チームのマスコットキャラクターである、サンゴリアス君のぬいぐるみを渡された時だ。
ガハハハッ。
オールブラックスのキャプテンの笑い声は、思ったより野太かった。世界最高のウィンガーと撮影に応じていた。
11月28日、東京サントリーサンゴリアスに加入したFLサム・ケインとWTBチェスリン・コルビが、新入団選手記者会見に出席した。
31歳のケインはニュージーランド代表のキャプテン。キャップ数は95を誇り、W杯には3大会連続で出場している。
一方のコルビは先のW杯でスプリングボクス(南アフリカ代表)の連覇に貢献した。30歳で31キャップを持つ。
大久保尚哉GMは冒頭、「昨季は準決勝で敗れ悔しい思いをした」と話し、「今シーズンこそはリーグワン初制覇、5季ぶりの優勝に向けてサム・ケイン選手、チェスリン・コルビ選手を仲間に加え、必ず王座奪還をしたい」と意気込んだ。
2人には、「経験やリーダーシップ、心構えなどを若い選手たちに伝えてもらうことでチームには良い化学反応が生まれると思っている。そうしたプレー以外でも影響を与えてほしい」と期待した。
コルビとケインは先週来日。25日の埼玉ワイルドナイツとのプレシーズンマッチも観戦している。
この日、味の素スタジアムの記者会見場に姿を現した2人は「みなさん、こんにちは」と日本語で挨拶した。
コルビは「歴史と実績のあるチームに入れたことを誇らしく思う。フィールドに立つことが待ち切れない」と話し、ケインは「海外でのプレーは初めてで、リーグワンは自分にとっての試練と捉えている。それと同時に大きなチャンスでもあるので、楽しみにしている」と話した。
日本のラグビーの印象を問われたコルビは、「レベルが上がっているし、リーグワンではインターナショナルなプレイヤーがたくさんいる。自分をテストできると思っている」。
フランスのTOP14(トゥールーズとトゥーロン)で6季プレーした経験を持つ。「違った形のラグビーの知識をチームのみんなに共有できれば」と話す。
「リーグワンから学ぶこともたくさんあると思っている。チームのスタンダードをさらに上げて、勝利に貢献したい」
世界と比べて小柄な選手の多い日本ラグビーにとって、172㌢の身長で世界のトップに上り詰めたコルビの経験は大いに参考になる。
自身のこれまでを聞かれ、コルビは「容易い道でなかったことは間違いない。自分のサイズに関する議論があったことも知っています。でも夢を追い続けることを決してやめなかった。さまざまな犠牲を払って、ハードワークを厭わず、信念を持ってここまでやってきたと自負している」と誇る。
「自分のような小さなサイズのプレーヤーのみなさんには、ファイトすることをやめないでほしい。ギブアップしないでほしい。信じることをやめないでほしい。ハードワークすることで必ず達成できる。みんなの希望やインスピレーションになればと思い、この言葉を付け加えます」と激励した。
一方のケインは今回が5度目の来日となる。「日本という国、文化、人々は非常に好ましい。このようなチャンスをいただけて、家族とともに楽しみにしていた」という。
来日の決断の背景に、仲間の存在も加えた。
「(かつてサントリーに所属した)ボーデン(バレット)やダミアン(マッケンジー)、アーロン(クルーデン)からサントリーの話を聞いていました。リーグワンはNZでもよく放映されています。かなりレベルが上がっていると感じていました。ここでプレーすることはラグビープレイヤーとしての試練。スピードやアジリティの高いリーグワンで、成長できることは多いと感じています」
ケインはサバティカル(長期休暇制度)を利用しての移籍だ。1シーズン限定での在籍となる。期間中にはオールブラックスの選考対象とはならない同制度のあり方について、記者から意見を聞かれ、「NZ協会の判断にわれわれが口を出すことではない」と前置きした上で答えた。
「スプリングボクスはリーグワンで活躍したプレーヤーがそのまま国際レベルでも非常に高いパフォーマンスをしている。日本で良いパフォーマンスを残してオールブラックスに復帰できれば、リーグワンでプレーすることが自分を成長させてくれたと証明できる。それは私に課せられた使命でもあると感じています。ただ一方で、若手にもチャンスをどんどん与えなければいけないという見方もある」と話した。
新たにオールブラックスの指揮を執るスコット・ロバートソンHCとは長電話をしたことも明かしたが、「どのようなセレクションであれ、毎週自分がラグビープレーヤーとしてより良いプレーを目指すことに変わりはない」ときっぱり。
「NZの人たちが自分のプレーを見ていることは重々承知している。(日本で)良いプレーをして、オールブラックスに選ばれる土台に立つ準備をすることが、自分ができる最大限のこと」と続けた。
サンゴリアスは「アグレッシブ・アタッキングラグビー」を掲げるが、ディフェンスでも貢献したいとケインは言う。
「自分がボールを奪い取り、隣にいるチェスリンまでボールを回してトライまで持っていって欲しいね」と笑った。