208センチ、165キロ。
大阪・興國高校1年の馮佳成(ふぉん・よしなり)は、ラグビー界最大級のサイズを持つ逸材だ。
靴のサイズは32センチというビッグマンは、2023年夏、未完成だが魅力的なサイズやスピードを持つ高校ラガーの人材育成合宿、通称「ビッグマン&ファストマン(B&F)キャンプ」に参加した。
同キャンプは2018年に野澤武史TIDマネージャーが発起人となって初開催。6年目に入った今年は、2023年度第2回TID(人材発掘・育成)キャンプとして、7月30日(日)からの3日間、長野・菅平高原で開催され、約140名の応募から選抜された44名が参加した。
B&Fキャンプの大きな目的は、磨けば光る原石たちに、日本ラグビー界としての期待を伝えることだ。
208センチの馮も高校からラグビーを始めており、ラグビー歴は1年だ。スクール経験者の即戦力ルーキーと比べると、現時点ではスキルで見劣りする。しかし208センチという特大サイズは必ずや武器になる。君には大きな可能性がある——。
B&Fキャンプで可能性を見出された1年生は、3日間の日程を終えて、大きな刺激を受けていた。キャンプの感想を訊ねると、見上げる高さから馮は言った。
「キャンプでめっちゃ成長できましたし、足り無いところをあらためて自覚できました。足りないところは足元のステップ、スピード。武器は身長の高さ、体重で押していけるところです。良いキャンプやなと思いました」
中国人の両親を持ち、日本で育った馮。幼少期から身長が高かったという。
「小さい頃から1年で平均8センチ伸びました。ずっと大きかったです。中学1年で190センチあったと思います」
小学校では柔道などを経験。初出場した地元の相撲大会でいきなり準優勝したことも。両親はスポーツ経験がなく身長も大きくないというが、姉の身長は「180センチ」(馮)という。
そんな馮が、なぜ高校からラグビーを始めたのか。理由を訊ねると「サイズを活かせることもありますけど、一番は伊藤監督の人柄です」と話した。
興國高校の伊藤矢一監督が、原石をラグビーの道に引き入れた。B&Fキャンプでは第1回からビッグマン指導を担当し、今キャンプからはユースコーチとして現場を統括する立場となった。
伊藤監督は馮との出会いをこう振り返った。
「彼との出会いはひょんなことで、学校の外部説明会でブースを出しているところに彼がやってきました。もちろん声を掛けて、『ラグビーやらないか』と。ずっと日本で育って、柔道やテニス、サッカー、野球など万遍なくやっていました」(興國・伊藤監督)
ユースコーチの伊藤監督はB&Fキャンプで重視する指導方針について「大きい身体、良い道具を強い武器にしていく、ラグビーに通用するようにすることがメインです」と話した。
興國高校の馮は、伊藤監督からのそんな指導を継続的に受けられる環境にある。伊藤監督も有望な1年生の成長を楽しみにしている。
「彼は高校からラグビーを始めているので、まず知識も教えながら、ですね。同時に減量もして130キロくらいに絞れたら、かなり良くなると思います。いま160キロあっても動けるので」(興國・伊藤監督)
馮自身の目標は、すでに明確だ。
「将来の大きな目標は日本代表です。ただ大きい目標というよりは、今は目の前の小さい目標を達成していくことが、自分の考え方です」
小さな目標を達成していくという「自分の考え方」が頼もしい。サイズゆえに注目されるが、着実に、一歩ずつ進んでいくつもりだ。