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【RWC2023】ポルトガルのパッション、ジョージアを追い詰める。熱き引き分けにスタジアム揺れる

2023.09.24

周囲を動かし、自らも前へ。プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたポルトガルSOジェロニーモ・ポルテーラ。(撮影/松本かおり)



 試合前のナショナルアンセム。ジョージアの魂の叫びが聞こえてきた。
 しかしボリュームの大きさなら、続いて歌ったポルトガルの方が上だった。選手、ファンの声から、この日にかける気持ちの強さが伝わってきた。

 立ち上がりすぐに先制したのはジョージアだった。
 キックオフリターンのキックを受けた赤いジャージーは、大きく球を動かして、最後は右に展開する。
 FW、BKが一体となった攻撃を仕上げたのはWTBアカキ・タブツゼ。右サイドを駆け上がり、右中間にボールを置いた。

 ポルトガルは直後のコンバージョンキックも決められ、16分と38分にはPGを追加された。
 0-13。
 大会前、ダークホースに名を挙げる人も多かったジョージアに少しずつスコアを離されてしまった。

 今回が2003年大会以来6大会連続、6回目のW杯出場となるジョージアと、2007年大会以来2度目の大舞台出場のポルトガル。両チームのW杯での対戦は初めてだ。
 過去18回の対戦がある両チームの戦績はジョージアの15勝。3度の引き分けはあるけれど、ポルトガルの勝利はまだない。

 そんな過去にも、序盤の劣勢にも、この日のポルトガルの心は折れなかった。
 点差は開かれても、一人ひとりのタックルと、BKの果敢なアタックは相手を慌てさせた。
 何度か小競り合いもあった理由のひとつには、ポルトガルの選手たちに気迫がみなぎっていたこともある。

 前半33分、積極的に攻め続けたポルトガルのアタックがようやく実った。ジョージアのキックを受けた後のアンストラクチャーから攻めた。
 左サイドのラックから出たボールを右に展開。FWもパスをつなぎ、外へつなぐ。
 WTBハファエリ・ストルチが一旦内側に切れ込んだ後、右コーナーに走ってインゴールに飛び込んだ。

 5-13としてハーフタイムに入ったポルトガルのモメンタムは、後半も衰えなかった。
 プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたSOジェロニーモ・ポルテーラは、FWが奮闘して獲得した球をどんどん散らした。
 後半8分にはSHサミュエル・マルキがPGを決めて8-15に。その5分後にも3点追加で差を詰めた(11-13)。

 この日、両チーム最多の17タックルを決めたLOジョゼ・マテイラが体を張り続け、強いコリジョンで活路を開こうとするジョージアの目論見を封じる。
 FBヌーノ・ソウザはボールを手にするたびに仕掛け、相手に圧力をかけ続けた。

 後半17分、右ラインアウトから攻めたポルトガルは、ピッチ中央でセンタークラッシュ。
 その後、SOポルテーラがタテに仕掛けた動きに反応したWTBストルチがスペースに走り込んでオフロードパスを受け、トライラインまで走り切った。

 SHマルキのコンバージョンキックも決まり、スコアはひっくり返って18-13。
 ポルトガルファンの絶叫とボディーランゲージが最高潮に達した瞬間だった。

 勝利に近づいても、守りに入ることのなかったポルトガルは、最後の数分まで勝利に近づいた。
 後半78分、反則からPKで自陣深くに入り込まれ、ラインアウト後のモールを押し込まれたのは残り2分の頃。ジョージアの13人モールにトライを奪われて18-18とされる。

 それでも強気は変わらず、リスタートのキックをチェイスし、敵陣でPKを得たときにはスタジアムの時計は80分を超えていた。
 右中間から狙った、勝ち越しで決勝のPG(FBソウザ)は惜しくも左に外れて試合は引き分けに終わった。

 しかしこの日、白シャツ×グリーンのパンツで堂々と戦い抜いたポルトガルには、大きな歓声がやまなかった。
 観る者の琴線に触れるパフォーマンスだった。

 チームを率いる元フランス代表WTB、パトリス・ラジスケHCは粘り強く守り続けた防御を高く評価し、「自分たちのスタイルを出せばトライを取れた。チームは試合ごとに成長している」と話した。

 そしてこの日のパフォーマンスを通して、「ポルトガルで少年少女たちがラグビーをプレーする意欲につながればいい」と続けた。

 ジョージアのレヴァン・マイサシヴィリHCは、前半にもっと得点できたはずと振り返り、後半途中から追う展開になったことを悔やんだ。
「そうなればミスも多くなる」
 ポルトガルのハートの熱さを称えることも忘れなかった。


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