ニュージーランド(NZ)南島のダニーデンにある「グリーンアイランドRFC」に留学していたトヨタヴェルブリッツのFL小池隆成とWTB和田悠一郎。地域のトーナメントに小池は5試合、和田は7試合に出場。グリーンアイランドは準々決勝で敗退したが、その後、小池はオタゴ地方代表の下部スコッドにあたるディベロップメント・スコッド(DS)入り。和田も地方代表の練習試合に出場したが、開始すぐに腰を痛め、7月末に帰国した。
小池はチームが敗退し8月初旬にDSとしての練習が始まるまで、個人練習の毎日だった。
「NZはグラウンドがそこら中にある。家から近いグラウンドで走り込んでました」
グリーンアイランドでは主にLOで出場した。
「行く前はFLかなと思ってたら、メインはLOでした。クラブラグビーでも密集の強度は高くて、僕は突っ込まないといけない役割だったので、結構ハードでした」
東海大時代からフィジカルが強み。トヨタでも評価されてきたが、本場で周りのレベルの高さを痛感した。
「日本では僕の強みだったんですけど、強みにはならなかった」
その中で、小池の評価を高めたのは、コミュニケーション能力だった。
「試合中すごく喋るので、褒められました。難しい言葉は使えないので単語を連発したり、声を大きくすることを意識していたので、そこを認められたのかなと」
海外でコミュニケーション能力を認められた価値は大きい。日本に帰っても新たな強みになりそうだ。
NPC(地方代表選手権)は8月第1週から始まるが、DS同士でも数試合が組まれている。そこで活躍すれば、オタゴ代表に呼ばれる可能性も生まれる。
留学当初は和田と二人で生活していたが、現在は一人暮らし。キャベツ1個500円というNZの物価高に悩まされている。外食も費用がかさむため、自炊の日々だ。
「料理がうまくなったというより、楽にご飯を作る方法が上達しました(笑)。練習で疲れて帰ってくる日は、レンジでチンするだけで食べられるように下ごしらえして出かけます」
たまに外食するのはラーメン屋の「タケイチ」。ハイランダーズでプレーしていた姫野和樹から教えてもらった。
何よりいま、小池は試合ができる幸せを満喫している。2022年度にヴェルブリッツ加入。チーム内での評価は高いが、コロナ禍での中止などもあり、リーグワンデビューはお預けになったまま。
「去年のシーズンはリーグワンの経験が積めなかったので、いま試合ができる喜び、幸せを感じています」
目いっぱい南半球で力を発揮して、チームに合流する。
和田はグリーンアイランドでは好調だったが、その後の地方代表の試合で、開始早々に腰を痛めリタイア。7月下旬に帰国となった。
「もう少しやれたんじゃないかという思いはあります」
幕切れに悔しさは残るが、さまざまなことを学べた日々だった。何より驚いたのは、プレーの発想。加入当初は、予想もつかないところからボールがくるのに戸惑った。
「日本なら、ここでラックができるというところで、無理やりでも放ってくる。型にハマってない。裏にもどんどん蹴る。すぐ横の人がキャリーするからサポートに入るのではなくて、キャリーしても僕に何らかの形でボールが出てくるかもしれない。WTBとして“どこからでもボールはくる”と意識を変えてやってました。すごくいい勉強になりました」
冬の足場の悪いグラウンドでどうスピードを発揮するかも、悪戦苦闘した。
「日本のグラウンドだったら、膝が勝手に跳ねるんですけど、NZはぬかるんで粘土質なので、スパイクごと埋もれてしまう」
膝や腿を意識して上げるようにしたり、スパイクのピンを長めにしたりと改良。自分の描くトップスピードではなかったが、「他の人よりは速く走れた」。こちらも手ごたえを得た。
ラグビー環境の洗礼も受けた。
「トヨタだったら、ケガをしたら、すぐに大隈さん(ヘッドアスレティックトレーナー)が、どこがどう痛むのか細かく調べてくれますが、NZでトレーナーに“腰をやった”と伝えたら、“私にできることはないから、痛み止めを飲んどいて”と(笑)。日本は恵まれてるなと感じました」
これからリハビリを進め、秋のプレシーズンマッチに向け、コンディションを整える。
ヴェルブリッツからはPR淺岡俊亮、SH田村魁世、SO丸山凜太朗が南島インバーカーギルにあるパイレーツオールドボーイズに留学、サウスランドのワイダースコッド入りをしている。