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タックル好き。ブルーズU18のSH加藤大冴は熱烈プロ志望

2023.10.09

ブルーズU18の先発SHとしてプレーした

2005年8月24日生まれの18歳。左は、ブルーズU18でともにプレーした岸本類



 白米を食べたくなる。日本人のDNAを感じるのは、そのときくらいか。
 思考回路やプレースタイルは、すっかりキウイだ。

 いま18歳。9歳からニュージーランドに暮らし、自我の芽生える時期をラグビー王国で過ごしてきた。
 加藤大冴(たいが)は、オークランドの対岸、ノースハーバーのグレンフィールドに暮らしている。

 2014年、家族とともに川崎(神奈川)からニュージーランドに移住した。
 楕円球と出会ったのはその後だから、ラグビーに関しては100パーセントNZ仕込みだ。

 ウエストレイク・ボーイズ・ハイスクール(以下、ウエストレイクBH)に学んだ。
 同校では3年間ファーストXVに選ばれ、50キャップに到達。今年はブルーズU18にも選出された。

 ポジションはSH。好きなプレー、強みについて「ディフェンスとタックル」と話すところもNZ育ちらしい。
 王国で9番は、体を張って当たり前のポジションだ。大柄なFWへのタックルもいとわない。最初から「それがあたりまえ」の環境にいる。

 高校時代に残した足跡が立派だ。
 2年時はオークランドの高校選手権でセントピーターズを破った強豪のケルストンボーイズをBluesファイナル(スーパーラグビー、ブルーズのフランチャイズ地域の選手権)で破り、ニュージーランドのトップ4に進出。最終的に3位になった。

 今シーズンも好調だった。
 オークランドの高校選手権で優勝したセイクリッドハート高をBluesファイナルで破る。再びニュージーランドのトップ4に進出した。
 決勝でサウスランド・ボーイズに惜しくも敗れたが準優勝に輝いた。
 U18ノースハーバーには3年連続で選出されている。

 ラグビーを始めたのは、移住翌年の4月。地域の日本人コミュニティーのラグビー体験会に参加した時、「スジがいいからクラブに入れば」と進められてタカプナクラブに入った。
 当時、同クラブでコーチを務めていた岸本泰と出会う。同コーチの長男・岸本類はその頃からの友人。ブルーズU18にともに選ばれた。

 同クラブで4年プレーした後、ウエストレイクBHへ。同校はニック・エバンスやルーク・マカリスターら、これまでに5人のオールブラックスを輩出している。
 環太平洋大学からコベルコ神戸スティーラーズに加入したティエナン・コストリーも同校出身で、同選手とは交流がある。

 授業後のチーム全体での練習は週2回(1回約90分)で、ジムで朝に鍛える日も2日。練習時間は日本の部活動と比べると、はるかに少ない。
 しかし試合数はとても多い。

8月にはノースハーバーチャンピオンになった

 例えば加藤の高校ラストイヤーを振り返ると、3月終盤に始まったプレシーズンゲームで4試合を戦った。
 4月末から8月のアタマにかけては、ノースハーバー州の高校同士で総当たり戦が13試合あった。

 それに続いて州の上位4チームによる準決勝、決勝を戦い、8月26日にはBluesファイナルを戦った。
 9月初旬のNZトップ4選手権まで、プレシーズンゲームを含めて計23試合。加藤は、その全試合に出場した。

 10月7日には、ブルーズU18×チーフスU18に9番で先発した。岸本類も後半途中からSOでピッチに立った。
 24-26で敗れるも堂々とプレーした。

 高校卒業後の進路は、まだ明確には定まっていない。
 現地で大学進学する選択肢もある。しかし、ラグビー・ファーストの判断をするつもりだ。

 ノースハーバー代表のアカデミーに加わり、州代表、ブルーズ入りを目指す道もある。
 大学進学も含め、日本でのプレーも選択肢のひとつだ。

 いずれにしてもラグビーで生きていきたいと思っている。
「プロ選手としてやっていけるなら、場所(国)はどこでもいい」とキッパリと言う。「好きなことをやって生きていきたい」と、自分の気持ちに正直に決断する人生を歩むつもりだ。

 170センチ、65キロの体躯で、大柄なFWにタックルする。
 サイズの差を気にしたことはない。低く、鋭いタックルが自然と出るのは、本能的にそうしないと止められないと分かるからだ。

 自身のプレーを集めた映像を見た日本の関係者からは、積極的なディフェンスが高く評価された。
 しかし本人は、「それができないと(試合のメンバーに)なれないので」と笑顔で話す。

 憧れはオールブラックスの9番、アーロン・スミス。チームに影響を与える存在だ。
 ウエストレイクBHはフィットネスが強く、自分たちの強みを生かすため、テンポのはやいスタイルが特徴。加藤は、その発信源にもなっている。

 20歳になる頃には、どこにいるだろう。
 描いている夢への距離は、きっと近づいている。

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