フィジアンボーイズが揃って意気込んだ。
ラグビー日本代表でフィジー出身のジョネ・ナイカブラ、セミシ・マシレワは、現地時間9月14日、会見した。トゥールーズからモナコへ移り、その足で話した。
同17日にはスタッド・デ・ニースでイングランド代表とぶつかる。参戦中のワールドカップ・フランス大会において、有数の大一番だ。
昨秋に敵地トゥイッケナムスタジアムで対戦した際は、13-52で落としている。力勝負で後手を踏んだ。
今回、話した2人は、その試合に出ていない。ただしいまのチームでは、主力候補と見られる。ボール保持を重んじる最近の方針のもと、首脳陣に意外性、スピード、フットワークが期待される。
まず切り出したのは、31歳の明るいマシレワだ。登壇するやスキンヘッドの頭に手をあて、「整えないと」。髪の毛をとかすそぶりで、報道陣を笑わせた。
「エラーを減らしたい。今週の挑戦はフィジカルで負けないこと。タックルもしっかりと決めないといけない。また優位なフィールドポジション(敵陣側)でプレーすることで、圧力がかからないようにしたいです」
ともに応じるのはナイカブラ。シャイな性格で知られる29歳は、淡々と言葉を選ぶ。
「フィジカルバトルになる。規律を守り、エラーを減らさないといけない。かつ、自分たちのプランを遂行したいです」
10日の大会初戦では、初出場のチリ代表に42-12で勝った。
しかし、会場のスタジアム・ド・トゥールーズが醸す熱気には圧倒されたとマシレワは言う。FBのスターターとして56分間プレーしたゲームを、こう振り返った。
「プレッシャーを感じました。グラウンドに出た時は緊張しました。音(歓声など)がうるさく、そのなかで冷静さを保とうと努めていました」
かたやナイカブラはWTBとして先発し、後半23分に交替するまでに1トライと爪痕を残した。「チームのためになるトライをもう一度」と誓う韋駄天は、攻撃以外の局面へも入念な準備を重ねる。
特に重んじるのは、上空へ飛んだ球の処理だ。
長身選手を揃えるイングランド代表は、ハイボールと呼ばれる高い弾道のキックを多用。大きくて速いWTB、FBが落下地点へ駆け込み、日本代表の捕球役と競り合う。空中戦の制圧から自軍ボールを保持し、ペースを握ろうとする。
身長177センチと比較的、小柄なナイカブラは、静かに決意する。
「たくさんの時間を使って捕球の練習してきた。それと同時に、周りの選手が(前方の防御ラインから)素早く戻り、エスコートするという練習もしてきました。それらを活かして、五分五分のボールをしっかりと捕れるようにしたいです」
ここでの「エスコート」とは、相手の捕球役が走り込むコースをルールの範囲内で塞ぐプレーだ。
自分の捕球を邪魔しにくる相手を、味方の「エスコート」が守ってくれるとナイカブラは信じる。
対するイングランドは同9日、スタッド・ド・マルセイユで強豪アルゼンチン代表を27-10で破った。
開始早々にレッドカードにより数的不利を強いられながら、ロングキック、ハイパントで陣地を確保した。
渦中、鮮烈な印象を与えたのはSOのジョージ・フォードだ。6本のペナルティゴールに加え、3本ものドロップゴールを決めたのだ。
フィジアンボーイズの会見でも、相手が再びドロップゴールを多用した場合の心構えにつき質問が飛んだ。
これにはマシレワが、「プレッシャーをかけ、ドロップゴールをできないようにする」。タックラーがすぐに起きて防御網を整え、一枚岩で圧をかける。かくして、向こうの飛び道具を出す余裕を失わせるイメージか。マシレワは続ける。
「そのためには(日本代表の)全員が立っている状態で、ペナルティを出さないことが重要です」
マシレワはトライ後のパフォーマンスで知られる。新たなものはないかと聞かれれば、「それは、もう少し先に取っておきます」。披露されるのは、早ければ早いほどいい。