若者たちを見つめる大相撲関係者の姿もあった。
12月8日から3日間、2023年度第4回TID(Talent Identification=人材発掘・育成)キャンプ『Bigman & Fastman Camp』が福岡の『JAPAN BASE』でおこなわれた。
体格や身体能力に優れた高校生世代の選手たちが集まった。指導者からの推薦を受けた者もいれば、自薦の選手も。
大相撲関係者の目はビッグマンたちの方に向いていた。
将来性豊かな44人がリストアップされた今回。ファストマンのグループには、地元・福岡高校から自薦で参加したチームメートの2人がいた。
堂本大輔と安河内(やすこうち)俊介は、ともに同校の2年生でBKだ。
自チームではSOとしてプレーする堂本は、168センチ、68キロと小柄も、スペースがよく見える。
周囲を動かす。自らも動ける。鋭く仕掛け、ステップ、高いランニングスキルで抜く力がある。
「自分でも走れるマーカス・スミス(イングランド代表SO、FB)が好きです」
小4の時、長与ヤングラガーズ(長崎)でラグビーを始めた。50メートルを6秒ちょうどで走る。
幼い頃から柔道にも取り組み、中学時代は陸上部でも活躍した。
父の転勤で福岡へやってきたのは高校入学のタイミングだった。
長崎に残り、進学を希望していた長崎北陽台高校でラグビーを続けたい気持ちもあった。幼い頃からの仲間と一緒に花園でプレーしたいな、と夢見ていた。
福岡には全国トップクラスの東福岡高校がある。憧れの舞台に立つのは簡単ではない。
しかし福岡高校進学を選んだ。父の母校でもある。自分が3年時にはラグビー部の創部100年にあたる。チャレンジする価値を感じた。
178センチの安河内は自分と同じポジションの、南アフリカ代表WTB、マカゾレ・マピンピが好きだ
「パワーもスピードもあり、状況を問わずトライを取り切れる。自分も、そうなりたい」
堂本同様こちらも俊足。50メートルを5秒98で走る。
地域でラグビーを広める須恵ラグビー儀塾に参加するようになったのは小3の時。それまでは柔道をしていた。
ぎんなんリトルラガーズに所属してラグビーを続けていたが、中学進学時に悩んだ。野球もしたかったからだ。
支えになってくれたのは、ラグビーの世界に誘ってくれた恩師だった。
「ラグビーと野球、両方やればいいのでは、と言ってくれたんです。自分にはその考えはなかった」
福岡高校入学後は、ラグビーに専念するようになった。
堂本も安河内も今回のキャンプに参加して。これまで以上に向上心が高まっている。
堂本は九州トレセンのメンバーに選ばれるも、『KOBELCO CUP』のU17九州代表の選考から漏れ、悔しい思いをした。
「壁は高いな、と思ったし、競う相手のレベルも高い。自分はまだ、そこにたどり着けていないと感じました。なので、こういう合宿で吸収できるものを吸収し、他の選手に負けないような武器を作っていきたいと思っています」
安河内は夏のビッグマン&ファストマンキャンプに参加し、変化があった。
高いレベルの指導を初めて受けた。それ以来、意識と行動が変わった。そのお陰で、自分でも成長を感じている。
「このキャンプは、自分の持っているものを最大限引き出してくれる環境だと思います。ただ、それをもっと伸ばすのは自分次第。さらに高いところを目指したいと思っています」
2人とも大学ラグビーでも活躍したい希望を持っているが、その前に果たしたい夢がある。
自分たちが高校3年になったときに迎える福岡高校ラグビー部100周年という節目の年に、大きな壁・東福岡を超えて花園出場を果たしたい。
「ヒガシの選手たちは、大きく、スピードもある。その相手に勝つには、その部分の差を詰めながらも、一人ひとりがハードワークをして、体を張る。フィールドで、こちらの方が相手より多く立っていられるチームになります」
そう語るのは堂本。安河内は、「伝統のタックルで勝負する」と覚悟を口にした。
「自分たちの最大の武器はタックルと思っています。誇りを持っているので、まずはそこを完璧にやりたい。ディフェンスで前に出ます」
FBにはセブンズユースアカデミーにも選ばれる森洸志郎もいるから、堂本と安河内は「しっかり守れたら攻められる」と自信を口にする。
2024年を記憶に残る年にしたい。