帝京大ラグビー部は、土俵際でしぶとかった。
10月15日、森エンジニアリングスタジアム桐生。加盟する関東大学対抗戦Aの4戦目に挑んだ。
大学選手権3連覇を目指すなか、安定したスクラム、1対1での優位性を活かして攻防の境界線を突破。前半22分までに21―0とリードを奪ったうえ、反則で自陣中盤に入られるや真骨頂を示した。
前半28分以降のことだ。
対する筑波大がラインアウトから低い姿勢のモールを組んだ。帝京大の圧力の隙間を縫い、じりじりと前に進んだ。帝京大はさらにペナルティを犯し、ゴール前でも同様のモールに苦しんだ。笛を吹かれた。
ところが次の局面では、筑波大が組んできたモールに鋭く刺さって対応。点を許さなかった。
まもなく再び自陣に押し込まれるも、34分頃、同ゴール前右の相手ボールラインアウトでLOの本橋拓馬がスティール。モールのきっかけさえ与えなかった。
再三のピンチを粘り腰で切り抜ける。その様子について、元日本代表で就任2年目の相馬朋和監督はこう触れた。
「ゴールラインを背負った時にどんなプレーをするのか。彼らの目指すものが日本代表であり、ワールドカップであるのならば…当然ですよね」
ここでの「…」は、何が何でも得点を許さぬ意志と奮闘を指すのだろう。
「そうでないと、(日本代表を)目指しているとは言えない」
以後、互いにペナルティーキックを与え合った。最後は、筑波大のミスボールを拾った帝京大が約80メートルもの距離をラン、パス、ライン攻撃で攻略する。その流れもまた圧巻だった。
まずはHOの江良颯主将が加速し、ハーフ線付近でフォローしたFLの青木恵斗が敵陣中盤まで前進。ここからボールは、数的優位のできた左側に展開される。端側では、WTBの青栁潤之介が倒れされながらもすぐに起き上がる。推進する。
中央への折り返しへは、3人ひと組のユニットが反応する。次のフェーズでは、LOの尹礼温が大胆にラインブレイク。ゴールラインの手前まで迫る。
仕上げは、浅い角度のパス回しだ。青木が右隅にフィニッシュした。
前半ロスタイム41分、26―0。
殊勲の尹はこうだ。
「練習で、長い距離のしんどい走りがある。(好機には)最後、皆、自分がトライしてやろうと必死に(ボールを)追いかけている。自然に人数がわくんです」
結局、前年度の選手権準決勝(今年1月2日/東京。国立競技場)で71―5と一蹴した相手を、今度は73―0で圧倒した。
開幕4連勝で、8チーム中首位タイ(暫定)。プレイヤー・オブ・ザ・マッチはWTBの小村真也だった。チャンスメイクとカバー、軽やかな走りによる3トライで魅した。
敗軍の谷山隼大主将は、「ボールを獲られた後に一発で(トライまで)持っていかれると相手の流れになってしまう」。自身はチーム事情でNO8からCTBに移るなかラン、接点へのプレッシャーで気を吐いた。チームとしても、モールなどで手応えを掴んだ。ところが終わってみれば、王者の集中力に脱帽した。
筑波大は、上位陣とのカードが続いた前半4戦を1勝3敗とした。残る3戦を制し、再び選手権へ出たい。