情熱あふれる、いつもの前向きさが戻った。
サモア戦に向け、姫野和樹主将(NO8)の表情が明るい。
自身にとっては開催中のワールドカップで2試合目の登場だ。
初戦のチリとの一戦は、ふくらはぎに違和感があって出場回避。2戦目のイングランド戦で今大会初めてピッチに立った。
その試合で見せた8回のボールキャリーは、FBレメキ ロマノ ラヴァと並んでチームトップの数字だった。
16回タックルし、19回のピーター・ラブスカフニ、18回のリーチ マイケルとともに、バックロー3人で何度も相手に突き刺さった。
初戦の前の、やや硬かった表情がなくなった理由を、「(自分にとっての)W杯初戦(対イングランド)を終えて緊張がほぐれました」と自己分析する。
サモア戦へ向け、コンディションも上がっている。
イングランド戦には敗れたものの(12-34)、チームも自分自身も、気持ちの切り替えは済んでいる。
入念な準備を重ねて臨んだ試合だっただけに勝てなかった悔しさは大きかった。
しかし第3戦のサモア戦まで中10日と多くの時間があったことも、日本代表にはアドバンテージに。「立ち直るのに十分な時間があった」と話す。
この大会での上位進出をゴールに定めてきたチームだ。登山に例えれば、大会開幕と同時に、チームはすでにデスゾーンに入っている。
その中で1勝1敗のスタートを切った。次戦のサモア戦は、絶対に勝たないといけない。
その状況について、「みんな理解している」と主将は話す。
「こういうシチュエーションになるのは、みんな予想していたと思います。厳しい戦いになることは分かっています」
ただ、「チームとして自信があることを感じます」と頼もしい。
サモアについて、「レベルが上がっていると思いますし、(フィジカリティの強さという)強みも分かっている。(元NZ代表や元豪州代表なども加わり)経験のある選手も増えています」とリスペクトする。
それに動じることなく勝利への自信を持っていられるのは、自分たちのコーチ陣への信頼が厚いからだ。
「勝つプランを持っています。それを信頼し、遂行するだけ」と迷いがない。
全員で同じ絵を見て動き、判断できるチームになっている。プラン通りに、遂行し切れたら勝てると信じる。
「ただハードワークするだけでなく、一人ひとりが自分の役割を100パーセント果たせれば結果はついてきます」
それは、敗れたイングランド戦でも体感したことだ。
「(あの試合も)勝てると思ったし、実際、そこまで(僅差で後半20分過ぎまで)いった。それは自信になりました」と言う。
日本代表の強みを「コネクション」と考える。
「どんなにきつい時でも(周囲と)コネクションを保ち、ダブルタックルをすれば(ハードな相手でも)止められる自信はあります。イングランド戦でも通用しました」
長い時間をかけて積み上げてきたものがチームを支えている。
チームがベースキャンプを張るトゥールーズの街が好きだ。
サモア戦には日本からのファンも、トゥールーズに暮らす人々も、大勢の人たちがスタジアムに足を運ぶだろう。
その目の前で情熱的なプレーを見せて勝利をつかむ。