NECグリーンロケッツ東葛は試合後、メインスタンドのファンへ感謝を伝えた。
主役はレメキ ロマノ ラヴァ。横一列に並んだ仲間へマイクを渡して回り、挨拶を促した。チームソングも歌った。
34歳。日本代表として20キャップ(代表戦出場数)を誇り、昨秋のワールドカップフランス大会でもムードメーカー兼突破役だった。
12月9日にプレーしたのは、千葉・柏の葉公園総合競技場。グリーンロケッツの主将兼FBとして、国内リーグワン2部の開幕節に先発した。
自身のパフォーマンスで流れを引き寄せ、浦安D-Rocksを31-28で下した。21年度にこのクラブへ入った通称「マノ」は、ざっくばらんに日本語で振り返った。
「パーフェクトなゲームではなかったけど、ちゃんと試合に勝てたからよかった」
前半は得点機を逃し14-21とビハインドを背負うも、26分には自らトライを決めている。敵陣22メートルエリア右中間で防御のギャップを突き、14-14と一時同点とするきっかけを生んだ。
なにより、後半開始早々に大きな見せ場を作った。
敵陣深い位置から放たれた高い弾道のキックを、同10メートルエリア右で飛び上がって捕球。「上がってくる。(その)間ね」。事前の分析から、D-Rocksのキック後の防御ラインに穴が開くと読んでいた。着地するや加速。突破した。
「前半は、全然、僕に蹴ってくれない。でも、(突破できたシーンでは)多分、ミスキックになって、たまたまいいところに落ちた。FW(大型選手)の間ならいつでも行ける(抜ける)自信があるから、行った」
歓声を耳にしながら、援護についたSHのニック・フィップスにフィニッシュさせた。フィップスは加入2年目でオーストラリア代表72キャップを持つ。直後のゴールは、ナミビア代表5キャップで新加入のSO、ティアン・スワネポールが決めた。グリーンロケッツは21-21と追いついた。
直後の攻防でも、ピンチを迎えながらレメキが仕事をした。自陣22メートルエリア左端で、対するWTBのラリー・スルンガの走るコースを抑える。タックル。落球を誘った。
「基本。フィジカルのゲームだから、行ったら身体、張れる」
まもなく陣地を中盤に戻したグリーンロケッツは、向こうのミスや反則に乗じて敵陣へ進んだ。
すると8分からの10分間は、D-Rocks側に危険なプレーによる一時退場処分が科された。グリーンロケッツは9分以降、数的優位を保ったFW陣のモールを起点に勝ち越すことができた。HOのアッシュ・ディクソンのトライ、スワネポールのコンバージョンで28-21とした。
終盤は耐えた。NTTグループの2チームを再編成してできたD-Rocksの猛攻を前に、堅陣を敷いた。相手走者が孤立する時以外は、接点に人をかけずに堅陣を敷いた。向こうが慌ててボールを乱すのを待った。
20分のスワネボールによるペナルティーゴール成功と相まって、24分までは31-21と10点差をつけていた。31-28とされていた終盤も、再三、自陣ゴール前に戻されながらトライラインを割らせなかった。
36分頃には、ペナルティキックからの速攻を食らいながらも最後のグラウンディングだけは防いだ。主将の述懐。
「最後に我慢強いディフェンスをゴール前でできた。いままでは(防御が)あまり強くなかったけど、そこが強みになったね」
チームは昨季、入替戦で1部から降格していた。復権を目指し、元ウエールズ代表ヘッドコーチのウェイン・ピヴァックを指揮官に招いた。レスリング、柔道のトレーニングを採り入れ、フィップスの言葉を借りれば「古典的」な鍛錬でタフさを磨いた。攻防のシステムも一新した。看板のレメキは笑う。
「コーチが代わって、システムが新しく変わって、新人みたいに学んでいる。(グリーンロケッツで)3年目だけど、いまが一番、楽しいよ。オンフィールドもオフフィールドも。プレースタイル的にも、動けばボールが回ってくるから、自分次第!」
かたやD-Rockは、クライマックスで決定機を逃して初戦を落とした。2部スタートで臨んだ昨季は、1部との入替戦以外で無敗だった。そのためリーグワン発足後のレギュラーシーズンでは、今回が初黒星となる。23歳のSHで主将就任2季目の飯沼蓮は潔かった。
「僕はポジティブ。負けないと本質は見えないので」
敗れたD-Rocksの会見中、グリーンロケッツの控室からは喜びの歌声が響いていた。