拓大が19-14とリードして終わった。
大事な後半序盤にも拓大が得点した。
13分、ラインアウトから仕掛けてNO8ハーダス・ロスマンがトライラインを駆け抜けた。
14-26とリードされた関東学院大だったが、焦りはなかった。後半18分、SO立川大輝がPGを決めて9点と差を詰め、ラスト20分を迎えた。
試合後、共同主将を務めるSO立川は、あらためてチームが落ち着いていたと語った。
「(2部の)リーグ戦でも、後半に逆転する試合が多かったので」
中大戦や専大戦など、接戦を逆転で制した経験が大きかったようだ。
優勢だったスクラムが終盤の逆転劇を支えた。
強力なスクラメイジャー、1番の兒玉隆之介を中心に結束を固め、相手にプレッシャーをかけ続けた。
そのうしろで躍動したのがSH服部莞太だ。後半22分、機を見て走る。トライライン直前でできたラックの上をLO内川朝陽が越え、トライを挙げた(Gも決まり24-26)。
26分にはラインアウトからのモール後、展開。 FB安藤がインゴールに転がしたボールをWTB諸山祐祥が抑えて逆転した(Gも決まり31-26)。
勢いは止まらず、後半36分にもスクラムでの圧倒から追加トライと、勝負を決めた関東学院大。
立川剛士監督は、「(昨季の入替戦で同じ拓大に負けてから)1年かけて準備してきました」と話した。
スクラムやモールを強化してきたことが奏功した。
立川とともに共同主将を務めるFL宮上凜は、昨季の入替戦で逆転負けを喫した記憶を忘れたことがない。
だからこの日、リードされて迎えた後半、「(今年は)俺たちの番だぞ」と仲間に伝え、逆転への集中力を高めた。
今季のチームスローガンは「トラスト」。互いの信頼感を最後まで保ち続けられたことが勝利に結びついた。
だから立川共同主将は試合中、多くの言葉を口にしなかった。
FWが受けていると思えば、「信じてるぞ」と短く声をかける。その一言だけで奮起する仲間たちの姿が頼もしかった。
チームは変化をプラスにして、1年で1部に戻った。
立川監督が就任したのが今年の春。黄金期を自ら作ったひとりとして、明るく、勝利を追求する集団を作った。
部史上初めての留学生、2年生のFLラリー・ティポアイールーテルの存在もチームを活性化している。
「熱い。すごいパッション。チームが好き、といつも口に出して言ってくれる。そういう言葉や姿勢に助けられたことは多いです」と語るのは宮上共同主将だ。
チーム愛は、黄金期もキーワードのひとつだった。
立川監督は、息子の大輝共同主将とともに、今季のターゲットに届いた喜びもあるのか、終始穏やかな表情だった。
「やりやすいもやりにくいもなく、佐賀工時代も合わせ、7年間後輩ですから、嬉しいですよね。それだけです」
宮上共同主将は、ふたりを見ていて「羨ましい」と笑った。
「ことし監督とキャプテンになって、すぐにチームを1部に上げた。ドラマみたいですよね」
ハッピーエンドの1年だった。