「あとはスローイングの精度だけだね」
アナリストとして日本のトップチームにかかわっていた頃、このセリフを何度も聞きました。多くの場合、それはフッカーの選手への評価でした。スローイングのミスが繰り返され、落とした試合もありました。その後のミーティングでも、冒頭のセリフを聞くことがありました。
スローイングの重要性は年々高まっている一方で、練習方法は「数をこなす」だけという現場は多いのではないでしょうか。この現状を変えたいと、私は2018年より大学院にてスポーツバイオメカニクス(生体力学)を活用した指導法の研究を始めました。
指導法を確立するためには「良いスローイングとは何か」を知ることが必要です。そして「良いスローイング」を知るには、客観的なデータが必要です。日本代表を含むトップ選手の協力を得て実験をおこない、これをもとにモデルを作成しました。
このモデルと学生選手の動作を比較することで研究は進み、そこから見えてきた顕著な違いは、肩関節の可動範囲であり、リリース時のボールの角度です。
このあたりの詳細は、ラグビーマガジン7月号のテクニカル・セミナー「誰も教えてくれなかったスロー講座[トップ選手編]」をぜひご参照ください。日本で最もスローイングが上手だと私が考える選手(引退を発表)、元日本代表HO木津武選手が解説をしてくれています。
さて、モデルを作成して以降、中学生から社会人選手まで指導を繰り返してきました。そこで得た知見をもとに作成したのが「スローイング個別指導プログラム」です。
このプログラムの最も大きな特徴は、すべての選手がまず動作のメカニズムを学ぶことです。「数をこなす練習」は、繰り返す動作が理にかなっていれば有効ですが、そうでなければ、いつまで経っても上達しない練習となってしまいます。
「良いスローイング」を「角度」や「速度」などの具体的なキーワードとともに理解することが第一歩です。その上で、実際に投げてみて、自分の動作を自己評価していきます。これを繰り返すことで、より効果のある練習が実現され、試合での精度向上にもつながります。
プログラムの詳細、お申し込みはこちらへ。少しでも興味のある方は、ぜひお問い合わせください(外部サイト)。
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柴谷氏の新しい指導法に期待が高まる。
PROFILE
柴谷晋(しばたにすすむ)デフラグビー日本代表、茗渓学園教員、東芝ブレイブルーパス東京アナリストなどを経て、大田東京ラグビーアカデミー代表。 横河武蔵野Jr.アカデミーヘッドコーチも務める。2018年より、日本体育大学にて、スポーツバイオメカニクス研究の第一人者である阿江通良先生のもとスローイング指導の研究を開始。中学生から社会人まで広く指導を経験してきた。
著書「エディー·ジョーンズの言葉」ほか。ラグビーマガジンに「誰も教えてくれなかったスローイング講座」を掲載。http://susumu-shibatani.com/