市役所を辞めた。
ジャパンラグビーリーグワン2部の釜石シーウェイブスの河野良太は、今年6月からプロ選手になった。加入当初の希望がかなった格好だ。
それまでは釜石市役所のスポーツ推進課で「10時から17時15分まで」のフルタイムで働きながら、夕方の全体練習に参加していた。
「夕方は6時半からトレーニングがあるなか、日中は自分の時間ができる。自分のためのトレーニングやリカバリーに充てられる時間が増えています」
身長169センチと小柄も、鍛え上げた体重93キロのフィジカリティで、強烈なロータックルを連発。中部大春日丘高を経て入った大東大では、2017年度の主将として全国4強となった。
日本代表で活躍するアマト・ファカタヴァの1学年先輩だ。ファカタヴァとは仲がよく、寮の最寄りの高坂駅近くの「りこ坊」というカレー屋に一緒に通った。プレーンな「マルシェカレー」にチキンやチーズをトッピングするのが好きだった。
卒業後に加わった中部電力を経て、2020年からシーウェイブス入り。トップレベルの舞台で戦うのを目指して決断した。
クラブ側にプロ転向を認められたのは、近年の試合で活躍ぶりを受けてのことだ。競技に集中したい。
「あとどのくらいラグビーができるかわからない。時間は限られている」
チームは2001年に発足。1984年度まで日本選手権7連覇の新日鉄釜石が変化した形で生まれた。現在の所属選手には、ラグビー専業のプロ選手と近隣の企業や自治体で務める通称「社員選手」が混在する。
河野は「いろんな事情があって、いろんな事情を持ってきている選手が多いので、それをひとつにまとめるのは難しい」と自覚したうえで、「社員選手」の気持ちを汲んでプレーしたいと話す。
「プロ選手は練習や普段の立ち振る舞いで、より自分に厳しくやっていかないと。例えばプロ選手が社員選手の前で『あー疲れた』とか言ってしまうと、『仕事をしている社員選手の方が疲れているんだぞ』となってしまう。言動には気を付けたいです」
プロ転向に先立ち、役目が与えられた。クラブキャプテンだ。
昨季までの選手会長が名称を変えた。グラウンド外でのリーダーシップが期待される。昨年まで選手副会長だったのを受け、須田康夫ヘッドコーチに任命された。
選手と裏方側とのパイプ役となり、地域とつながるためのラグビー教室への派遣選手の割り振りなどに奔走。役所勤めの経験があるから、市から依頼される普及活動の取りまとめでは頼りになる。
「シーウェイブスは釜石市と密な関係。いろんなことがやりやすいと感じます。それを(より)うまくやっていきたいと思っています」
チームは昨季、下部との入替戦を経て2部残留を決めた。全部で6チームある2部には、NTTグループを再編して作った浦安D-Rocksや前年度まで1部のNECグリーンロケッツ東葛など難敵がひしめく。
地域とのつながり、人同士のつながりといった無形の力で底上げを図り、「上のほう(1部との)の入替戦」に臨みたい。昇格が叶えば、ファカタヴァのいるリコーブラックラムズ東京とも戦える。