開催中のワールドカップ(以下、W杯)は、全48試合中30試合が終了した。
9月8日の開幕戦を含む週末を第1ラウンドとするなら今週末は第4ラウンドで、残すは10月1日のオーストラリア×ポルトガル、南アフリカ×トンガの2試合だけだ。
現時点のトップスコアラーはアイルランド代表SOのジョニー・セクストン。今大会はここまで3試合に出場し、3T12C2PGで45得点を挙げている。
そのセクストンを筆頭に、世界のスター選手が名を連ねる中で、得点ランキングで全体の5位につけているのが日本代表SOの松田力也だ。
8C7PGで37得点。8コンバージョンキックの成功は、全体7位の成績だ。
今大会、プレースキックは16回蹴って15回成功と好調だ。
その理由について本人は、大会直前の修正を挙げる。
W杯前最後のウォーミングアップゲーム、イタリア戦までは、「自分のキックができていなかった」と話す。
ベクトルを自分に向け、キックを蹴るための独自のポイントをもう一度見直した。そして修正。
結果、「自分のキックを、いい感じで蹴ることができていると思います」と笑顔を見せる。
W杯前の今季の日本代表活動では、オールブラックスXV戦2試合からイタリア戦までの6試合中、先発は2試合だけだった。
しかしW杯に入ってからは3戦連続で先発。ピークを本番に合わせられたのは、経験値の高さからだ(通算36キャップ)。
W杯や遠征中は、日本国内にいるときと違い、日常のようなトレーニング、暮らしをすることが難しい。
その中で体も変わる。キックのフォームにも微調整が求められる。
本人のチェックポイントは右肩。そこが下がり気味になると、キックの軌道がぶれる。
その意識から、ボールを地面にプレースした後のアクションが少し変わった。
両肘を曲げて、前腕部を上げ、ゴールポストを見つめる。
その立ち姿について、チームメートは恐竜と呼ぶそうだ。
「マノ(レメキ)はティーレックス(恐竜/ティラノザウルス)みたい、と言っています」
決まったルーティーンが集中力を高める。だからショットクロックも気にならない。
今大会ではトライ後のコンバージョンキック=90秒、PG=60秒の制限時間のカウントダウンが大型ビジョンに映し出されているが、松田は意に介さない。
「ショットクロックは今大会で初めて経験しましたが、意外に気になりません。自分のキックに集中しているので」
リキ・フルーティー アシスタントコーチは松田について、「リーダーグループのひとりとして、いい判断をしてくれている」と話す。
「いいプレーで、ゲームプランをリードしてくれています。テクニック、スキルに大きな変化はありませんが、自信を持ってプレーしていることが大きい。いいキックが試合運びを良くしています」
キック練習を欠かさずおこなっている。
普段から8割、9割の成功率を残していることが、そのまま試合でのパフォーマンスに直結している。
スタッツやランキングなど『個』にフォーカスしたものより、「僕が勝ったところで、チームが勝たないと意味がない」と話す。
チームの力を引き出し、勝利に導くのが司令塔の役目だ。
「この舞台で10番として試合に出て、チームに貢献する。2019年(大会)が終わってから、強くそう思ってやってきました。いま、それがいい形でセットアップできているように思います」
アルゼンチン戦(10月8日/ナント)に向け、「自分たちがやってきたことをしっかり出せれば、どこの国にも負けないと思っています」と自信を見せる。
「自分たちの準備に対する姿勢や、ラグビーに対する理解度は、世界でも良いものを持っていると思う。それを結果で証明したいですね」
自信のある10番がいるチームは強い。ノックアウトステージに進出し、それを証明する。