ノーサイド。アルゼンチン代表に27-39で敗れて2大会連続の8強入りを逃したものの、堀江翔太は穏やかだった。
ラグビーワールドカップ2023プールDのラストゲームを終え、会場のスタッド・ド・ラ・ボージョワールの取材エリアに訪れた。反省点を聞かれ、「あぁー…。いまんとこ、ないんやないですか」と関西弁で伸びやかに応じた。
「自分たちが、自信あって、やった(力を発揮した)んで」
身長180センチ、体重104キロの37歳。自身4度目となるワールドカップの大一番においても、圧巻の働きを披露した。
先発から48分間の出場ながら、両軍通じて2位となる16本ものタックルを決めた。ピンチで相手走者を仕留めるシーンも多く、渋く光った。
スクラムを最前列中央で組めば、この日最初の1本を押してペナルティキックを得た。以後も総じて安定させた。
攻めては、7-15と8点差を追う前半38分に魅した。グラウンド中央付近で、タックラーに自らの尻あたりを当てて前進。次の展開で数的優位を生み出し、SHの齋藤直人のトライをおぜん立てした。直後のコンバージョン成功で14-15。
ベテランの域に達しながら、なお快調である。次回大会での出場も期待されるなか、本人は評価を他者に委ねる。
「どうですかね。はたから見てできていたら続けたいと思いますし、こいつはあかんなと思われれば辞めなあかんなと。…ははは! とりあえず、自分がやることは(やる)。引退するわけじゃないですし」
チームへの評価についても、あくまで「決めるのは第三者」。もっとも、歩んだ道のりを肯定するのが前提だ。要所で失点を招いたタックルミスよりも、大外のスペースを破った組織的な攻めに視線を向ける。
「ディフェンスが世界一いいチーム(アルゼンチン代表)とアタックで取り合いをした。最後の最後に何点か…(獲られたこと)というのは個人の部分。チームで抑えられる部分もありましたけど、これで次のワールドカップにどうしていくか(活かすか)がわかる。もちろん、ファンには批判的になったり、全然あかんやんと言ったりする人たちもいるとは思いますが、僕たちは全力でやって負けた。それは仕方がないですよ」
ここから補足するのは、初出場した2011年のニュージーランド大会時の感情だ。当時は未勝利に終わったとあり、同じプールステージ敗退でも今回とは趣が違うと笑う。
「2011年に比べたら、(今回は)胸、張って帰れますよ。見ていても、もちろん結果は欲しかったですけど、おもしろかったというか、何か感じてもらえるゲームはできたと思うので。楽しかったと思えるようなゲームはできたとは思う」
2015年のイングランド大会で歴史的3勝を挙げ、2019年の日本大会で初の8強入りと、この国の進歩を肌で知る堀江。不遇の時代も体験しているだけに、現代表の後輩たちの前向きさ、献身性には頼もしさを覚えている。