ファイナルスコアは50-28。
チームが快勝する80分の基盤を先発の背番号10が作った。
11月25日に府中でおこなわれた東芝ブレイブルーパス東京×クボタスピアーズ船橋・東京ベイは、ホストチームの前者が、集まったファンを喜ばせた。
前半は28-14。
先のワールドカップ(以下、W杯)で、オールブラックスの司令塔として活躍したリッチー・モウンガにとっては来日後初の実戦だった。
しかし56キャップを持つ男は、当たり前のように、自身のスキルを披露した。
チームの力を引き出すゲームメイクもさすがだった。
滞空時間の長い、正確なキックは、相手にプレッシャーをかけた。
チャンスに仕掛けるときのキレは抜群。柔らかなパスと、トライを呼ぶロングパスを使い分けた。
緩急自在のランニングでディフェンダーを翻弄し、ピンチになったときの戻りもはやい。
前半40分だけのプレーながら4回のコンバージョンキックをすべて成功させ、ワールドクラスの実力を感じさせた。
10月28日のW杯ファイナル以来の実戦を終えた後、本人は「少し息が上がったが、すごくはやいテンポで楽しめた」と話すと同時に、「東芝のジャージーでピッチに立てて嬉しい」と笑顔を見せた。
4コンバージョンキックの中には難しい位置からのものもあった。
「確実に決めることは大事。その感覚がつかめたことは良かったし、シーズンに向け、継続して準備していきたい」と話した。
この日は昨季王者から勝利を挙げたとはいえ、長いキャリアから知っている。
「プレシーズンと、実際のリーグ戦は別物」とし、「全チーム侮れないし、各チーム間の差は小さいと思っている」と気を引き締める。
「だからこそ、2 点を積み重ねることも重要になる」
その言葉は、いくつもの修羅場をくぐり抜けてきた者の実感だ。
W杯期間中から、「結局は、どんなプレッシャーの中でも正確に、何度でも基本プレーを繰り返す。それがファイナルのような舞台でも求められる」と語っていた。
世界のトップレベルで戦ってきた実績はあるけれど、異国の地の、新しいチームでプレーすることが簡単でないことも知っている。
だから、「新しいチームの中に入り、新しいコールを覚えたりすることは難しい部分もありますが、実戦を通してチームにとけ込めた。いい準備になった」とあらためて言った。
チームの指揮を執るトッド・ブラックアダーHCは、後半に出場してトライも挙げたFLシャノン・フリゼルも含めたビッグな新加入選手について、「この環境の中で、このメンバーたちとプレーする感覚はつかんでくれたと思う」と話し、準備が順調に進んでいる手応えを伝えた。
12月9日の開幕戦は、味の素スタジアムで静岡ブルーレヴズと戦う(14時30分キックオフ)。
スピアーズのスクラムを押し込むシーンもあったFWが同様の働きをすれば、モウンガが走るスペースが多く生まれそうだ。