トヨタヴェルブリッツからNZに留学、国内選手権NPC出場を目指していたFL小池隆成とSH田村魁世の二人が挑戦を終え、9月上旬に帰国した。
小池はダニーデンのクラブチーム、グリーンアイランドに所属。クラブのシーズン終了後はNPCオタゴのディベロップメントチームに所属し、オタゴ代表入りを目指していた。先日、ディベロップメントの日程が終了。残念ながら昇格はならなかった。チームとして戦ったのは3試合。正式なリーグ戦やトーナメントではなく、相手のカテゴリーも様々だった。
「費用の問題か、近場での試合が多かった。“今日はここに行くよ”と言われてバスに乗って試合に行く感じ。相手もよくわからなくて(笑)、最後の試合はトロフィーがあったので、おそらく定期戦ですが、もらえなかったので多分負け(笑)」
スコアボードのないグラウンドでの試合だった。小池は全3試合に出場、通算成績は「たぶん」2勝1敗。「意外とNZの人って、勝っても負けてもテンションが変わらなくて、ビール飲んで“ウエィ~”という感じなので(笑)」
目標としていたNPCには行けなかったが、プレーでは手ごたえを感じられた。
「環境に慣れるまでは大変だったんですけど、フィジカルやトヨタでコーチに教えてもらっているスキルは通用するものがありました」
滞在中、自分自身に思わぬ発見もあった。日本にいるときは試合前のルーティーンをきっちりこなすタイプ。「一つでもできないと不安になっていた」
それがNZでは「とりあえずバスに乗って、試合20分前にグラウンドについて、テーピングすることもなく試合が始まって」
ルーティーンをこなす時間など、もちろんなし。だが、いざ野に放り出されてみると、心配は無用だった。
「やってみたら“あれ、意外とできるな”って。これまでルーティーンを壊せない部分があったんですけど、こだわる部分と、こだわりすぎない部分。その間をいかないと、何かあったときに対応できないなと」
視野も広がった。ダニーデンでは、オタゴ大に留学している日本人選手から誘われて、週2回の草ラグビーの練習にも参加した。年齢も性別も関係なくラグビー好きな仲間が平日の夜、仕事を終えてグラウンドに集まってくる。
「ハイランダーズの選手もいれば、女性や、おじさんもいる。ただラグビーをやりたい人が集まってくる。ちゃんとフィットネス練習があって、スキル練習があって、最後にタッチフット。練習が終わっても、ずっと(ラグビーを)やってる。
僕はこれまで“ラグビーを頑張ってる”という意識でいたけど、そこではみんな楽しんでいた。お金がもらえるわけでも、やらないといけないわけでもないのに、誰より身体を張る。ラグビーを楽しむということを思い出しました」
自分の原点を思い出す時間でもあった。トヨタでは加入3年目、まだリーグワンの出場はない。本場での経験を活かして、この秋はポジション争いに名乗りを上げる。
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田村魁世は南島の南端、インバーカーギルに留学。パイレーツオールドボーイズでのプレーが評価され、NPCスコッド入り。だが第2、3節に出場後、ビザの種類が適応していないことが判明。書き換えを申請したが許可が下りず、滞在を終えた。
「いろんな運が重なってここまで来られました」
当初は先輩SH福田健太が留学する筈だったが、福田が日本代表入りしたことで急きょ指名され、パスポートを取ることからスタート。
当初は5週間の滞在予定だったが、現地でのプレーが関係者に評価され、当初予定していた地元SHが負傷したこともあり、帰国前日に残留依頼。予定を変更し、現地に残っていた。
「NPCに出られなくなった後も、ディベロップメントの試合は出ていたので、ラグビーが出来なかったことはなかったです」
NPCデビューは8月13日、第2節のノースランド戦(△15-15)。8月19日の第3節は首位ウェリントンと対戦(●17-39)、いずれも交代出場で、テンポアップという田村の持ち味を活かしての起用だった。
「多少の緊張もあって、思うようなプレーはできなかったんですけど、レベルの高い試合を経験できたのは成長につながるのかなと。ウェリントンはスピードが全然違いました。一人ひとりのスキルも高かったし、組織としてしっかりしていた」
今季のトヨタは世界で一二を争う9番、アーロン・スミス(NZ代表)が加入。茂野海人、福田健太と日本代表がふたり揃い、いつでもスタンバイできる状態でベテラン梁正秋が控える。SHは2023ワールドカップ代表が二人という超激戦区だ。
田村はルーキーイヤーの昨季、肩の手術で出遅れた。それだけに、日本のオフシーズンに本場で試合を重ねられたことは、リーグワンに向けた最高の時間の使い方だった。