練習をたくさんしているから強い。自分たちでそう言い切れるのが、いまの帝京大ラグビー部だ。
大学選手権では昨季まで2連覇中。9連覇した2017年度までを含めれば、通算11度の日本一に輝く。
特にここ数年の栄華を支えるのは、分厚い身体を作るウェイトトレーニングと目下「週に2度」はあるという走り込みの成果だと複数の選手は話す。
全国の俊英が集い、かつ妥協なく鍛えていれば、それだけで組織のベースラインを引き上げられる。
「毎回の練習が死に物狂いで…。耐え切って、(走力テストの目標タイムに)入り切っています」
こう話すのは本橋拓馬。1年時から主力の3年生部員で、出身の京都成章高3年時は全国準優勝を果たしている。身長192センチ、体重113キロのサイズで、FW第2列のLOに入る。
普段は穏やかな雰囲気を醸す。高所恐怖症で、入学当初は大学レベルでのラインアウトの捕球が少し怖かったのだと話して周囲を笑わせることもある。
ただし、フィールドではたくましい。試合終盤になっても防御の出足が鈍らず、球を持てばよく前に出る。
「最終的には日本一になること。ボールキャリア(突進役)として勢いをつけるのがLOとして一番(の仕事)」
入学前から将来性が買われていて、努力を止めなかったことで、いまも、将来性が買われる。
本人は明言こそ避けるが、国内リーグワンの複数クラブから誘いを受ける。少なくとも就職に困ることはなさそうで「ありがたいです。頑張ってきたので。ラグビーを」と話す。
大学を卒業する再来年度から、どんなチームでプレーしたいと考えるか。そう聞かれると、レベルの高い同僚と切磋琢磨できる環境に身を置きたいと応じた。
「どこに行っても努力しないと試合には出られない。なので、自分がその環境でしっかりと努力できる部分(場所)を選びたいですね。周りの選手だったり、環境だったりから、『競い合える。自分を強くできる』と言えるようなチームに行きたいです」
同学年のLOにはワーナー・ディアンズがいる。流経大柏高を出るや、すぐに東芝ブレイブルーパス東京と契約。2021年の日本代表デビューと、今秋のワールドカップ・フランス大会での登録メンバー入りを決めた。この世代トップ級の逸材だ。
最近の日本代表は、LOに海外出身者を多く選ぶ。身長202センチとサイズに恵まれたディアンズや、トンガ出身で速くて強いアマト・ファカタヴァはその代表格だ。
国内出身者としてその並びに割って入ることへ、本橋は「自分は入れるんかな…と思うことはある」。もっとも、ギブアップはしない。
「フィジカルで負けないように。高さでは勝てない。外国人以上に走ったり、外国人以上にコンタクトしたり、ハードワークの部分で勝って代表に入っていきたいです」
人より走れるようになり、人より多くぶつかる機会を増やす。そうすべく、覚悟を決めて猛練習に挑む。目下、長野・菅平で夏合宿中だ。