両軍の選手たちが入り乱れて掴み合うシーンがあった。
おそらく、今大会でいちばんの規模だった。
後半30分過ぎのハーフウェイライン付近。ジョージアWTBダヴィト・ニニアシヴィリの首に腕を巻きつけ、ウエールズFLテイン・バシャムが捻り倒す。
掴みかかるニニアシヴィリにバシャムが応戦したところに多数の選手たちが駆け寄った。
乱闘劇のきっかけとなった両者にイエローカードが示された。
その時点でスコアは31-19。14人×14人となった後、フルタイム時には43-19と差は開いた。
しかし、熱い試合だった。
この日、白いジャージーを着たジョージアがウエールズの選手たちが作った花道を抜けてピッチから出るとき、スタジアムは大きく沸いた。
前半15分は互いにスコアレス。試合はそこから動いた。
FLトミー・レッフェルのキックチャージでジョージア陣深くに攻め込んだウエールズは、相手反則を誘う。
PKからモールを組み、攻撃を継続。最後はPRトーマス・フランシスがトライラインを超えた。
サム・コステローのGも決まり7-0と先行した。
開催中のワールドカップ、プールCの戦い。
この試合の前までに3戦全勝、勝ち点14で同組1位を走っていたウエールズは、試合ごとに結束を固めていた。
大会前の期待は高かったジョージアは、開幕から1引き分けと2敗。ポルトガルに引き分け、オーストラリアとフィジーには敗れただけに、爪痕を残して大会最終戦を終える気迫があった。
試合は、先行したウエールズが、23分のFBリアム・ウィリアムズのPGで17-0とする。
ジョージアのトライを35分のCTBメラブ・シャリカゼのものだけに抑え、17-7で前半を終えた。
後半も先手は赤いジャージーだった。
ジョージアのパスの乱れからいっきに切り返し、WTB・ルイスリース=ザミットがトライ(Gも成功)と、ウエールズは開始早々(3分)に24-7と差を開いた。
しかしFWが接点で健闘し、BKが積極的に仕掛けていたジョージアの時間帯がやがて訪れた。
攻めてもなかなかゴールラインに届かなかったが、自分たちのスタイルを発揮したのが後半中盤だった。
後半18分過ぎ、ウエールズの反則を誘ってPKからラインアウトを組み、FWで攻めた。
途中出場のHOヴァノ・カルカゼがインゴールにボールを置いた。
21分過ぎにもラインアウトから攻めた。
左サイドから右に展開。振り戻しの左への展開でボールを持ったのがWTBニニアシヴィリだった。
FWとのミスマッチを逃さず抜き去って走り切った。
24-19とウエールズのリードは5点に縮まった。
ラスト20分で差が開いたのは、ジョージアが力尽きたのではない。
ウエールズのスマートさと一体感が感じられる時間だった。
66分、74分、79分とBKで3トライを重ねた。
前がかりとなっている相手の裏へキックを蹴り、好チェイスから2トライ。
最後はFWのタイトなプレー後に大きくボールを動かし、右の大外にいた13番、ジョージ・ノースがチーム6つ目のトライを奪った。
ウエールズを率いるウォーレン・ガットランド ヘッドコーチは、「ジョージアは最後まで諦めていなかった。しかし、我々の選手たちは仕事をやり切った」と話した。
プールステージ最終戦で勝ち点5を得たウエールズにとっては、次ステージに弾みのつく終盤のパフォーマンス。
ジョージアにとっても、自分たちの持つ力と情熱を、多くの人に伝える試合となった。