ピンチの場面で魅した。
11月5日、東京・秩父宮ラグビー場。早大2年の野中健吾は、加盟する関東大学対抗戦Aの5試合目に出場していた。
ポジションはCTBだ。今季はチーム事情もあってかSOも任されていたが、この日は東海大大阪仰星高時代からの定位置に戻っていた。
自陣22メートルエリアで好タックルを放ったのは、前半4分頃のことだ。
対する帝京大の江良颯主将に刺さり、押し返した。
チームはその後もフェーズを重ねられ失点も、野中が国内リーグワン注目の力自慢を倒したのは確か。
本人は謙遜する。
「いえいえ、そんな。練習通りという感じですかね」
帝京大には、昨季の大学選手権決勝で20ー73と敗れていた。ところがこの日は、後半29分には21ー24と3点差に迫った。帝京大の強みであるコンタクト勝負で引けを取らず、終盤まで競った。
「去年の敗戦から、コリジョン(身体衝突)の部分でチームとしてレベルアップしてきた」
こう語る野中も、攻撃ライン上での仕掛け、防御を引き寄せながらのパスで何度もチャンスを作っていた。
「練習から相手(の動き)を見て、(味方と)コミュニケーションを取って…」
自信をつけてきていた。
シーズン前に20歳以下(U20)日本代表となり、6月からのワールドラグビーU20チャンピオンシップでは強豪国の同世代と対峙。全敗で下位グループ降格も、自身の動きと技術には手応えをつかんだ。
高校時代はウイルス禍の影響で国際経験を積めなかったものの、この時、世界における自らの現在地を確認できた。
「相手を上に見すぎないという、メンタルの部分で(の収穫が)一番、大きいかなと思います。通用する部分も多かったので」
強い相手との試合でも、名前負けせずに堂々と戦う。自ずと持ち味を活かして活躍する。その、身体感覚がある。
帝京大戦は21ー36で敗れたとあり、「小さなところで相手が上回っていた」とも反省する。この日は自軍のミス、被ターンオーバーが向こうのトライに直結していたとあり、「ルーズボールへの反応」のような「小さなところ」が大事なのだと再確認した。
大舞台で力を出すのに、必要なマインドセットを得つつある野中。「まずは国内に(集中)」。冬の大学選手権で帝京大にリベンジすべく、いまの対抗戦期間を有意義に過ごしたい。