待ち望んだ時間だ。いま、心からラグビーを楽しめている。
摂南大の3年生、ヴィリアミ・サポイが今季、好調だ。
本職はCTBも、この春からNO8に移る。NO8で4年生のアミニアシ・ショーが怪我で長期離脱を余儀なくされたからだ。
「監督からNO8でどうでしょうと。やってみたいとすぐに答えました」
開志国際高では主にFBだった。摂南大に来て、CTBやWTBもこなす。結果、どっちつかずの状態が2年続いた。
「CTBでいくか、WTBでいくか。どっちをメインにしようか迷っていて。A チームにも上がれず、モヤモヤしていました」
とにかく試合に出たかった。だからすぐにコンバートを快諾した。
「ずっとスタンドで試合を見てた。チームが勝ったら嬉しいけど、(メンバーと)同じくらい嬉しくはない。俺もグラウンドで味わいたかった」
この起用が当たる。春からレギュラーを獲得し、チームへの貢献度も高い。
瀬川智広監督は言う。
「彼の一番の良さはワークレート。アタックでもディフェンスでも献身的にプレーをし続けてくれます。摂南にとって大きなエネルギーになっている。性格も非常に明るくてポジティブ。良い方向にチームを引っ張ってくれる。なくてはならない存在です」
特に第5節の立命館大戦は出色の出来だった。守ってはジャッカルを連発。攻めてもボールキャリーでゲインラインを突破し、トライも挙げた。勝利に貢献する。
後半の途中、足を負傷する場面もあったが、「みんなも頑張ってたから俺も頑張る」。
自身の強みがワークレートだと気づいたのは、夏合宿で瀬川監督に言われてからだ。ランメニューをおこなえば、スクラムハーフの次にタフに走れる。
「ワールドカップを見て、ワールドクラスのCTBやFLはずっと動いてる(と分かった)。どこにでもいる。俺もそういうのを目指したいなと。きついけど、みんなのためにやるっす」
目標とするのは、今季からコベルコ神戸スティーラーズに来たアーディー・サヴェアだ。
「彼のワークレートは本当にすごい。神戸に来てくれて嬉しいです。NZで一緒にプレーしていたシオネ・タプオシに、会えるように頼もうと思う(笑)」
トンガ人の両親のもと、NZで生まれ育った。女女男男女女男の7人きょうだいの三番目。2人の姉は厳しかった。
「長男だから。ロールモデルになりなさいって」
高校から日本に来た。創部してまだ年月の浅い開志国際に進む。
日本語は流暢だ。日本語能力試験の2級に挑むさなか、大学から来日した留学生の取材時には通訳も務める。
「留学生の先輩が入れ違いで誰もいなかったから、高校でめっちゃ頑張った。チームメイトや先生が教えてくれた。漢字は苦手だけど」
同期の杉崎遼(日大FL)や1学年下の阿部太祐(成蹊大CTB)は在学中、特に良くしてくれた。
「リョウは(日本での生活を)一番助けてくれた。買い物とか一緒に行ってました。休みの時は彼の家にも泊まった。タイスケは兄弟みたいな感じ。親も自分の試合を見に来てくれます」
そもそも日本に来るきっかけは、2015年のW杯だった。強豪の南アフリカを倒す姿を見て、その勇姿とスキルの高さに憧れた。
「俺もそれやりたいなと」
2年後にそのチャンスが来た。当時のコーチからオファーの知らせを受け、二つ返事で日本行きを決めた。
「子どもの時からオールブラックスに入りたいとは思わなかった。あまりにも強過ぎるから(笑)。他の国の代表になってオールブラックスを倒したいなって。その方が面白い。先週は同志社に14年ぶりに勝ちました。そういうのがめちゃくちゃ嬉しい」
12月2日の関西大戦に勝てば、2009年の3位以来となる5位以上の成績を残せる可能性がある。自力で入替戦も回避できる。
来季も叶えたいアップセットに向け、気持ちよく今季の最後を締めたい。