ラグビーリパブリック

3試合連続1点差の死闘制したタフな王者スプリングボックス 南アの力示し国民に歓喜もたらす

2023.10.29

W杯連覇を達成し、誇らしく優勝トロフィーを掲げた南ア代表のシヤ・コリシ主将(Photo: Getty Images)


 ラグビー南アフリカ代表“スプリングボックス”は、頑丈で、不屈の精神力を備えたタフなチャンピオンだった。ノックアウトステージで3試合連続1点差の死闘を制し、ワールドカップ連覇を達成。準々決勝で開催国のフランスを29-28で下すと、準決勝ではイングランドを相手に土壇場で逆転して16-15で勝利。そして、現地時間10月28日におこなわれた決勝では、最多優勝記録(3回)で並んでいたライバルのニュージーランドと激突し、12-11で歓喜となった。

 決勝で最多28回のタックルをするなど活躍し、プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたFLピータステフ・デュトイは、「この3試合はかなり厳しいものだった。ここ数年、ドラマがあったが、チームとして乗り越え、対処するのに非常に役に立った。チームと南アフリカ全体の回復力を示した。南アフリカのために、スプリングボックスのためにプレーできることを光栄に思う。故郷に帰ったら温かく迎えてもらえるだろう。サポートしてくれた皆さんに感謝したい」と喜びを語った。

 キャプテンとしてチームをけん引し、2大会連続で優勝トロフィーを掲げることになったシヤ・コリシは、「南アフリカ出身じゃない人には、それが我が国にとって何を意味するのか理解できないだろう。これは単なる試合ではない」と語る。かつて南アフリカは、人種差別問題により国際社会から閉め出されたこともあった。しかし、大統領を務め融和と団結を呼びかけたネルソン・マンデラ氏(故人)のもと、黒人、白人、いろんな人種やルーツを持つ人々がひとつになろうと未来へ進み、その象徴的な存在がスプリングボックスなのだ。国はいまも、貧困などさまざまな問題を抱えるが、ラグビーの南アフリカ代表は国民に喜びと希望、そして勇気をもたらした。「南アフリカの人々に感謝を伝えたい。このチームは、何ができるかを示した。我々は一緒になって協力すれば、どんな分野でも、現場でもオフィスでも、すべてが可能になる。それを示した。私はこのチームに感謝し、とても誇りに思っている」

 そして、指揮官として重責を果たし、今大会を最後に退任するジャック・ニーナバー ヘッドコーチは、「選手たちとともに長い道のりを歩んできた。彼らは以前にもワールドカップ決勝に進んだことがあり、なかには3大会出場となった選手もいる。その経験が活きたと思う。彼らはすばらしい集団であり、全員が戦士だ。彼らはみんな南アフリカを愛している」と語り、優勝をかみしめていた。

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