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目を腫らした松島幸太朗の視界。ワールドカップへ「やばい、とか、そういう危機感はない」

2023.08.15

8月5日のフィジー戦で日本代表50キャップとなった松島幸太朗(撮影:松本かおり)


 試合の序盤、相手の「つま先」がぶつかったという。スタンド下の取材エリアに現れた時、松島幸太朗は目を腫らしていた。
 
 8月5日、東京・秩父宮ラグビー場。今秋のワールドカップ・フランス大会前最後の国内戦で、フィジー代表に12-35で敗れていた。開始7分で味方がレッドカードを受けたうえ、攻めては落球を連発。FBで先発の松島も時折、ミスを犯していた。

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「14人になってもいけるでしょ、という感覚はあるんですけど、インターナショナルレベルになるとそう簡単にはいかないし、暑い、(球が)滑るというのもある」

 もっとも、悲観していなかった。

「ま、いいところはたくさんあった。いつも季節が変わっていくなかでよくなっていくので、そこ(ミス)は特に気にしていないです。個人的には。ボールを保持していればやれる感覚はあった。チーム的にやばい、とか、そういう危機感はないです。自分たちのスキルを信じ、続けていければ…」

 チームは6月中旬から浦安でキャンプを張り、序盤は約1時間ぶっ通しの格闘技風タックルセッション、フルコンタクトの実戦練習で心身を追い込んだ。拠点を宮崎に移した7月以降も、試合前の準備と並行して走力アップのためのメニューにも取り組んでいた。

 それが本番で最高潮を迎える手順であると、過去に2度のワールドカップに出てきた松島はわかっていた。

「炎天下できつい練習をしている分、リカバリーが追い付かないところがある。ただ、これをいまやっておいたら、季節が変わった時にむちゃくちゃ、走れるようになる。セット(位置取り)も速くなる」

 途中段階でも、自身の動きには手応えをつかむ。

 フィジー代表戦では、わずかな防御の隙へも果敢にチャレンジ。タックラーの手を振り切り前進する場面は多く、身長178センチ、体重88キロの身体にきれと強靭さをにじませていた。

 視界が狭くなった目に意識をやり、振り返る。

「最初の20~30分はほとんど見えてなかったんですけど、それで逆に吹っ切れてキャリー(前進)できた。(大型選手の多い)フィジー代表を相手に、フィジカル的な自信を持てた感覚はあります」

 今年ここまでの対外試合を1勝4敗としたのを受け、「ある程度、(チームは)いい方向にはいっている。このレベルでミスをすると痛い目に合うと全試合を通じてわかった。僕を含め、スタンダードを高くしていきたいです」とも述べた。

「(ミスを減らすための改善点は)単純に、ボールの握り方です。(湿気の多い季節は)冬の感覚でやっていてはうまくいく部分がうまくいかない。それを、ちゃんとわかっていないと。がまんしてアタックすれば、(点は)獲れる」

 15日、都内で大会登録メンバーが発表される。WTBとFBの両にらみができる30歳の松島は、選出とその先の喜びを見据えている。

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