ジャパンのジャッカラーといえば姫野和樹。では、関西大学リーグのジャッカラーは?
無論、立命館大のNO8島正輝で決まりだ。
182㌢、102㌔の2年生。
今季、この男がジャッカルを決めない日はあったのか。少なくとも自分は知らない。
10月8日に京産大を22-26と追い詰めた試合では、自陣ゴール前のピンチをジャッカルで救う。
モール、ブレイクダウンでも奮闘した。
モールではチームとして2トライを挙げる。
京産大の廣瀬佳司監督は「(試合の)最後まで止められなかった」と脱帽した。
件のジャッカルについて、島本人は「タックルをみんなに任せて、自分は相手が寝た時に入るだけだった」と謙遜するも、それがチームに求められた役割だと自覚する。
「両FLがめちゃくちゃ良いタックラーなので、別の角度からディフェンスできればいいなと。ブレイクダウンでファイトすることは、求められているところだと思っています」
ジャッカルに目覚めたのは、「高2くらいから」。「1本入ったらペナルティを取れて。快感みたいなのを覚えた」と笑う。もっとも、細かい技術を習得し始めたのは「大学入ってから」だ。
「ただ、今季はルールが変わって(ハイタックルの罰則が厳格化)、ダブルでぶつかるのが難しい。ジャッカルではなくて、(ラックを)越えることも意識しないといけないと思ってます」
ラグビーは小学5年時から始めた。中学まで大分ラグビースクールで過ごし、高校は県下屈指の進学校である大分舞鶴に入った。
大分東明がめきめき力をつけるなか、3年時は引き分け抽選で3大会ぶりの花園出場を勝ち取る。島はキャプテンとしてチームを率いた。
花園では石見智翠館に完封されて2回戦敗退に終わるも、島の奮闘ぶりは光った。ラグビーマガジンも、8強入りを逃したチームの中で際立った選手のひとりに挙げた。
それでも、高校卒業後は就職を考えていたという。はじめは、「大好きな先輩」である竹部力が在籍する法大志望だった。
しかし、スポーツ推薦の声はかからず。
「働こうかなと思っていた時に、OBのコーチの方に(立命館を)繋いでもらいました」
救われた。いまは「(ラグビーを)続けて良かった」と心の底から思える。
「同期はみんな全国トップレベルの選手です。向上心が常にあって、毎日良い刺激をもらってます。自分も上を目指したいと思わせてくれる」
自身でも想定外だったのは、入学直後の関西春季トーナメントから8番のジャージーを与えられたことだ。そのまま秋もレギュラーを掴み、全試合にフル出場、3トライを挙げた。
「まさか春から使われるとは思ってなくて。先輩もいる中で…というマインドもあって難しかったけど、なんとか自分の仕事をやらないとな、と」
2年目のシーズンを迎え、心境も変わる。
「去年は自分のことばかりでしたが、NO8というポジションなので、もっとチームを、特にFWをまとめて引っ張っていければなと。プレーで見せることはまだ難しいかもしれないけど、ハドルでどう声掛けするかは意識してることです」
5年ぶりの大学選手権出場を狙うチームにあって、島が悔やむのは開幕節で春2位の同志社大を破って迎えた第2節の関西学院大戦。34-49のスコアで逆転負けを喫した。
「あの試合はFWで負けました。自分も戦犯だった。そんな中でFW強みの京産に次どう戦うか。もう一度気合いを入れ直してやってきました。京産戦ではFWとしてその成果を出せたのは良かったです。
個人的にも気持ちが入っていました。控えには4回生の(服部)峻さんがいて、自分はその人を抑えて出てる。下手なプレーはできないですし、峻さんのためにも、という気持ちがありました」
1勝2敗と選手権出場に向けてあとがない立命館大は、10月15日に3連勝中の天理大とぶつかる。
「もう負けられない」と、島の決意は固い。
「1試合、1試合を大事に、勝ちにこだわります。(天理大には)留学生がいるけど同じ世代、そこは言い訳にできない。チームとしてまとまって勝ちにいきます」