ラグビーリパブリック

日本語訳クラファン開催中! NZ女子代表ルビー・トゥイの困難と成功のストーリー「ストレートアップ」

2023.11.28

プレーも生き方も人気があるルビー・トゥイ。(撮影/松本かおり)



 10月28日の閉幕から1か月が経とうとしているラグビーワールドカップ。同大会は、今回も世界中で大きく盛り上がった。
 同じ時期に、15人制女子ラグビーの国際大会【WXV】がおこなわれていた。こちらは、W杯以外での史上初の女子ラグビー大規模大会だ。

 同大会の最上位カテゴリーであるWXV1の最終節は、昨年ニュージーランドで開催されたW杯(女子)の決勝カードと同じ、ブラックファーンズ×イングランド。
 一年越しの再戦となることから、注目が集まった。

 女子ラグビーにこれほど注目が集まるようになったのは、やはり昨年のW杯が大きいと言えるだろう。
 大会開催前のニュージーランドでは、W杯が国内であることを認識していない人も少なくなかった。

 しかし安価に設定されたチケット、そして専門スタッフを配置しての全チームの積極的なSNS配信などもあり、状況は変わっていった。
 なによりも情熱に溢れた数々のプレーが話題になり、ノックアウトステージが開始する頃にはニュージーランド国内中の大きな話題となっていた。

 その中でもひときわ目立った選手がいる。ニュージーランド代表ブラックファーンズのルビー・トゥイ選手だ。

 彼女の陽気でサバサバした性格が有名になったのは東京オリンピックだった。
 インタビューで注目され、持ち前の明るさが伝わるSNS投稿をW杯期間中、ファンの誰もが楽しみにした。
 ブラックファーンズ優勝後のインタビューも印象深い。観客席に向かって歌いかけ、スタジアムは大合唱に包まれた。彼女のカリスマ性は、見た人を必ず魅了する。

 そんな彼女は、2022年にニュージーランドで自伝「Straight Up(ストレートアップ)」を出版している。
 スクリーンに映し出されるトップラグビー選手の彼女は輝いているが、陽のあたる場所ばかりを歩いてきたわけではない。その背景にある、想像を絶するような壮絶な過去を赤裸々に語ったその本は、ニュージーランドではベストセラーになった。

魂の動きが綴られた一冊は、ニュージーランドでベストセラーとなった。(BBM)

 幼い頃から耐えた家庭内暴力。アルコールと薬物に囲まれた環境。ティーンエイジャーで経験した鬱。そして、大学でラグビーを初めてからのことも綴っている。
 ニュージーランドのアマチュアだった女子代表が、現在のような位置に引き上げられるまでの日々は興味深い。それらのことが、彼女の生の言葉で書かれている。

 同書はもちろん、英語、彼女のルーツであるサモア語、ニュージーランドならではのマオリ語の単語もところどころに入り混じっており、日本のファンが読むには少し難易度が高い。
 しかし現在、日本語訳を出版するためのクラウドファンディングがおこなわれている。

 発起人は阿辻香子(あつじ・きょうこ)さん。Cocoの名義でライター、ブロガーとして活躍する彼女は2019年W杯日本大会ではサモア代表チームの帯同通訳を務め、そして昨年の女子W杯では日本チームをメインとした数チームのSNSコンテンツ作成を担当していた。

 過去にはHSBCワールドセブンズシリーズ北九州大会でイングランドチームの帯同スタッフを経験したこともあることから、女子ラグビーを個人的にとても応援している。
 その彼女はニュージーランドでのW杯の仕事を終えたあと、話題になっていたトゥイ選手の自伝を購入し、読んだ。
 本全体が選手自身の語りかけるような言葉で書かれているため読みやすく、さらにストーリーの内容も衝撃と感動が入り混じっていた。320ページを2週間ほどで読み切ったそうだ。

 トゥイ選手自身の人生の話だけではなく、10年ほど前はほぼアマチュア扱いで、選手は仕事と兼業、国内でも知名度が低かったブラックファーンズについても詳しく書かれている。
 この10年で現在のポジションに至るまで、どんな道を辿ったのか。その過程も事細かく当事者の目線で書かれている。
 日本で頑張っている女子選手たちにも読んでほしいと強く思い、このクラウドファンディング出版プロジェクトを始める決心をした。

 2019年以降、日本でのラグビー人気が以前とは比べものにならないほど高まり、近年は女子チームの認知度も高まってきてはいる。しかし、まだまだ日本のそれはニュージーランドやイングランドとは比べ物にならない。
 女子ラグビーの選手たちが持つ情熱と、その魅力を知っている発起人だからこそ、この本を日本で待っている方々に届けたいと考えている。それゆえの、翻訳本プロジェクトだ。

 クラウドファンディングは1月末まで開催し、目標金額に届かなかった場合、出版は不可能となる。
 本のタイトル「Straight Up(ストレートアップ)」は「ガチで」という意味で使われるスラングだ。ニュージーランドのトップアスリートの「ガチ」な話に少しでも興味がある方はぜひ支援し、出版を実現させるサポートをお願いしたい。

◆クラウドファンディングサイト
https://greenfunding.jp/thousandsofbooks/projects/7848

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