6万3486人の大歓声が鳴り響く中で、試合開始から速いペースで得点を重ね、21分でボーナスポイントを意味する4とライを挙げた。
最終スコア96-0というフランス代表史上テストマッチ最大得点で快勝したレ・ブルーだが、この歴史的勝利にもかかわらず不安な一夜を過ごした。
試合後、この試合で戦列復帰したシリル・バイユ(PR)は、「久しぶりにプレーできて嬉しい。ゲームプランを実行できて満足、試合の結果にも喜んでいる」と話し、続けた。
「しかし、アントワンヌ(デュポン)が負傷してしまった。大したことがないことを祈っている。ロッカールームでも勝利は喜んでいるけど、お祭りムードではない」とチームメイトであり、個人的にも親しい友人の容態を心配していた。
ハーフタイムのインタビューでファビアン・ガルチエ ヘッドコーチ(以下、HC)は「後半もテンポを緩めずプレーしてほしい。レフリングがコンタクトにとても厳しい。危険はコンタクトにある」と言っていた。
ガルチエHCが想定していた危険とは異なったが、まさに『コンタクト』に危険があった。
45分にナミビア選手のタックルを顔面に受け(CTBヨハン・デイゼル主将がレッドカードに)、アントワンヌ・デュポンが負傷した。痛みを顔に表すことがないデュポンが苦痛を滲ませた。目には涙が浮かんでいた。
バティスト・クイユーと交代し、試合が終わるのを待たずに病院に行き検査を受けた。
翌朝(9月22日)、フランス協会からデュポンが頬骨を骨折していることが発表された。
その後おこなわれたアタックコーチ、ロラン・ラビットのブリーフィング会見では、デュポンについての質問ばかりなげかけられた。
「前半ですでに54-0と大差がついていた。そこで交代させてもよかったのでは?」という記者からの質問に対し、ラビットは「50分で交代させる予定だった」と明かす。
「ケガはこのスポーツについて回るリスク。ワールドカップはとても長い。その間にケガも含め様々なことがあると選手たちと話してきて準備もしてきた。また昨夜の試合では、選手たちのコミットメントと高い精度を取り戻すことが必要だった」と続けた。
その後も今後についての質問が繰り返された。
現状で言えることは、「さらに2〜3日かけて専門家の意見を聞き、外科医と本人が最終的に決断することになる。ポジティブな意見が聞けることを期待している」とした。
『ミディ・オランピック』は、デュポンが顎顔面外科の専門家がいるトゥールーズの病院へ移されると報じており、手術も考えられる。手術をすれば、数週間コンタクトスポーツはできなくなる。
今後の大会参加が危ぶまれる。
試合前ガルチエHCは、マルセイユのスタジアムの思い出について、「現役時代もコーチになってからも、いい思い出しかない」と意気揚々と話していた。
それに対しデュポンは、「僕は複雑な思いが……」(昨年11月の南アフリカ戦でレッドカードを受けて退場になった)と複雑に表情で話していた。
相性というものがあるのだろうか。
昨日は、大会前に膝靱帯を負傷して欠場となったロマン・ンタマックも、松葉杖をついてスタジアムに応援に駆けつけていた。
さらにデュポンまで失うことになると、優勝を目標にしているフランスには大きなダメージになるだろう。
才能あふれる選手たちが惜しみなくプレーする。
そんな祭典を楽しみにしている世界中のラグビーファンにも、とても残念なことだ。