関東大学リーグ戦2部以下の2023年度公式戦が9月17日に始まった。3部に昇格した新興勢力、新潟食料農業大は昨年度3部全勝で優勝した駿河台大と対戦。残暑厳しい午後、首都圏遠征のハンディキャップもある中、前後半7トライを奪う。駿河台を1トライのみに抑え52-7(前半24-0)と完勝した。
3部開幕戦、埼玉県飯能市にある駿河台大グラウンド。正午に食農大キックオフで始まった。オレンジ色ジャージーの食農大が駿河台陣へ入り試合を進めていく。11分、22メートル線内で反則をもらうと、CTB3年の荒城侃汰(かんた。郡山北工)がPGを蹴り込み先制した。
19分には右ラインアウトからモールを作り、さらにフォワードがラックサイドを突いてLO戸倉翔平(4年、坂出一)がファイブポインターに。荒城がきっちりコンバージョン(G)を決めて10-0とする。駿河台フィフティーンに焦りは見えないが、食農大の勢いを増していった。
22分、FB土居京将(けいしょう。2年、新田)のゲインからつなぐと、SH横田善(3年、桐生一)へ。横田が右中間へ仕留めた。横田は高校1、2年時に冬の花園大会を経験している。試合前に「仕上がりは順調」と話した通りにSHとしてチームプレーにも貢献していた。横田がスクラムやラックなどから柔らかいパスを放り味方をいかす。全員のパスが受け手に優しい軌道を描いていた。
前半はほぼ食農大が敵陣で支配。36分にはゴール前の反則からタップでトライを狙うも奪えず。しかし、駿河台の反則でスクラム。きっちりNO8石川智也(4年、桐生一)が持ち出して3本目のトライを奪った。石川は横田の高校で1年先輩だ。自身は3年時に花園出場。その先輩が新しくできる食農大を選んだことが横田にも影響している。「先輩と一緒にできる最後の1年間、頑張りたい」(横田)
駿河台は前半だけでPKを10個、献上した。規律も課題に。
荒城が3本のGをすべて決めて前半を24-0とリードする。
後半も食農大が躍動した。2分すぎ、食農大陣22メートルの駿河台がスクラムを得る。スクラムから出たボールがルーズになり食農大に渡ると、一気にゴールへ迫る。WTB立木健斗(4年、東京都市大塩尻)がインゴールへ運んだ。
駿河台は円陣で「落ちるな、まだまだ。1本トライをとろう」と声をかけあう。
だが9分、キックリターンから横田がディフェンスを破り2本目のトライを右中間へ。G成功し38-0になり、試合の行方は決まった。6分後には荒城がトライ、Gを奪い45-0。応援にきたオレンジ色の親たちは拍手だ。
23分、駿河台はようやく敵陣の左ラインアウトからサインプレーでHO神尾颯人(はやと、4年)が5点を奪った。神尾は群馬県の明和県央高、横田らと高校時代に競り合った仲。G決めるも41分、食農大NO8石川が2本目のファイブポインターとして試合を閉めた。
7トライ、52-7の圧勝にかつて東福岡高を率いた名将・谷崎重幸監督は「選手たちが『まじめに』自分たちのラグビーをしてくれた。初戦で緊張していたと思うが」と話した。ゲームキャプテンのFL尾沼直樹(3年、常翔)は「セットプレーで勝ち切った。試合の終盤でフィットネスが落ちてきたことが課題」と自分たちへフォーカスした。
駿河台大の松尾勝博監督。かつてSOとしてワールドでプレーした。1987年の第1回ワールドカップに日本代表として出場したレジェンドもこの日は「食農大はスクラム、ラインアウトが安定していた」と相手を褒めるしかなかった。そして谷崎監督と同じ言葉を口にした。「『まじめにプレーしていた』。ポイントへの寄りや帰りも食農大がうちよりも早かった」
食農大は「毎年、新しいステージで戦う」がチームの目標だ。2020年度、コロナ禍で創部、最初は5部に参入した。リーグ戦が再開された’21年度は順位決定戦で24-14と順天堂大を下し1位。4部創価大を入替戦で80-24と圧倒し昇格。昨年度も4部を7戦全勝で1位、3部8位の玉川大に33-7で勝ち3部へやってきた。この日で公式戦は’21年度以来、入替戦を含めて13連勝。次節9月24日は昨年度2位の東京農業大とあたる。2連勝すれば2部との入替戦出場資格、2位以内が近くなる。駿河台大は昨季7位千葉大戦だ。
『千葉商科大が東京都立大を35-15で退け勝利』
駿河台大グラウンドの2試合目は、昨季4勝3敗で初めて3位に躍進した東京都立大に6位千葉商科大が挑んだ。千葉商大は選手不足に悩む。先発メンバー15人中、FW、BK5人ずつが2年生という布陣。リザーブも4人しかいない。1年生が2人だ。この下級生が魅せた。
開始3分、千葉商大が都立大ボールのスクラムからボールがこぼれたところを奪うと、FL薄田祥汰(1年、秋田・金足農)が嬉しい公式戦デビュー戦での先制トライを奪った。Gは2年、強豪・京都成章出身のFB村野仁が決めて7-0とした。
試合は村野と都立FB松本岳人(院2年、所沢北)の長距離キックでエリアの取り合いが続いた。10分過ぎ、千葉商大NO8で村野と高校から一緒に進んだ山東克隆が豪快なランを見せるも得点に至らず。都立大が13分、右ラインアウトから押し込みHO高尾龍太(院1年、大阪・高津)がゴールをおとし入れGも松本が確実に決めて同点になった。
組織的に動く千葉商大が徐々に支配する。29分、キックリターンでLO齊木大翔(2年、千葉北)が大きくゲインすると、最後はやはり2年生CTB関蔵人(幕張総合)が左隅に飛び込んだ。難しいGを同期のSO沼田隼(勝田工)が成功し勝ち越し。
33分、都立大がPGで3点を返す。千葉商大のボールキャリアーに都立大はタックルを挑むも差し込まれてつながれていく。1分後、千葉商大はここでも2年生CTB矢内大翔(桐生一)、FB村野とつなぐと、NO8山東が中央へ仕留める。
前半最後、都立大は唯一の得点源、スクラムを押すことにこだわるも得点を奪えない。ゴール前のPKもタップで持ち込んでノックインしてしまった。
後半最初の得点も千葉商大だ。村野のゲインから継続しCTB関が2本目のファイブポインターに(28-10)。試合は29分、都立大がNO8中原亮太(3年、湘南)のトライで5点を返すも、38分に村野が軽快なランでトライラインを越え、自らGも成功し35-15、初戦を飾った。
筑波大OB、千葉商大の鷲谷浩輔監督は勝利にも「敵陣に入ったところで自滅してスコアができなかったところがあった。結果に納得していません。ブレークダウンでも都立がからんできて、そこでテンポよく出すことができない。2人目3人目の入る課題が出た」。
都立大は個々でプレーし、孤立する面が見られた。藤森啓介監督(早大OB)は「今の実力」。成長につなげていきたい。
9月17日、3部のほか2試合は東工大が防衛大に17-14で競り勝ち、東京農大は90-0で千葉大を圧倒した。
次節、都立大は東工大と、千葉商大は防衛大と対戦する。