ラグビーリパブリック

情熱的な初ドロー。ポルトガル代表のパフォーマンスを主力選手が振り返る。

2023.09.24

ポルトガルの仕事人、LOジョゼ・マデイラ。(撮影/松本かおり)



 メインスタンド上段の記者席に、ドン、ドンと固いものを叩くような音が響く。

 きっと、約3万人超のファンの多くが飛び跳ねていたのだろう。なかでもポルトガル代表のファンは、西日のさす芝へ熱唱と絶叫を届ける。

 9月23日、スタジアム・ド・トゥールーズ。ロス・ロボスことポルトガル代表は、ワールドカップフランス大会の予選プール2試合目に挑んでいた。

 今回は、2007年の第6回大会以来2度目の出場だった。 9月16日、スタッド・デ・ニースでの初戦では、前回4強入りのウエールズ代表に8-28と敗れた。前半のスコアは3-14と、爪痕を残していた。

 トゥールーズでぶつかったのは、ジョージア代表だった。セットプレーが得意で、最近では組織的な攻撃にも活路を見出す東欧の雄だ。

 いざ試合が始まったらしばらく、ジョージア代表がエリア、ポゼッションとも制圧した。

 特に、FBのダヴィド・ニニアシヴィリが魅した。空いたスペースへ鋭いキックを蹴り込んだり、中盤からの攻めで鋭い走りとパスを重ねたり。

 ポルトガル代表のWTBを務めたハファエリ・ストルチは、このように反省する。

「彼(ニニアシヴィリ)はいい選手。簡単にキックを蹴られてしまっていた。我々に弱みがあった」

 しかし、ポルトガル代表は耐えた。ジョージア代表がミスを重ねたのにも助けられ、ハーフタイムを終えてのスコアを5-13とした。

 さらに後半に入ると、ポルトガル代表がリズムを取り戻す。

 前半37分に受けたイエローカードのため数的不利を強いられながら、5分からの約3分間は効果的に攻めた。敵陣10メートル線付近で、接点の周りへ果敢に仕掛けた。ラインブレイクを決め、向こうのハイタックルを誘った。8-13と追撃した。

 人数を五分にして迎えた9分頃には、自陣10メートルエリア左のラックでターンオーバーを決めた。一気に右へ展開した。手薄な防御網をえぐり、敵陣22メートルエリアまで進んだ。

 この時の攻撃を、ストルチは「一貫して私たちが示してきたもの」と表現する。

 その攻めこそエラーで終えるも、その直後にも好機を掴んだ。ここでは鋭い仕掛けで相手防御の反則を誘った。13分、ペナルティーゴールで11-13と差を詰めた。

 17分には、中盤の連続攻撃からストルチが魅する。

 SOのジェロニーモ・ポルテ—ラのオフロードパスへ駆け込み、接点周辺の防御と入れ違うような形で約40メートルを駆け抜けた。これで2本目のトライを決めた。さかのぼって前半34分にも、約40メートルを走破していたのだ。

 直後のコンバージョン成功もあり、ポルトガル代表は18-13と勝ち越した。ストルチは続ける。

「いつもディフェンスを突き破ろうとしている」

 最後はジョージア代表に追い付かれた。18-18で迎えたラストワンプレーでは、ペナルティーゴールを外した。かくして初勝利はお預けとなったが、黒星以外の結果で終えたのは今回が初だった。進歩の証を示したと言える。

 この試合で、両軍最多の18タックルを決めたのはジョゼ・マデイラ。ポルトガル代表のLOだ。

 自陣ゴール前で相手に差し込む一撃を放ったり、中盤で絶ったまま相手からボールをもぎ取ったりしていた。攻めても低姿勢の突進で、防御の裏側へ抜け出した。肉弾戦で奮闘した。

 殊勲のマデイラは、いい試合をしながら勝ちを逃したことを「複雑な感情だった」と振り返る。そのうえで、自身が身体を張り続けられたわけをこのように述べた。

「答えは簡単。スタジアムの応援に助けられたからです。それと、この瞬間に力を出すため、チーム全員が懸命に努力してきたのです」

 取材エリアでは、元フランス代表アシスタントコーチのパトリス・ラジスケヘッドコーチらの分析と努力を讃える主力格もいた。

 ポルトガル代表が示した挑戦的なスタイルの裏には、選手の首脳陣への信頼があった。


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