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今回は気の緩みなし! オールブラックス、アルゼンチン戦のメンバー発表

2023.10.20

準決勝前日練習でのダルトン・パパリィイ(左)とジョーディー・バレット(Photo: Getty Images)


 ラグビーワールドカップ2023フランス大会の準々決勝4試合はどれもが激戦だった。
 ニュージーランド(以下、NZ)代表オールブラックスは準々決勝で世界ランキング1位だったアイルランド代表に死闘の末、28-24で勝利。準決勝でアルゼンチン代表と戦うことが決まった。

 下馬評を覆してのアイルランド戦の勝利だけにNZ国内のラグビーファンの興奮はなかなか冷めない。しかし、オールブラックスの選手たちは、今回ばかりは浮かれている様子はない。

 それは、過去の大会で“苦い経験”が幾度かあるからだ。
 前回2019年の日本開催大会では、今回と同じく準々決勝でアイルランドと対戦し46-14で圧勝。この結果に気持ちが緩んでしまったのである。そして準決勝でイングランド相手に良いところがなく、7-19で敗戦。

 アイルランドとの死闘を制した数日後の会見で大ベテランのHOデイン・コールズは、「チームは準々決勝の結果を自信にできたが、アルゼンチン戦ではさらにギアを上げる必要がある」と答えた。前回苦い経験をした選手たちは、4年前のことがトラウマになっている様子がヒシヒシと感じる。

 気の緩みがあったのは前回大会に限ったことではない。1999年のワールドカップでも同じようなことがあり、準決勝でフランスに31-43で敗れた。その年の大会前にNZ国内でフランスと対戦して54-7でオールブラックスが圧勝している。準決勝も勝てるだろうと気持ちの緩みから、フランスに足をすくわれた過去がある。

 このように過去に何度か苦い経験をしているだけに、今回ばかりはとても慎重になっている様子がうかがえる。

◆WTBテレアが戻りベストメンバーでアルゼンチン戦に挑む

 フランス時間10月20日の21時キックオフとなる準決勝のオールブラックスメンバーが発表された。ここにきて、ようやくメンバーを固めてきたことにより、準々決勝から先発メンバー2人、ベンチ1人のみの変更となった。

 先週ベンチスタートのLOサム・ホワイトロックがブロディー・レタリックと入れ替わる形で背番号4を付けて先発出場。

 一番の注目を集めたのは、11番のポジション。チーム規則を破ったことにより先週はメンバー外となったWTBマーク・テレアが、準決勝は先発メンバーとして名前が挙がり背番号11を付ける。
 アイルランド戦で11番で先発したWTBレスター・ファインガアヌクは今回はメンバー外となった。先週良いパフォーマンスをしてトライも挙げていただけにアンラッキーと言えるか。

 11番のセレクションに関してイアン・フォスターHC(ヘッドコーチ)は、「彼(テレア)は我々の好調ウインガーで、彼を大いに信頼している。先週のレスター(ファインガアヌク)は、とても良かった。彼はそれを誇りに思うべきだ。これは、難しいセレクションだった。我々にとってマーク(テレア)を出場させるチャンスなんだ」と答えた。
 あくまでも、テレアが左WTBのファーストチョイスということを明言したことになる。

 ベンチに目を向けると、大会に入って良い状態をキープしている大ベテランのHOデイン・コールズに替わってサミソニ・タウケイアホがHOの控えとしてベンチ入りをする。
 今季、見事な復活をしたコーディー・テイラーが2番の座をつかんでいる。それによりタウケイアホの出場機会が減った。しかし、昨年のタウケイアホの活躍を見るとわかるように、フィジカルバトルにおいて、ワールドクラスに匹敵する強さを持っている。この試合でアピールすれば決勝でのメンバー入りも十分考えられるだけに注目したい。

 引き続き話題となっているSHのセレクションは、アイルランド戦で出番がなかったフィンレー・クリスティーが今週もベンチ入りしていることから、このまま先(決勝)もクリスティーで行く様子がうかがえる。

 同じくアイルランド戦で出番がなかったSO/FBダミアン・マッケンジーも続けてベンチ入りしており、決勝を睨んで、インパクトプレイヤーとして後半から出場してくるだろう。

 その他のベンチを見ると、先週に続きタマティ・ウイリアムズ、フレッチャー・ニューウェルの若い2人のPR陣を入れてきた。激戦でプレッシャーのかかったアイルランドとの試合でも、しっかりとしたプレーをしたことからセレクターの信頼を得たようだ。

 LOレタリック、FLダルトン・パパリィイ、そしてアイルランド戦で本職でないWTBで後半途中から出場して強いディフェンスを見せたCTBアントン・レイナードブラウンなどの経験のある選手がベンチに控えているのは心強い。けが人が戻ったことにより一気に層が厚くなった印象だ。

◆アルゼンチンを警戒するオールブラックス

 両者は、ザ・ラグビーチャンピオンシップで7月に対戦しており、41-12でオールブラックスが圧勝している。
 しかし、近年の対戦を見てみると、初めてアルゼンチンに敗れることになった2020年は15-25、38-0と1勝1敗、2021年こそ39-0、36-13と危なげなしに連勝したものの、2022年は、18-25とNZの地(クライストチャーチ)で初めてアルゼンチンに敗れる歴史を作った。その後ハミルトンで53-3とビックスコアでリベンジしているものの、近年オールブラックスの絶対的優位はないと言える。

 アルゼンチンの強みはアグレッシブなFW陣、そしてBK陣はスピードがあり、プールステージの日本戦を見てもわかるように、BKで一気にトライを取る能力がある。オールブラックスは警戒しているようだ。

 しかし、けが人が復帰してオールブラックスのFW陣が完全復活した感がある。6番シャノン・フリゼル、7番サム・ケイン、8番アーディー・サヴェアのFW第3列トリオのコンビネーションが抜群で、彼らがアイルランド戦と同じように機能すれば試合を有利に進められると予想される。

 昨年クライストチャーチで敗れた時は、アルゼンチンのラッシュディフェンスに苦労した。今回も当然その作戦で来ることが予想されることから、オールブラックスがどう対応するかも見所の一つになるだろう。10番リッチー・モウンガ、15番ボーデン・バレットのダブル司令塔のゲームメイクが試される。

 フォスターHCをはじめ多くの選手たちから、アルゼンチンをリスペクトする言葉が多く聞かれた。今回ばかりは、最後の最後まで気を緩めることはなさそうだ。

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