12月10日、関東大学リーグ戦2部から5部までの入替戦がおこなわれた。
2部/3部の入替戦は2部8位の国士舘大と3部1位の新潟食料農業大が対戦した。国士舘は「前半20分で決める」(FL国兼颯太主将、4年、札幌山の手)の言葉通り、22分までに自らのトライなど計3トライを奪う。さらに2トライを加え33-0とした。後半は食農大が「タテで戦う」と反撃し3トライを決めるも、国士舘がラインアウト・モールから2トライ追加し47-19で2部残留を決めた。
食農大は、コロナ対策で入替戦がなかった2020年度にリーグ戦5部に加入した。’21年度5部全勝優勝、入替戦勝利で4部へ。’22年度4部全勝優勝、入替戦勝利。今季も3部を全勝優勝しチームの目標である「毎年、違うステージで戦う」を目指し2部昇格をかけていた。この日は「迷わずに前へ」を試合のテーマに据えた。前へ出るディフェンスで2部のフィジカルバトルで戦ってきた国士舘に対抗する。
前半最初の得点は、その「前へ」を国士舘が突いた。7分、ハーフラインからのラインアウトから出たボールをSO釘本祐作(4年、府中西)が食農大ディフェンスの手薄になった背後へハイパントを上げる。インゴールまで転がったボールをWTB大野将輝(4年、昌平)が押さえた。19分にはスクラムでめくりあげたPKから得たラインアウト。NO8新井亮汰(4年、東農大二)がゲインしSO釘本へ。釘本がインゴール左中間から中央へダイブ。コンバージョンも自ら決めて12-0とした。3分後にはFL国兼主将がやはりラインアウト起点で5点を重ねた。
「2部とのフィジカル差は感じなかった」と食農大のゲームキャプテンを務めたFL尾沼尚樹(3年、常翔学園)は話す。しかしバトルを国士舘が制していた。28分、食農大が国士舘陣22メートル内で左ラインアウトを得る。モールを組むと国士舘LOダバジャブ・ノロブサマブー(1年、札幌山の手)がボールキャリアーに絡み奪い取った。日本代表リーチ マイケル(東芝ブレイブルーパス東京)がアジアへのラグビー普及をかかげ立案、モンゴルでトライアウトをおこない日本にやってきた。高校日本代表候補にもなった逸材。ボールを広いサイドへ動かすと、インサイドCTB下山瑛司(4年、平塚学園)が仕留めた。3分後には食農大ゴール前、食農大のパスをアウトサイドCTB窪田龍之介(2年、報徳学園)がインターセプトし5人目のファイブポインターに(33-0)。
国士舘・古田仁志監督は「前半で差をつけることができた。(食農大の)バックスの裏に蹴るとFB1人になり、ディフェンスが薄くなることがわかっていた。2部ではリカバリ―ができるところに差がある。ここを崩す練習も準備してきた」。プランが当たった。
ハーフタイム。食農大・谷崎重幸監督は「これが2部で揉まれてきた力」。たたみかけてくる相手にボールキャリアーへの指示をした。
後半は食農大が初めにトライラインを越えた。国士舘陣のスクラムで国士舘がコラプシングを奪うもタッチキックはラインを越えず食農大が確保。3部で見せてきたパスラグビーで敵陣へ。国士舘が反則を犯すとラインアウト・モールを組む。ラックサイドをフォワードが攻めPR佐藤太暉(3年、松韻福島)がインゴールへ潜り込んだ。
しかしリスタート後、国士舘が右ラインアウト、モールを組む。バックスも加わりWTB大野がトライでお返し。今度は11分に食農大がモールで押し込むと国士舘が崩しペナルティトライになった。さらに食農大が1トライを加え40-19となる。39分、国士舘がゴール前ラインアウトから攻めNO8新井が7本目のトライ、コンバージョンをSO釘本が決める。ノーサイドの笛が鳴った(47-19)。
残留を果たした国兼主将。「入替戦までの2週間、規律を守ることに取り組んできた。後輩たちに2部の場を残すことができた」。ほっとした表情だった。
昇格を逃した尾沼ゲームキャプテンは「入りで受けてしまった。国士舘にプレッシャーをかけようと前へ出ました。(これは)リーグ戦ではしていなかった。裏に蹴られて処理ができなかった」と振り返った。バックスリー5人のうち4年生は1人だけだ。「バックスはいい経験をした。来年もここ(入替戦)を目指します。僕たちが向こう側(勝者)になる」と来季に目を向けた。谷崎監督も「いい経験になった。後半は立て直した」。来季も有望な1年生が入学するという。
国士舘の先発メンバーLO、FL4人はすべて札幌山の手出身者だった。前日にリーグワン開幕戦で静岡ブルーレヴズとのバトルを制した同校OBリーチ マイケルも観戦。試合後は後輩たちを称え、谷崎監督はじめ東福岡高時代に谷崎氏の指導を受けたOBとも交流した。
2部/3部の入替戦もう1試合は、2部7位の朝鮮大がリーグ戦3部で食農大を苦しめ2位となった東京工業大から計12トライ、大量76点(前半52点)を奪う一方、東工大に得点を与えず、残留を決めた。
「3部/4部は3部チームが残留、4部/5部は5部勢が昇格へ」
3部/4部入替戦は2試合を東京都立大グラウンドで実施。
3部7位の東京都立大と4部2位・駒澤大が相対し22-22で引き分け。都立大が残留した。前半17分、駒大がPGで先制すると3分後、都立大がトライ、コンバージョンで逆転。しかし35分に駒大がトライラインを越えてゴールキックも決め、10-7で後半へ。
後半も7分に駒大が2本目のトライで17-7とリードを広げる。多くの都立大OB・OGが母校を訪れ、声援を送る。すると18分にNO8中原亮太(3年、湘南)がインゴールへ運ぶ。FB松本岳人(院修士2年、所沢北)がコンバージョン成功で17-14に。24分、松本はPGを蹴り込んで17-17の同点とした。32分、都立大ルーキー、國學院久我山で3年生の春までレギュラーだったCTB萩原唯斗が勝ち越しトライを奪う。22-17。駒大が最後の力を振り絞る。38分、ボールを運び22-22の同点。しかし逆転となるゴールキックが外れ、規定で都立大が残留した。都立大の藤森啓介監督は「最後までお互いの意地がぶつかり合う試合。4年生を笑顔で送り出すことを目標にしていました。達成できて良かった」とコメントを寄せた。
千葉大(3部8位)と、昨年、食農大に敗れ4部降格した玉川大(4部1位)も接戦。千葉が3連続トライで15-0とリードする。玉川も2トライ1Gで15-12と迫った。千葉が3点を刻むなど26-12へ。玉川もトライで26-19と後を追いかける。しかし千葉がこの日、5本目のトライで31-19。玉川が7点を返し31-26と逆転圏内を保つ。千葉が3点で引き離し34-26。玉川もトライ。ゴールを成功するも34-33、1点差で千葉が制した。
4部/5部入替戦は神奈川大グラウンド。最初の試合で5部2位の東京経済大が62-21とホームの4部7位・神大に圧勝し、4部昇格を果たす。続く試合も1年で4部復帰を掲げて5部優勝を果たし横浜国立大が、今季リーグ戦で棄権が続いた国際武道大(4部8位)に33-24と競り勝った。両校は来季、上の舞台での戦いに挑む。