いつもと変わらず穏やかな表情で松島幸太朗が話した。
「みんな勝つことしか考えていません。個人的にもワクワクしています。はやく試合をしたい」
そして続けた。
「そんなに甘い試合にはならないと思います。チームが勝てば、それでいいのですが、(自分で)トライをひとつぐらいはとりたいですね」
開催中のワールドカップ、プールDで、日本代表はここまで2勝1敗。1位が確定し、すでにノックアウトステージ進出を決めているイングランドに続く2枠目を、アルゼンチンと争っている。
10月8日には、その相手と直接対決する。
ナントの地で勝った方が8強入りを決め、マルセイユでの次戦進出となる。
その試合に向けて準備を進めている松島は、大一番に向けて「(圧力を受けるだろうから)自分たちからプレッシャーをかけていくのが大事」とした。
「デイフェンス(にまわること)も多くなるだろうし、キックもたくさん蹴ってくるでしょう。バックフィールドでコネクションして、どこに蹴ってくるか把握しておきたいですね」
2019年大会のプールステージ最終戦も、今回と同じような状況だった。
スコットランドとの一戦は、負けたら終わりの80分。松島はその舞台でトライも奪い、勝利に貢献した。
マストウィンの試合へ向けて取るべき姿勢は知っている。
「お互いに負けたら終わり。気持ちのぶつかり合いになると思います。メンタル的なところが大事」
勢いに乗ることが重要。「最初から気持ちで勝ちたい」と決意する。
オフ・ザ・ボールの動きで相手を上回る。
相手の同じポジションの選手より、ボールを手にしている時も、していない時も動き勝つ。
「みんながそうしていればトライも生まれると思います」
相手はキックを多用してくる。その競り合いも、勝負を決める分岐点になるだろう。そこへの準備は重ねてきた。
空中でのコリジョンに勝つこと。そしてこぼれ球への反応。
ボールを取りにいく選手だけでなく、組織として動くことが重要だ。
イングランド戦でうまくいかないことがあった。
ハイボールのレシーバーを守る壁が緩く、(相手のチェイサーに)すり抜けられて圧力を受けた。その反省から課題を修正。その対策を練ってきた。
「ハイボールをキャッチする人を、どれだけそれに集中させてあげられるかが大事です」
「攻守の入れ替わりが多い試合になる」と予想する。
モメンタムを得るには、攻撃的にプレーすることが大事だ。
今大会に入ってWTBを任されている松島は、「自分たちの判断を信じ、リスクある時でもスキルを信じる。そうプレーすれば、もっとトライは増える」と話す。
試合まで残り数日。30歳になったアスリートは、「いつも通りに、自分の仕事が何なのかを理解することが大事」と、平常心の大切さを口にした。
「練習から、相手のアタックやディフェンスを予測してやっています。そのイメージ通りのプレーが試合で起こったら、落ち着いてプレーできますから」
2015年大会から3大会連続で大舞台に立つ。今大会ではここまで、14番を背負って3試合にフル出場中。
この秋、フランスの地ではまだノートライも、ナントで5点を刻み、チームをマルセイユに連れていきたい。