ラグビーリパブリック

日本がW杯白星発進。初出場の勇敢なチリに苦しむも、「ポジティブな試合。学びもあった」

2023.09.11

W杯初戦勝利を喜ぶ日本代表。リーチ マイケルに抱きつく福井翔大(撮影:松本かおり)


 世界のトップ8入りを遂げた熱狂から4年。ラグビー日本代表が新たな歴史への第一歩を踏み出した。
 ラグビーワールドカップ2023フランス大会、プールDに入った日本代表は9月10日にスタジアム・ド・トゥールーズで初戦を迎え、初出場でファンの大声援を受けたチリ代表の果敢なチャレンジに苦しんだが、42-12で勝った。4トライ以上(6トライ)挙げたためボーナスポイントも得、まずはプールステージ突破へ向けてフルポイントの勝点5を獲得した。

「チリはまだラグビーの国ではないかもしれないが、サッカーに次ぐ2つ目の大きなスポーツにしたい」(チリ代表:マルティン・シグレン主将)
 楕円球にも情熱的な南米の男たちは、タフな相手だった。
 先制したのはチリ。前半6分、FBイニャキ・アヤルサのブレイクからチャンスを広げ、日本は懸命に戻ったものの、ルーズボールを足にかけて手にしたSOロドリゴ・フェルナンデスがインゴールに飛び込み、歴史的なファーストトライを決めた。

 しかし、リスタートのキックオフでチリが落球して日本のチャンスとなり、LOアマト・ファカタヴァが抜けてインゴールに持ち込み、SO松田力也のコンバージョンも決まって7-7の同点に追いついた。

 その後もチリは果敢に挑み、会場を沸かせたが、日本はFLリーチ マイケルの粘り強いタックル、HO坂手淳史のジャッカルなどでピンチをしのいだ。

 チリもディフェンスに自信を持って今大会に臨み、激しいタックルの連発とフィジカルファイトで日本を苦しめた。だが、24分、レイトタックルをした右PRの選手がイエローカードで10分間の退出となり、ゲームのバランスが崩れた。

 数的有利となった日本は29分、WTB松島幸太朗の好キックもあって敵陣深くに入り、スクラムからの攻撃に移ると、そのセットからSH流大が持ち出し、走り込んできたWTBジョネ・ナイカブラがディフェンスを破って勝ち越しトライを決めた。

 それでもチリはファイティングスピリッツを燃やし、粘り強いディフェンスを続け、ブレイクダウンでも奮闘し、何度も日本のトライを阻止した。

 しかし、チリのFLマルティン・シグレン主将にイエローカードが出て再び数的有利となった日本は、前半最後、ゴール前のラインアウトからモールを作って回したところをLOファカタヴァが抜け、トライ。松田のゴールキック好調で貴重な2点を追加し、21-7で折り返した。

 チャレンジャーのチリは後半も果敢に挑み続け、桜を胸につけたNO8ジャック・コーネルセンやLOファカタヴァのしぶといディフェンスに得点を阻まれたシーンもあったが、48分(後半8分)、ゴール前でアドバンテージをもらって攻め続け、キックが相手に当たって跳ね返ったボールをFBアヤルサが手にしてゴールに迫り、日本はLOサウマキ アマナキが懸命に止めたものの、チリがたたみかけて2つ目のトライが認められた。

 9点差に詰められた日本。だが、CTBディラン・ライリーがシンビン(10分間の退出)で1人少なくなっていたものの、52分、WTBナイカブラのカウンターで敵陣深くに入ってボールをつなぎ、テンポよくフェイズを重ね、FLリーチが中央を破ってトライを決めた。

 これでボーナスポイント獲得となった日本は、71分には敵陣深くのスクラムで優勢となってボールを動かし、SH齋藤直人との連係からCTB中村亮土が抜けて追加点。

 そして、試合終了間際にもスクラムからの攻撃でゴールに迫ると、けがから復活した21歳の長身LOワーナー・ディアンズがピック&ゴーでインゴールにねじ込み、チーム6トライで初戦を締めくくった。

奮闘したチリ代表。SHマルセロ・トレアルバは何度も果敢にブレイクした(撮影:松本かおり)

 ワールドカップ初チャレンジを終えてスタジアム中から大きな拍手を浴びたチリ代表のシグレン主将は、「私たちは全力を尽くしたし、自分たちのパフォーマンスを誇りに思う。いい戦いをした。最後の15分までは、もしかしたら逆転できるのではないかと思いながら戦った。最後の瞬間まではうまくいかなかったかもしれないが、本当に楽しんだ。それはこの試合の非常に重要な部分でもある」と会見でコメントした。

 パブロ・レモイネ ヘッドコーチは、「大変ではあったが、素晴らしいスタートだったと思う」と歴史的一戦を振り返り、「最後の20分間は試合をコントロールするための経験を欠いてしまった。そして日本はその効率性において素晴らしかった」と対戦相手の日本代表も称えた。

 一方、勝った日本代表のジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチは、「チリは本当に元気いっぱいのパフォーマンスで臨んできた。我々は悪魔のようなタックルを受け、ターンオーバーされ、本当にプレッシャーをかけられた。自信を失わずにそれに対処しなければならなかった」と振り返る。それでも、勝ってポジティブな結果になったことを評価し、「たくさんのタックルミスなど、改善しないといけないことはある。学びがあった」とコメントした。

 そして、負傷のため初戦を欠場した姫野和樹に代わってゲームキャプテンを務め、強いリーダーシップでチームを勝利に導いた流大は、「チリは本当にすばらしいチームだったと思う。パッションがあり、フィジカリティで、がまん強く、学ぶべきことが多々あった」と相手を称えた。自分たちはプレッシャーを受けながらも、グラウンドにいる選手たちはパニックになることなく、自分たちをコントロールすることに重きを置いていたと明かした。「この試合をビッグスコアで勝とうとは思っておらず、一つひとつ、自分たちのプレーを積み重ねることだけにフォーカスしていた」と振り返り、ポジティブな試合だったと評価した。

 日本代表の次戦の舞台はニースとなり、現地時間9月17日、優勝を目指して白星発進のイングランド代表に挑む。