ゲームキャプテンSOキニ・ヴェイタタがボールをインゴールの後方に大きく蹴り出しノーサイドの笛が鳴ると、グラウンドにオレンジの歓喜の輪ができた。
9月9日に開幕した関東大学リーグ戦1部は、秋葉台公園球技場で日大×立正大がおこなわれ、大接戦の末に昨季5位の立正大が、同4位の日大を逆転で破り、勝ち点4を獲得した。
立ち上がり、日大はSO柏原慶太のPGで先制、その後立正大もPGで追い付いたが、16分、立正大陣22㍍ライン付近のラックから日大FL四宮勇斗が中央突破、サポートしたNO8佐川奨茉につなぎインゴールまでボールを運んだ。
日大は今季、指導スタッフを刷新し、プレースタイルを以前のような強力FWを軸にし、春からコンタクトプレーの強化を図ってきた。この日も機動力のあるFL井上風雅、NO8佐川が何度もボールを持って前に出る場面があったが、「コンタクト力のあるメンバーをそろえた」(立正大・堀越正己監督)という立正大も前に出るディフェンスで対抗し、なかなかゲインを許さなかった。
日大はハンドリングミスや、反則などでなかなかリズムに乗れず、逆に立正大は前半24分、PKからFLヴィリサケ・リモリモが速攻を仕掛け、ラックサイドをSH三原大河がすり抜けて中央にトライ、その後もキニのPGで追加点を挙げ、前半を16-10とリードで折り返した。
しかし後半に入ると徐々に日大が盛り返し、4分にはPKからタッチに出し、ゴール前ラインアウトを得ると一気にモールを押し込み、抜け出したLO井草城ノ介がゴールラインを越え、ゴールも決まって17-16と逆転した。14分には相手陣のラインアウトから大きくBKに展開、CTBジョアペ・ナコからロングパスをもらったWTB久保太志郎がライン際を走り切ってトライ、日大が追加点を挙げた。さらに立正大のハイタックルの反則で、後半から入ったSH前川李蘭がきっちりPGを決めて27-16と立正大を突き放した。
しかし、ここで立正大にビッグプレーが出た。
後半12分に交代で入ったWTBハインリッヒ・フルックスが直後のマイボールキックオフのボールをダイレクトでキャッチ、FWにつないでゴール前に攻め込むとフェイズを重ね、最後はインゴールのスペースにSH三原が転がし、これに素早く反応したCTB鈴木太登が押さえた。
試合後に、共同ゲームキャプテンを務めたWTB清永修太郎が「得点が欲しいときに取ってくれた」と振り返ったが、このトライで立正大は息を吹き返した。
その後、25分に日大はFL井上、立正大も28分にSH三原がトライを挙げて両者一歩も引かずゲームは終盤へ。そして31分、立正大はFWの核でもあるFLピエリッチ・シーバートが危険なタックルでシンビンとなり、残りの時間を14人で戦うことになった。30-34と4点ビハインド、絶体絶命の場面だったが、立正大はあきらめなかった。
日大の反則からキニのタッチキックでゴール前に迫ると、ラインアウトをしっかりキープ、BKも入って一気に押し込み、後半から入ったHO三浦類がインゴールで抑え逆転した。
「絶対に取らなくてはいけない場面だったので、みんなでまとまっていこうと声をかけた。逆転トライは最高でした」と殊勲の三浦。
最後は日大の猛攻をしのぎ、立正大が大事な初戦をモノにした。
試合後、立正大・堀越監督は、「後半の苦しいところで選手たちはよく我慢し、よくタックルに行っていた。前に出るディフェンス、前に出るアタックが今日はよく機能していた」と選手を称え、東洋大、流経大、東海大と続く上位チームとの対戦に向け、「何とか食らいついていき、勝ち点1でも取れるところは取っていきたい」と話した。
共同ゲームキャプテンの清永も「春に大差で負けた日大に僅差ながら勝ったというのは自信になる。目標に向けて一つひとつ勝っていきたい」と気を引き締めていた。
一方、初戦を落とした日大・窪田幸一郎監督は「開幕戦ということもあり、難しい試合になるだろうとは思っていたが、自分たちのミスや反則で自滅してしまった」と悔しさをにじませた。佐川奨茉キャプテンは「接点やセットプレーで上回った時は自分たちのリズムでプレーができた。今日出た課題をしっかり修正し、次の試合に臨みたい」と気持ちを切り替えていた。
各チームの力が拮抗しているリーグ戦、今季も混戦を予感させる開幕戦となった。