移籍後初の公式戦を落とした。
オーストラリア代表として今秋のフランス大会まで2度のワールドカップに出てきたサム・ケレビは、日本のリーグワン2部の舞台にいた。
創部2年目の浦安D-Rocksの12番をつけたのは12月9日。NECグリーンロケッツ東葛との開幕節を、敵地の千葉・柏の葉公園総合競技場で迎えた。
28-31と惜敗した。
「かなりタフな試合でした。相手のホームグラウンドで勝つことは試練だと思っていました。がまんして、がまんして、最後に…と思いましたが、(自分たちに)修正すべき点があった。」
身長186センチ、体重106キロの30歳。壁を破る。スペースを突っ切る。推進力は国際トップ級だ。この日も「私の仕事はチームを前進させること」と突進を重ねた。チームも攻めまくった。
しかし、決定力に欠いた。4度トライを奪ったが、敵陣ゴール前に入り込んだ回数はその倍以上。ケレビ自身も、敵陣のゴールラインへ駆け込みながらグラウンディングできないことがあった。
澄んだ瞳を下に落としながら、前向きに言った。
「正確性と強度を高めること。そうしさえすれば相手にプレッシャーをかけられるし、ポイントも取れる」
反則は向こうよりひとつ多い12度。その分だけ、前年度1部にいたグリーンロケッツに攻める機会を与えたわけだ。ケレビは続ける。
「まずは規律。特にグリーンロケッツのような相手にチャンスを与えると、結果はついてこないです」
昨季まで約4年、東京サントリーサンゴリアスにいた。在籍最終年度は故障に泣いたが、一昨季は攻守に躍動してベストフィフティーンを獲得。旧トップリーグ時代に5度の優勝を誇るクラブにあって、枢軸と見られていた。
このほど、創部2年目の新天地へ移ったわけは。「詳細は話せませんが」とし、こう述べた。
「マネジメントの方針が変わったと理解しました。サンゴリアスでも貴重な時間を過ごさせてもらって感謝していますが、自分の方針にあったチームを探していまに至ります。いまはD-Rocksで楽しんでいます」
チームは昨季レギュラーシーズンで全勝も、入替戦で1部最下位の花園近鉄ライナーズに2連敗。要所で笛に泣いた。23歳で主将就任2年目の飯沼蓮は、こう話していた。
「反則がゼロの試合はない。ただ、やってしまったことを、次にやらなければいい。(レフリーに)現状を聞けば、改善できる。それを意識したいです。当たり前のことをこだわらせることを、今年、意識しています」
就任2年目のヨハン・アッカーマン ヘッドコーチのもと、攻撃戦術の再現性も高めたいという。
「昨季は(舞台が)2部とあり、個人でいけてしまっていたところがあった。それも、勝っていたので。負けないと自分たちの現状について深刻に考えないですし、勝っているのに深刻に考えようとしたら雰囲気が悪くなるという難しさがある。ただ、今年はなんとなく勝つのではなく内容にこだわって勝とうとフォーカスしています。戦術(の導入)には、早めに入っています」
捲土重来を期す現場にマネジメントサイドが授けた新戦力のひとりが、ケレビだった。飯沼は、普段のケレビの態度に感謝する。
「外国人をまとめてくれています。ちょっと(練習などの)スタンダードが低かったら皆を集めて話すこともあるし、オフ・ザ・ピッチでは陽気。素晴らしい人間です」
敗戦後のケレビは、「皆のハードワークは誇りに思っている。その辺は大丈夫」。未来に光を見出してもいた。向こう9試合で6チーム中3位以内に入り、順位決定戦後の入替戦で目標を達成したい。