記者会見の冒頭に発した謝罪の言葉、呆然としていた表情は、報道陣の辛辣な質問にすぐに険しくなった。
そして「私のワラビーズへのコミットメントを疑うかのような質問は不快だ」と言い、「そのような質問を続けるのであれば退席する」と続けた。
開催中のワールドカップ、プールステージの中でも注目度の高かったプールCの一戦。ウエールズ×オーストラリアは40-6と予想外の大差でウエールズが勝利を手にした。
その結果、ウエールズは同プール1位でノックアウトステージに進出することがほぼ決まり、オーストラリアの次ステージ進出は難しくなった。
対ウエールズの史上最多失点、最大得点差での敗戦と、W杯史上初のプールステージ敗退が濃厚となり、ワラビーズを率いるエディー・ジョーンズ ヘッドコーチは、試合後の会見の冒頭、謝罪の言葉を口にした。
「まずオーストラリアのファンに謝りたい」
そう切り出し、「多くのファンがフランスまで足を運んでくれた。遅くまで起きて試合を見ようとしてくれたとも思う。我々のパフォーマンスは求められる水準に達していなかった。申し訳なく思っている」と淡々と話した。
「すべての責任は私にある」と続けた。
「若いチームで選手は全力を尽くしてくれた」と、戦いに挑んだチームを労った。
「皆、落ち込んでいます。残念なことに、現在の我々にはウエールズのようなチームに対し、一貫してプレッシャーをかけるラグビーができなかった。良いプレーを見せてもそのあとに崩れてしまった」
「非常に残念。ウエールズを祝福したい」と、勝者へのリスペクトの気持ちも伝えた。
「彼らはタフで素晴らしい試合運びだった。キックもチェイスも良く、チャンスでトライを取り切れていた」と話した。
ただ殊勝な態度は、すぐに変わった。
冒頭のように「不快だ」となったのは、オーストラリアの現地紙が「(W杯後に)日本代表次期HCへの就任意志があり、すでにオンラインでインタビュー(面談)を受けた」と報じたことに関連した質問が相次いだからだ。
オーストラリアの任務に完全にコミットしているのか?
そんな質問に「はい。100パーセントしています」と即答した。
「オーストラリアのラグビーを助けるために(現職に)戻ってきました。現状では助けになれていないようですが、(それは結果であって)コミットメントには関係がない」
「オーストラリア人であることに誇りを持っている」と続けた。
「オーストラリアのラグビーが苦しむ姿を見たくはない。変化が必要なのはワラビーズだけではなく、国のラグビーのシステム全体。そのことが言い訳にはならないことは分かっているが、現状を見つめ、向かうべき方向を見定めることが必要」
W杯開幕の数週間前に日本代表HCの面接を受けたのか?
もし受けていたのであれば、どんな考えがあってのことだったのか?
問い詰める記者に対し、「なんの話をしているか分かりません」と答えた。
ゲームキャプテンを務めたHOデイヴィッド・ポレクキに対し、「確かなソースを元にした記事で、エディーが来季から日本のHCになるかもしれないと報じられたのをすでに見ていると思うが、チームへの心理的な影響は? 追い込まれた状況で必勝が求められる中、理想的な状況とは言えなかったと思うが?」との質問が出た。
ポレクキが、「選手のほとんどは知らなかったのでは、と思う。1週間よい準備をして、おそらくこれまででも最高の準備ができた。しかし今夜は、それをパフォーマンスにつなげることができなかった。ただ、それはチーム外の雑音とは関係のないこと」と答えた後だった。
ジョーンズHCは「不快だ」、「このような質問を続けるのであれば退席する」と苛立ちを隠さなかった。
「就任以降、休むことなく働き続けてきました。繰り返すが、結果については謝る。が、私の、この仕事へのコミットメントを疑うのは極端すぎる。これ以上、同様な質問は受け付けない。ウエールズ戦、(次戦の)ポルトガル戦についてはいくらでも答える」
若手の多い今回のW杯スコッドについて「経験不足が見受けられたが、セレクションに後悔はあるか」との質問には、「オーストラリアのラグビーを根本から立て直すことを求められて就任した」と話した。
「その立て直しは、これまで長くプレーしていた選手だけでは難しいと考えました。新鮮な変化が必要だった」と答え、「若い選手が今日の試合で苦戦したのは間違いない。しかし、このような経験がないと選手としての成熟はできない」とした。