グリーン&ゴールドジャージーを誇るディフェンディングチャンピオンが、ノックアウトステージで2試合連続1点差の死闘を制し、ラグビーワールドカップ連覇まであとひとつと迫った。準々決勝で開催国のフランス代表を下した南アフリカ代表“スプリングボックス”。準決勝では、前回2019年大会の決勝でも顔を合わせたイングランド代表と対戦することになり、終盤に逆転して16-15でファイナル進出を決めた。
今大会を最後に退任することを決めている南アフリカ代表のジャック・ニーナバー ヘッドコーチは、「まず、イングランドに多大な敬意を払いたい。この夜、彼らは傑出していたと思う。非常に優れた戦術プランを持っていて、我々に多くのプレッシャーをかけてきた。我々の選手たちはそれを乗り越えるのに70分かかったが、たとえ物事が思い通りにいかなくても、彼らは結果を得る方法を見つけ出す。おそらく、それがこのチームの強みだ。最後まであきらめずに戦った選手たちをとても誇りに思う」、と激闘を振り返った。
終盤までイングランドにリードを許した。しかし、南アフリカは経験豊富な選手が多くて選手層も厚く、指揮官は交替のカードを次々と早めに切り、リザーブメンバーの奮闘も光った。そして、粘り強く食らいつき、69分(後半29分)のトライも、78分の逆転ペナルティゴールも、スクラムでチャンスをつかんだ。
ニーナバー ヘッドコーチは、チーム全員でつかんだ勝利だと強調する。
「我々にはエネルギーが必要だった。だからベンチの選手を投入することにした。スターターとベンチの選手の間に大きな差がないのは我々にとっては幸運なことだ。ボムスコッド(爆弾処理班=リザーブメンバー)がフィールドに出たのは先発陣が基礎を築いたから。重要なのは、チームは33人の選手で構成されており、全員が役割や責任を持っているということ」
そして、それをやり遂げた。
前半31分から出番となって司令塔を務めた背番号22のハンドレ・ポラードは、「前半は(チームとして)ベストの状態ではなくイライラしたが、我々は計画を忠実に守り、試合のなかで少しずつ改善していった。時間がかかったが、やり遂げることができた。勝ててホッとしている」とコメント。逆転のペナルティゴールを決めたことについては、「スクラムでチャンスをつかんでくれた」とFWの奮闘を称えた。
一方、敗れたイングランドのスティーブ・ボーズウィック ヘッドコーチは、「チーム全体のパフォーマンスは強かったと思う。我々は試合に勝つ計画を持って臨んだが、少し及ばなかった。盛り返し勝つ方法をつかんだ南アフリカの凄さは計り知れない。彼らはナンバーワンのチームだ。彼らが世界チャンピオンであるのには理由がある」と激闘を振り返った。
ブレイクダウンやラインアウトスチールで南アフリカにプレッシャーをかけたFLのコートニー・ロウズは、「後半、我々はあまりにも多くのペナルティを犯してしまった。最終的には南アフリカのセットピースがうまくいったと思う。彼らのベンチは間違いなくピッチに影響を与えた。我々はそうなる可能性があることを知っていたが、残念ながら十分に対処できなかった」と悔しさをかみしめた。
10番をつけたオーウェン・ファレル主将は、「自分たちは良いプレーができていると感じた。勝つには十分だったのではないかと思ったが、残念ながら南アフリカに少し分があった。彼らにおめでとうと言いたい」と相手を祝福。イングランドの今後について問われると、「それは人それぞれだ。これが最後のワールドカップになる人もいるだろうし、他の場所に行く人もいるだろう。しかし、私はこのグループと、この5カ月間成し遂げたことを信じられないほど誇りに思っている。今後何が起こっても、このチームは良いものになるだろう」とコメントした。
敗れたイングランド代表は次週、アルゼンチン代表との3位決定戦に臨む。
そして、現地時間28日にパリ郊外のスタッド・ド・フランスでおこなわれる決勝は、過去優勝3回(最多タイ)で並ぶ南アフリカ代表とニュージーランド代表が激突することになった。
南アフリカ代表のFLシヤ・コリシ主将は、一週間後のファイナルへ向け、「今夜と同じくらい壮絶な試合になるだろう」と語る。母国はもちろん、アフリカ全土からの期待と応援を感じているという。
「テレビのない人々がショッピングモールに行き、さまざまな立場の人々が一緒に座って私たちのプレーを観ている。そんな国は世界のどこにもないと思う。それがまさにチームの原動力となっている。我々は南アフリカだけでなくアフリカ大陸全体を代表していることを知っている。これは特別なことだ。私たちが成功すれば、アフリカ全体が勝利することになる」
ファイナルは、偉大なライバル対決。南アフリカ代表“スプリングボックス”が勝てばラグビーワールドカップ史上2チーム目の連覇、ニュージーランド代表“オールブラックス”が勝てば8年ぶり(2大会ぶり)の王座奪還となる。