受けに回ってはやられる。
自分たちから襲いかからなければ。
日本代表のスクラムドクター、長谷川慎アシスタントコーチは、4日後に控える大一番に向け、選手たちに「やられる前にやるんだ」と伝えた。
9月17日、日本代表は、フランス・ニースでラグビーワールドカップ2023の2戦目、対イングランドの一戦を戦う(9月13日)。
日本は初戦のチリ戦に、42-12で勝った。イングランドはアルゼンチンに27-10。好スタートを切った両チームが2勝目を狙う。
スタッド・トゥールーザンの本拠地でセットプレーなどの確認をした同日。トレーニング後、長谷川コーチはイングランド戦におけるスクラムの重要性をあらためて口にした。
昨年11月に敵地・トゥイッケナムで対戦したときには、13-52と完敗した。
あの試合の悔しさは忘れられない。試合開始直後、スクラムで立て続けに反則をとられたからだ。
「(昨秋は)最初の3本(のスクラム)で、ペナルティやフリーキックを相手に与えてチームに迷惑をかけ、負ける原因になりました」
流れがいっきに、あちらに傾いた。
あれからら約1年。リベンジするための準備はしてきた。
「あの時と(両軍のメンバーが)同じかどうか分かりませんが、試合の入りからしっかと日本代表のスクラムを組めるように、1年かけてやってきました」と言う。
相手の出方を伺うのではなく、自分たちから攻める意識を持つことが大事と強調する。
「ディフェンシブに組むのではなく、しっかりケンカしにいってほしい」と話した。
イングランドのラグビーについて、100年同じラグビーを貫いている強さがあると感じている。
長谷川コーチは、「リスペクトして戦います」と相手に敬意を表す。
薔薇のエンプレムを胸に抱いた男たちは、FWが強い。
フィジカルを前面に出して勝負してくる。スクラム、モールの圧力は相当なものだ。
「どこにプレッシャーをかけてくるのは分かっています」と長谷川コーチ。
「もし、相手がプレッシャーをかけてこようとしているところをつぶしていければ、逆に相手が圧力を感じるでしょう。殴られる前に殴るイメージを全員で共有しています」
1年前の悔しさを晴らし、今回勝利をつかみたい。
誰もがそう燃えている中で、特に強い思いを胸に秘めているのが3番の具智元(ぐ・じうぉん)だ。
トゥイッケナムでは反則を取られて唇を噛んだ。
具はあの日以来、トイメンだったエリス・ゲンジのことを忘れたことがない。
長谷川コーチも証言する。
「これまでいろいろ智元と話している中で、何度もゲンジの名前が出てきました」
その具は、9月10日のチリ戦で相手のレイトタックルを受け、右膝を痛めた。
「一日一日良くなっている」と本人は言う。出場が叶うかまだ不透明も、「出るつもりでいます」とキッパリと言い切る。
イングランドとの前回の対戦では、ハーフタイムに長谷川コーチから「強気でいけ」と怒られ、後半は覚醒した。
ニースでは、ファーストスクラムから全開でいく。