それぞれが重要な一戦と位置付けていた。
10月29日、埼玉・セナリオハウスフィールド三郷。関東大学ラグビーリーグ戦1部の第8週のうち2試合があり、いずれも順位の近いチーム同士の対戦だった。各自、大学選手権に行ける上位3枠をにらむ。
初戦では、第7週終了時点で7位だった法大が、4位だった大東大に30-29で勝利。勝点制のリーグにあって7点差の負けに伴うボーナスポイントを与えられ、両軍揃って勝点10の4位タイで並んだ。
序盤は互いに自陣の守りで踏ん張り、10-10の同点でハーフタイムを迎えた。
後半にまず均衡を破ったのは法大だった。
8分、敵陣10メートル線付近左のラインアウトから中央方向への展開、左端への折り返しを重ねた。
そのさなかに左側で数的優位を作るや、ラインの先頭に立つFLの宮下晃毅がパスをもらった。防御を抜き去り15-10とした。法大は続く12分にも、WTBの石岡玲英主将のフィニッシュで20-10と加点した。
ここから大東大が追い上げた。
CTBのペニエリ・ジュニア・ラトゥは自軍キックオフの落下位置に駆け込み、球に手をかけたり、捕球役にタックルを繰り出したり。突破力と守備力にも秀でるとあり、対する宮下も関西弁で「13番、えぐかったです。めっちゃ動いてましたね」も驚かされた。
ラトゥとCTBを組むハニテリ・ヴァイレアは、力強いランで15、29分のトライをおぜん立てした。
23-22と1点差を追う36分には、SHの稲葉聖馬主将が敵陣中盤で防御網を抜け出した。HOの大西樹につなぐなどし、23-29と勝ち越した。
物語には続きがあった。
法大は、この失点の直後のキックオフを奥側中央へ運んだ。大東大が処理を誤ると、その位置に駆け込んでいた法大の右PR、中野一樹がボールキープ。展開してLOの竹部力がトライを決めた。直後のコンバージョンを石岡が決め、30-29と再逆転を決めた。
中野、竹部、石岡はいずれも最上級生だ。法大の2年生で 20歳以下日本代表でもある宮下は、こう感じた。
「4年生の意地やと思いました。これはほんまに勝たなあかんと」
この日20得点の石岡は、例のキックオフを「真ん中に意図して蹴られたのかどうかはわからないですが」としつつ、このように振り返る。
「敵陣22メートル線付近のコンテストできる位置に。そこからターンオバーしてマイボールを…という意思統一が——運の部分もあるかもしれないですけど——形になった」
かたや、あと一歩のところで白星を逃した大東大の酒井宏之監督は、部員を集めてこのように告げたという。
「勝たせてあげられず申し訳ない。ただ残り2試合ある。何があるかわからない。しっかり戦って、選手権に出られるようにしよう」
続く2試合目では、2位だった流経大が、3位だった東洋大と激突。終盤まで続く打ち合いを47-38で制した。勝点はそれぞれ22、16で、両軍の順位は変わらず。
流経大は開始21分で21-0と主導権を握った。
東洋大は得意のモールを得点源として前半31分、後半14分に7点差に迫ったが、大きく球を動かす流経大が20、26分と続けてインゴールを割る。コンバージョンの成功もあり、40-21と安全圏に入っていた。
東洋大のFLに入ったタニエラ・ヴェア主将が「悔しい気持ちがいっぱい。自分たちのミスで相手にボールを渡してしまって…」と述べるなか、勝ったFLの原田季弥主将はこう胸を張った。
「今週のテーマは『今シーズンのベストゲームを、ベストプレーを』です。ひとりひとりにその意識があった。リードを取った時も浮かれることなく、一つひとつのプレーを正確にできました。ペナルティがあったことなど課題はたくさんありますが、評価できる。成長に繋がる」
身長171センチと小柄もハードに戦う原田は、この日、要所で相手のミスボールへ飛び込んだ。新任コーチのフォラウ愛世氏から「ルーズボールは絶対にセービング!」と言われていて、「身体が勝手に反応した」のだという。