3番を助ける。坂手淳史は強調する。
現地時間9月17日。ラグビー日本代表の16番をつけ、ワールドカップ・フランス大会のプールD2戦目に挑む。
対するイングランド代表とは昨秋、敵地でぶつかり13-52で敗戦。当時、HOで先発した坂手は、最前列中央で組むスクラムでやや後手を踏んだ。
特に試合の序盤では、対する左PRのエリス・ゲンジに塊の外側から内側へ食い込むよう押された。対面にあたる右PRの具智元が潰され、反則を取られた。
本来ならば3番、つまりは右PRを他の7人が支え、一枚岩で押し返したかった。今度の再戦時は、その形をいち早く作りたい。
担当の長谷川慎アシスタントコーチは「やられる前にやる」と、具は「やり返せる自信がある」とそれぞれ誓う。16日の前日練習後は、坂手が話す。
「あの時(秋の対戦時)はゲンジが中に入り、智元にアタックするスクラムを組んだと考えます。ただハーフタイムには、バックファイブ、特に5、7番(2、3列のうち右PRの後ろに入るLOとFL)に『智元を前に出して欲しい』と伝えて修正。後半はうまく組めていました」
当時、後半から披露できたようなスクラムを、今度は、前半から繰り出したい。
細部に気を配りながら、3番を助ける。
「しっかり3番を前に出さないといけない。1、2番(左PR、HO)が3番を助け、3番が(相手がつける角度に惑わされず)真っすぐ組めるような状況を作る。これまで慎さんがいろいろなコール(掛け声)、ディテールを作ってきています。そのいままでの積み上げを大事にしながら、試合中に何をリマインドしていくかを考えながらやっていきたいです」
かねて「スクラムに関しては、特にPR、HOがコミュニケーションを取っています」。イングランド代表のPR勢の名を挙げ、こう続ける。
「今回はゲンジ、ジョー・マーラー、カイル・シンクラーといったPRの癖、相手との距離感は皆で共有しています。またLO、FL、NO8に後ろからどう押して欲しいかも強調して話しています」
具がリベンジに燃えるゲンジは、今回、坂手と同じベンチスタートとなった。向こうの先発の左PRは、マーラーとなった。坂手は続ける。
「マーラーも、ゲンジと似たようなスクラムを組んでくる。ですので、こちらの準備は変わらない。ゲンジは後半にパンチ力、エネルギー、エナジーを出すことを期待されていると思う。自分たちもどうエナジーを与え、どういいスクラムを組むかを考えていきたい」
昨年は主将を務めた。今大会に向けては、ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチの方針で8月中旬まで主将は未決定だった。
結局、NO8の姫野和樹が重責を担うこととなり、SHの流大副将とともに先頭に立つ。
この事実をどう受け止め、どう消化したか。そう問われた坂手は、毅然として言った。
「立場は変わっても、自分らしさは変わらない。チームに対して出す部分、話す部分、求める部分、やらなきゃいけない部分も変わらない。消化をするというほどのもとでもないと思います。姫野を、流を、それ以外のリーダー、選手を信頼しています」
初戦のチリ代表戦では試合開始からフィールドに立ち、好ジャッカルを披露して42-12で勝った。今度の大一番へも、「勝つ準備はもう完了している」。力を、生きざまを示す。